ギルド選定戦2

俺が勝っても誰も歓声を上げない。そりゃそうだろう。銃を魔法で出して一瞬で勝負をつけたのだ。


「素晴らしい!実に見事な試合だった」


しかし、神は人間の予測には当てはまらない。さっきの試合を見ても満足そうに笑っているだけだ。それにしても、ゼウスに褒められるって、俺凄くね?

神の賛辞からちらほらと拍手の音が聞こえてきた。俺はその中を歩いて控え室に戻っていった。



それからも俺と極夜は勝ち進み、準々決勝まできた。極夜は試合で相手を全てワンパンで気絶させていた。魔夜は学年トップなのでシード扱いとなり準決勝から試合だ。


それとこのトーナメントは合計25人と人数が少ない。24、12、6、3と人数が減っていくトーナメントで最後の3人になったら魔夜が参加して次で決勝となる。

そして俺の次の相手は


「貴様、力を隠していたのか⁉︎」


十一神である。正直言ってめんどくさい。

十一神のステータスは

十一神 良介

筋力:1200

魔力:340

耐久力:1050

敏捷力:1100


スキル:軍神の加護(戦馬車)、剛腕


はっきり言ってめんどくさいことこの上ない。ステータスはもちろんだが、それ以上にスキルが強い。特に軍神の加護の戦馬車は厄介だ。アレスの加護らしいけど、雷を纏った馬の馬車でスピードが半端じゃなく速い。あれに轢かれたら重傷間違いなしだ。


「話を聞いているのか⁉︎答えろと僕は言っているんだ⁉︎」


「答えろも何も、これが結果なんだから仕方ねーだろ。んなことより、とっととやろーぜ。俺は公衆の場で潰されるんだろ?」


「たかが平民の、それも孤児の貴様に潰されるとでも思っているのか?どうせ魔夜さんに何かしてもらったんだろう⁉︎」


「…………」


この言葉に俺は反応しなかった。

それを図星ととったのか、木原は調子に乗って言ってはならないことを言ってしまった。


「どうせ、貴様の親もクズなんだろうな。子供を残していなくなるなんて普通の親じゃない」


俺達の親が、クズ?

今クズって言ったのか?

普通の親じゃない?

お前ごときが、お前ごときカスが俺達の親を侮辱したのか?


「ハ、ハハ、ハハハハ」


「な、何だ…。僕は間違ったことでも言ったか『失敗作』‼︎」


もういい、ぶっ潰す。


「殺意、発動」


圧倒的なまでに、完膚無きまでに、絶望的なまでにぶっ潰す‼︎‼︎‼︎‼︎


「それでは、試合始め!」


「魔銃よ!」


開始と同時に俺は魔銃を2丁手元に出現させ、十一神は


「来たれ、『戦馬車』」


戦馬車を呼び出す。

『戦馬車』を出した十一神は勝利を確信しているのか余裕の表情だ。


パンッ、パンッ!


『戦馬車』の馬に撃つが馬自体が雷で出来ているようで全く聞いていない。そのことに益々余裕になっている十一神。

確かに俺の魔銃は聞かない。だが、俺は魔銃で普段は戦わない。魔銃を使うのは手加減や有利になると判断したときだけだ。ホントなら得意武器でやりたいが、この前壊したんだよなぁー…。


そのことを露とも知らない十一神は増長しまくり、こちらに向かって『戦馬車』を走らせた。それを横っ飛びで避けながら魔銃を連射するが効かない。


「どうやら自慢の銃は聞かないみたいだなぁ!ステータスが高く、スキルも多彩にあるが、使い手がお前じゃあ宝のもちぐされだなぁ白崎‼︎」


「…………」


十一神の言葉に俺は反応しない。

俺は空力を使い、空を駆け上がる。


「僕を、上から見下ろすなぁ!」


そう叫ぶやいなや『戦馬車』で空を駆け上がりこっちに突進してきた。


「チッ、メンドくせ〜…」


完璧に予想外のことでギリギリで躱す。

俺はスキル:殺意を発動させている。このスキルは文字通り殺意によって発動できるが、殺意が強すぎると必ず殺すまで止まらない。


故に俺は殺意を出来るだけ抑えようと必死になっていたが


「お前は魔夜さんにも弟の極夜にも劣っている!そんなお前のせいで、親は魔夜さんと極夜を捨てるハメになったんじゃないのか?」


俺達兄弟は孤児院で育った。俺が11の時、魔夜は15で極夜は10だった。家庭はケンカなどはするが非常に仲の良い家族だった。しかし、魔夜の誕生日にある事故が起こり、両親は死亡し、俺達はある程度の怪我を負ったものの死にはしなかった。


公式にはこうなっているが、実際には両親は殺されて俺達は拷問を受けていた。幸いにも俺達は拷問が始まってすぐに救出されたので助かったが、俺達の両親を殺した奴は逮捕されずに罰金だけで済まされ事件は揉み消された。その罰金を払ったやつは身代わりで実行犯共は見つかってないしな。


その時に俺達は一人一人スキルを習得した。


俺が手に入れたスキルはーー殺意だ。


「俺の殺意を舐めんな」


そう呟くと俺は殺意を発動する。かなり薄めの殺意に減らしたので殺しはしないだろう。

俺の殺意のスキルは3つの能力がある。


1つ目は相手を殺そうと思えば思うほどステータスが上がる。


2つ目の能力は殺意を具現化することで身体全体に黒い霧みたいなのが纏わり付いて耐久力が上がり、相手に恐怖を与えるバッドステータス付与の能力もある『killingcoat』。


3つ目は、『overkiller』で全ステータスを3倍まで上げることだ。これを見たら1つ目の能力と一緒と思うかもしれないが全く違う。1つ目は俺の殺意によって上がっていくが、『overkiller』はその殺意を上乗せした状態のステータスを4倍にする、まぁ、チートスキルだ。もちろん使った後は反動で身体中に激痛が走り、少なくとも30分は動けない。このザコに使うことはないが。


俺が今使ったのは2つ目の能力、『killingcoat』だ。これにより、俺の耐久力は3000くらいまで引き上げられている。他にも能力があるが、今は使わない。

俺が十一神の方を向くと


「…………」


…………、その、一部分がシミになっていた。どこがとは言わない。武士の情けだ…。


「ヒャハハハハ!もら、漏らしてやがる‼︎

マジでお漏らしかよ〜!ヒャハハハハハハ‼︎‼︎‼︎」


まぁ、俺には関係ないから笑うけど。

これは傑作だ!公衆の場でお漏らしとは、人として終わったな。

俺は気をとりなおして十一神に向き直る。

十一神の方はというと、俺に憎悪の視線を向けて詠唱している。俺はそれを見て魔銃を撃とうとするが、やめた。この際だ、俺の殺意は薄めたが消えたわけではない。このまま、完膚無きまでに潰す。そして十一神の詠唱が完了すると


「荒ぶる獣よ、汝と我の道を邪魔する悪しき者に鉄槌を下すため、しばしその力をお借りすることを許し給え!『電光戦馬車』」


戦馬車が急に放電しだした。


「ハハハハハハハハ!白崎ぃぃ、お前死んだぞ。この『電光戦馬車≪ライトニングチャリオット≫』は鉄の扉さえ突き抜けるほどの突破力がある。降参するなら今のうちだぞ?」


確かに電光と名前が付いているくらいだ。その突破力は計り知れないかもしれないが


「俺の敵じゃねぇな」


「な、何だと⁉︎」


いやいや、そもそも決着はついてるし。


「考えてもみろよ。お前が詠唱している間、俺は何してた?」


俺はステータスやスキル、魔法の全てを隠してきた。


「そこでバカみたいにずっと突っ立っていただろうが!」


「お前の後ろに移動してたんだよ」


なら、魔法が使えても不思議じゃない。


「なっ⁈」


十一神が振り返ろうとするが、


パパパパンッ


それよりも速く俺は引き金を引いた。

……、両腕両足に。


「ぎゃああああああぁぁぁぁっっっ‼︎⁇」


こいつには学園生活でかなりお世話になったんだ。拷問くらいは許されていいだろう。

このままだと降参とか言うことも考えられるので、とりあえず口を開けないよう


「宿雷」


「⁉︎⁇グッ、ゲゴッ、ガガギ」


宿雷とは、身体に雷を纏わせて敏捷力を底上げするものだが麻痺の効果も付与されており、このような感電状態にすることもできる。


「そんじゃあ、始めますか」

「ひゃめ、ろ」


「まずは腹」


パンッ


「ガァァァァッッ⁉︎」


俺は十一神の制止の言葉を無視して発砲。


「そんでもって、お次は


「試合終了ー‼︎」


試合が終わった。


「ちょっと待て!こいつはまだ降参してねーだろ‼︎」


拷問できねーだろ‼︎


「ワタシが止めたのよ」


そう言い放ったのはハデスだった。

…………、いや、何でハデスが止めてんの⁉︎

何の関係もねーだろ!


「何で止めたんですか?ハデス様」


「あのままだと死ぬ間際まで追い詰めていたでしょ?」


「まさか、僕みたいな小心者が、そんな恐ろしい事するわけないじゃないですか」


「じゃあ、何で口が聞けないようにしたの?」


「詠唱させないためですが」


「なら、詠唱しだしてから痺れさせればよかったんじゃないの?」


クソッ、ヤケにしつこく聞いてくるな。

まぁ、これくらいでいいか。


「ハァァァ、そうですよ。拷問しようとしましたよ何か悪いんですか?」


ここは開き直ろう。


「悪いに決まっているでしょ!それでもし後遺症でもできたら


「ハデスよ、黙れ」


「なっ、ゼウス⁉︎」


「聞こえなかったか?黙れ」


「ッッ!……」


ハデスを黙らしたのはゼウスだった。

ゼウスはハデスの方から目を放すと俺に向かって賛辞を送ってきた。…………、それとアレスの睨んだ目も


「よく戦った、人の子よ。お前の名前は何だ」


こいつはバカか?拷問をしようとした奴に賛辞を送ってどうする。


「ありがとうございます。僕の名前は白崎 白夜と言います」


「そうか、白夜か。次の試合も期待しているぞ」

「勿体無いお言葉でございます」


魔夜がハデスを選んだ理由が少しわかった。

この神共は自己中の塊なんだろう。

ハデス以外微笑んでるし、バカだろ。

俺は心の中で愚痴をこぼしながら闘技場を降りた。

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