ギルド選定戦・決着

………………。

試合に勝ったのに歓声がないな。まぁいいや。もうメンドくさいし終わらせよう。


「なぁ審判」


「はい、何でしょうか?」


俺は審判をしていた男性にある提案をする。


「次の試合棄権していい?ここまで頑張ったしもういいよね?」


「え⁉︎その、確かに棄権はできますが、よろしいのですか?」


「いいよ」


魔夜と俺のどっちが勝っても変わんないし。


「それでは、白崎白夜は棄権ということでよろしいですか?」


「お願いします」


「白崎白夜は棄権により、優勝者は白崎魔夜となりました!他の選手の方々も闘技場に集まってください。これより、表彰式を行います」


ハァァァ、やっと終わったー。

集合を呼びかけて10分もしないうちに全員集まった。


俺と魔夜、そして極夜が表彰台に上った。

極夜は3位決定戦で見事に勝利したので表彰台にいる。準々決勝までの人が3位決定戦に出れて、全員でサバイバルの試合なのだが、極夜は1分で蹂躙した。


「ただいまより表彰式を始めます。ゼウス様、よろしくお願いします」


ゼウスは表彰台にいる俺達3人にメダルを渡していく。


「よく頑張った人の子よ。それにしても、兄弟で独占とは恐れ入った」


魔夜と極夜はともかく、誰も俺が入るとは思ってもなかったしな。

ゼウスの言葉に魔夜が返す。


「これも日々の努力を怠らなかったゆえの結果だと、私は自信を持って言えます」


「ハッハッハッハ!頼もしい限りだな」


「勿体なきお言葉です」


俺達3人はゼウスに頭を下げる。


「それでは、どのギルドに入りたい?」


俺達はこのために試合を全力でやったのだ。

まぁ、ブーイングは凄いだろうけど…。


「実は私達兄弟は一緒のギルドに入りたいと思っているのですがよろしいですか?」


「ほう、構わんぞ!大いに結構だ!」


ゼウスは自分のギルドに入ると確信してホクホク顏で了承した。


「ゼウスよ、それではバランスがとれんではないか。今回の大会ではこの3人は頭一つ抜け出ていたというのに」


「そうですよ。ゼウスのギルドに3人共入られるのは困ります」


即座にポセイドンとヘラが抗議する。他の神々も同じ意見のようだ。……、ハデスを除いて。


「だが、今回の大会で頑張った者達の声を聞かんのは、神として恥ずかしいとは思わんか?」


「それはそうですが…」


「ならば、何も問題はあるまい」


ゼウスの説得(ゴリ押し)により、俺達3人が一緒のギルドに入ることが認められた。


「では申し上げます」


「ウム」


ゼウスはホクホク顔、他の神々は少し不満げな顔、ハデスは遠くを見ている。

ハデスは自分のギルドに入るわけがないと思っているのだろう。


「魔夜、俺から言ってもいいか?」


「ム?」


「別に構わないわよ」


「ありがとう。ゼウス様もよろしいですか?」


「構わんが…」


俺の提案に訝しむゼウスとどうでもよさげな魔夜。

せっかくなので俺に唯一注意してくれた神に感謝も込めて俺が言いたかったのだ。


「俺達は、ハデスのギルドに入ります」



「「「「は?」」」」


神々が全員呆然とするとか、結構貴重だな。

と、つい思ってしまうくらいには可笑しかった。


「ま、ちょっと待って⁉︎私のギルドでいいの⁉︎」


「そうですよハデス様。ダメでしたか?」


俺達の提案にありえないでしょ⁉︎とでも言いたそうな顔をしたハデス。


「ありえないでしょ⁉︎」


お、俺の予想が当たった〜スゲ。

ハデスは何が何だかわからないという顔でパニックになっている。


「いい、よく聞いて。私のギルドはギルドハウス以前に構成員がいないのよ。それをわかって言っているの⁉︎」


え、マジで!


「よっしゃ、誰もいないとかマジで最高‼︎」


「何で喜んでんの⁉︎⁉︎」


だって誰もいないとか気楽で最高じゃん?


「待て」


ゼウスが話に割り込む。


「ハデスのギルドはやめよ。ハデスが何をしたか知らぬ訳ではあるまい」


その言葉に一気にしょげるハデス。

その言葉に反論するのは


「だからどうしましたか?」


我らが姉、魔夜だ。


「お主らの生きる場所を、平和な世界を壊したと言っても過言ではない。そんな神のところに行くのはやめよと言っているのだ」


ゼウスは俺達のことを思っているような言い方で魔夜をまるめこめようとする。

バカだなぁ。俺達が気づかないわけがないのに。


「どこにしようが別にいいんですよね?」


魔夜はゼウスに挑発するような笑みを浮かべながら言い切った。


「確かにそう言ったが…、!まさか、3人一緒でいいか聞いたのは!」


お、気づくの早かったな。


「フフフフ、何のことでしょうか?私達はただ3人一緒が良かったので聞いただけですか?」


この言葉にゼウスは怒りの表情を浮かべ、他の神々は諦め顔、ハデスは顔の表情をバレないよう真顔でいようとするがへにゃっと頬が緩んでいるので隠せていない。


「では、ギルドも決まったことですし、私達は一度荷物をまとめに戻るのでこれで失礼します」


さっさと帰ろうとする魔夜。


「待て、まだ話は終わっとらんぞ‼︎」


ゼウスが引き止めようとするが


「うるっさいわね。もう終わってんでしょうが!何か文句でもあんの‼︎」


「メンドイジジイだな」


「どうでもいいけど帰って寝たい」


「な、……」


魔夜、極夜に罵倒され言葉が出ないゼウス。

俺は罵倒してないから!願望を言っただけだから関係ない!


「あ〜、やっぱりメンドくさくなってきたから他に入る人もいっぺんに連れてくわよ」


「「わかった」」


「それで、他にハデス様のギルドに入る人はいますかっ?」


誰も動かない。それよりも神を罵倒するという前代未聞のことに驚いているのだろう。


「はい!入ります魔夜様‼︎」


…………、魔夜信者の筆頭である水川以外は。


「そ、そう…。じゃあ、こっちに来て」


「はい、お姉さま!」


「…………」


魔夜が空を見上げている。まぁ、現実逃避したくなるよな…。


「白夜、ハデス様を攫ってきて」


「あいよ」

急に顔を戻した魔夜の言葉に即座に動く俺。

スキル:加速を使ってハデスの後ろに回り、お姫様抱っこをしてすぐに魔夜の元に戻る。この間1秒。


「それでは、さようなら」


魔夜のその言葉とともに俺達は瞬間移動でその場から転移した。

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