復讐への誘い
ハデス達は絶句していた。
あまりにも凄惨な過去に、そしてそんなことをした人間がいることに…。
「魔夜様…、それは、本当なのですか?」
水原は信じられないといった顔で聞く。
しかし、これは実際に俺達が受けた話で現実だ。
「全て本当のことよ。今の話からも私達が何をしたいか、もうわかったわね?」
「復讐、を望んでいるの?」
「その通りです、ハデス様」
「そ、そんなことをしても!……、いえ、無理もないかもしれませんね…」
「タナトス…」
タナトスは俺達に説得をしようとしたが、過去にあったことがあまりにも惨酷すぎた。
説得ができるとは思えなかったんだろう。
ここからは俺の番かな。
「今の話からもうわかっただろ?俺達がこのギルドを選んだのは復讐に都合がいいからだ」
「このギルドなら抑止力がない、そういうことかしら?」
確かに、強いギルドならば俺達に匹敵する人間がいて、俺達を止めることもできるかもしれない。残念ながら違うが
「全然違ぇーよ。まともに話を聞いて、その上で認めてくれそうだったからだ」
極夜が先を引き継ぐ。
「オレらは復讐のためだけに生きてきた。
だが、オレ達だけじゃやりにくい可能性がある。そのためにも仲間が必要だった」
「……、私達は神と言っても、何もできないわよ?」
ハデスはギルド最弱。権力なんてものもなく、信仰されてすらいない。
「それなら大丈夫よ。私達で最強のギルドにするから」
「「「はい?」」」
魔夜が不敵な笑みを浮かべながら宣言する。
「私達の目的は親を殺し、私達に地獄を見せた男達をぶち殺すこと。でも相手は権力者。
だからこそ、こっちにも権力がいる」
「確かにギルドが強くなれば、ハデス様にも権力ができるでしょうが…、そう上手くいきますか?」
タナトスは不安そうな顔で魔夜に言う。
「大丈夫よ。そのためにも力を手に入れるんだから」
「俺達に勝てる相手もかなり限られてくるだろうしなぁ〜」
魔夜の言葉に極夜が乗っかる。
極夜が言う通り、俺達に勝てる相手は少ないが、いる。これを0にするのが最終目標だろう。
「……………、魔夜様」
すると、それまで黙って話を聞いていた水川が顔を上げる。…………濁りまくった目で…。
「何かしら?」
魔夜も水川の異変に気付き、真面目な顔で聞き返す。
「その復讐、私も参加してもよろしいですか?」
「理由を聞かせてもらおうかしら?」
水川はカッ、と目を見開くと一気に言葉を、いや呪詛を吐き始めた。
「魔夜様を汚したカスなんて地獄も生温い拷問を行い、恥辱と尊厳と希望を全て奪った後に殺す以外の選択肢なんてあるわけないじゃないですか‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」
「そ、そう」
魔夜が思い切り顔を引き攣る。
……………水川の愛が嬉しいんだろう。涙ではなく、汗をかいて喜んでいるし…。
目は助けてと俺達に訴えているが
「「「「………、スッ」」」」
全員が目を逸らす。『裏切り者⁉︎』と目が叫んでいた。…助けるとか無理だから…。
「許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない許さない………。」
怖っ⁉︎
水川の豹変に全員が引いていると、不意に水川の体を紫色の光が包んだ。
「何あれっ⁉︎」
「ちょ、ハデス様私を盾にしないでくださいよ⁉︎」
ハデスがタナトスの背中に避難し、盾にされたタナトスがちょっと涙目になっている。
水川は急に体を包んだ紫色の光に正気を取り戻したようだ。
「何ですか、今の…?」
水川本人にもわからないようだが、俺達は知っている。
「うわぁ〜、魔夜愛されすぎだろ」
「アハハハハハッ‼︎マジかよ、スゲェ‼︎」
俺と極夜の冷やかしに魔夜は遠い目をしている。
「あの、一体何が?」
水川の質問に魔夜が視線を戻し、答えた。
「ステータスをちょっと見せてもらえるかしら?」
「? わかりました。ステータスオープン」
水川の声に応じて、透明なガラスの板が現れる。
水川 時雨 LV21
筋力:400
魔力:1050
耐久力:350
敏捷力:500
スキル:水中呼吸、呪怨
「やった!新しいスキルが発現してます!」
「へぇ〜、スキルが発現するときはあんな風になるのね。おめでとう水川」
「私も初めて見ました。おめでとうございます、水川様」
「はい!ありがとうございます!」
「「「……………………」」」
水川は喜び、ハデス達も賛辞を送り、俺達は押し黙る。それを訝しんだハデスが少し怒った声音で俺達に話しかける。
「ちょっと、少しは喜んであげてもいいんじゃないの?いきなりとはいえスキルを発現させたんだし」
確かにスキルは発現したんだけどさ…
「『呪怨』ってスキル名でさ、だいたいわかるだろ?これ、喜んでいいスキルじゃない」
「『呪怨』?物騒なスキル名、………⁉︎」
ハデスはスキル名を聞いて少し間をおいて気づく。
「水川さん」
「はいっ、魔夜様‼︎」
物凄い笑顔で魔夜に振り向く。
「あなたを私達の復讐に加えてもよろしいかしら?」
「もちろんです!どこまでもついて行きます‼︎」
「ただし、一つだけ条件があるわ」
魔夜は引き攣った顔を真面目な顔に戻し、水川に条件を突きつける。
「まず、私達に手を出したクズ共は私達が殺します」
「わかりました」
「あなたにはこれから強くなってもらいます。少なくとも、私達と互角に戦えるくらいの力は必要です」
「魔夜様と、互角にですか…?」
流石にこれには即答できない水川。俺達と互角ってことは、学園最強レベルってことだからなぁ〜。
「できないのかしら?」
魔夜が微笑みながら問いかける。
「できます!お任せください‼︎」
「そ、そう…。コホンッ、それではあなたを私達の復讐の仲間に加えます」
「はい!一生ついて行きます、魔夜様‼︎‼︎」
「その、魔夜様はやめてくれないかしら?もう仲間になったのだし…」
「………!それではこれからは魔夜お姉様とお呼びいたしますね!」
「……………」
満面の笑みで魔夜お姉様と呼ぶ水川に急に遠くを見出す魔夜。目が潤んでいるから堪えているんだろう……。
そんな魔夜と水川に俺達は
「魔夜お姉様…、ブフッ、アハハハハハハハハハッ‼︎」
「魔・夜・お・ね・え・さ・まだってよ!
お姉様⁉︎アハハハハハハハハハッアハハハハハッッ‼︎‼︎」
「……ブフッ、ククククッ…」
「………クスクスッ」
俺と極夜は爆笑し、ハデスとタナトスは笑いを押し殺していた。
兎にも角にも、こうして復讐の仲間が1人増えた。あとは、ハデス達にも認めてもらうだけだ。
「………、随分と笑っているわね。そんなに楽しかったかしら?」
ヤバイ……、魔夜がブチ切れてる…。
「フフフフフフフフフフ…。そんなにも死にたいのかしら?」
俺、極夜、ハデス、タナトスの顔が青ざめる。俺と極夜は視線を合わして、頷きあう。
「「コイツが一番笑ってました‼︎」」
「「裏切ったなこのヤロー⁉︎」」
極夜を売ろうとしたのに俺が売られそうになった。大人しく売られて殺されればいいものを!
「2人まとめて吹っ飛びなさい。『風竜』」
風の竜が現れ、俺と極夜に向かってくる。
しかし、極夜にはアンチ魔法がある。
なら、何故魔法を使ったかというと…、
「……、何か『風竜』の中に大量のダンベルが見えるんだけど…」
「魔法でダンベルをぶつけるなら、オレのアンチ魔法も意味がないからな」
ドゴオォォォォンッッ
「「ギャーーー‼︎‼︎」」
冷静に分析をしながら、『風竜』(というより、ダンベル竜)をくらった。
「さて、邪魔者も消えたしハデス達にも聞くわね?」
「「あの流れからこっちにくるの(ですか)⁉︎」」
俺と極夜は体を引きずりながら魔夜の横に並ぶ。
「で、どうするの?私達の復讐に賛同してくれるの、しないの?」
ハデスとタナトスは顔を合わせて、しばらくアイコンタクトしたあとにタナトスがため息をつき、頷いた。ハデスは満足そうな顔で俺達に言った。
「賛同するわ。アタシも気に食わなかったしね」
「へぇ〜、ドチビは自分のことアタシっていうんだ」
「べ、別にいいでしょ!私っていうの何か違和感あるし…」
ハデスは少し恥ずかしそうに反論する。
て、今はそんなことはどうでもいい。
「これで、全員賛成ね」
魔夜の言葉に俺と極夜が頷く。
魔夜はニコリっ、と笑うと声高らかに宣言した。
「これから私達は復讐を成功させるために動きます。そのためには、力を手に入れなければなりません!故に、このギルドを最強にします‼︎‼︎」
魔夜が一息つく。
「たとえどんなに辛く、厳しく、険しくても絶対に諦めない‼︎」
魔夜の言葉にみんなが続く。
「この呪いを奴らにぶつける‼︎‼︎‼︎」
水川が叫ぶ。
「この怒りを奴らにぶつける‼︎‼︎‼︎‼︎」
極夜が叫ぶ。
「この憎しみを奴らにぶつける‼︎‼︎‼︎‼︎」
魔夜が叫ぶ。
「この殺意を奴らにぶつける‼︎‼︎‼︎‼︎」
俺が叫ぶ。
ハデスとタナトスも叫ぶ。
「「復讐の道に間違いはない‼︎」」
一拍置いて、全員が全力で叫ぶ!
「「「この世の全てに復讐を‼︎‼︎」」」
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