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コンビニで買った缶ビールをすべて飲み干して、ボクは空をずっと眺めていた。
風が強くて、深い藍色の空を千切れたスチールウールみたいな雲が、すごい速さで流れていく。空き缶を放り込んだビニル袋が今にも飛んでいってしまいそうなほどにバサバサと音を立てている。
一瞬、ゾクッと寒気のようなものを感じて、ボクは家に帰ることにした。
風邪なんてひいたりしたらたまったものではない。あのお局生き遅れ女(冗長な上長)に、飽きるほど嫌味を浴びせかけられるのはもうたくさんなのだ。
ボクは、ゆっくり立ち上がって、それから一度、来た道を振り返る。
ボクはなにを期待しているのだろう。
誰かが来ると期待していたのだろう。
相変わらずバカなのは、ボクだけなのだと思った。
ところで——。
当然ながら、ボクにも夢があった。
それは、とても些細だけど、とても大きな夢。
誰かと、幸せになるということ。
だけど、その夢も——今のボクには叶えられそうもない。
誰かさんが好きだというから、必死に伸ばした髪はもう腰まで届いた。
吹き荒ぶ風に弄られて、乱れた髪を一度だけ梳く。
「……髪、切ろう」
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