第9話ハル7歳



ガチャ…


「……!?」


施設の戸が開き


リオネは振り返り驚愕する


「…………」


そこには無言で顔に擦り傷を大量につけたハルが立っている


あの騒動から数ヵ月


ハルは7歳になっていた


「ハル君…最近、暴れまわっているそうですね……」


リオネが言っているのはハルの噂である


曰く町の裏路地で絡んで来る奴を狩っている


曰く冒険者ギルドに現れては酔っ払った冒険者に売られた喧嘩を買い、大暴れ


曰く…というよりは森に狩りで入った冒険者からのハルらしき人物の目撃情報等


(今日こそは…しっかり話を!)


「…リオネさんには、カンケーないことっすよ………」


リオネはハルを説得したかったが


それより先にハルが部屋へ戻ってしまう


今のリオネにはハルを追えない


追うことが出来ないのだ





さて、俺のターンか


っと…メタい発言だがスルーしてくれ


まぁ…思っていた通さ


…俺はやはり恐れられてる


でも前世のように俺を見えない化け物として扱う奴等を壊して回る程じゃないし?(まぁまだ見えない扱いされてないけどね)


直接施設に迷惑かけてないし?

俺も成長したなぁ!


ま、現状嫌われているのは俺だけでリオネさん達は無事だからな


それに、一部からは感謝されてるらしいし…


もう前世みたいに家に石放り込まれて親が泣くと言うのは勘弁だ


てかほんとに起こったらリオネさん心配で泣くんじゃね?とか思ってみたり


え?絶望とか失望とかしてたらしいのに何で普通でいられるかって?


前世があるからある程度…耐性出来ちまったのかねぇ?

ま、いまだに蔑みの目は慣れねぇわ


だからまぁ失望したのは俺を嫌う人間だけ

でも…この世界でまで俺を見えない扱いする奴がいたら…




その人間は“壊れたお人形”か“ダルマ”にはなるんじゃないかな……?










~ラッド視点~



変わった

そう思ったのはあいつがレイカ達を助けた翌日だ


今まで様子がおかしいってのはまぁあった


いきなりボーっとし始めたり


裏庭でずっと空を見てたり


でも

あの日から


まるで死んだ魚のような目をしてる…


って!べっつに心配なんてしてねぇんだからなっ!!


ただ…昔天狗になってた俺をあんな圧勝して

俺の視野は全く狭い物だって教えてくれた奴が

あんな希望の無い目をしてるのが見てられないだけだからなっ!


勘違いすんなよ!


て、言ったそばからハル発見!




「お~いハルぅ!」


「……」


めんどくさいのに見つかった

そうハルは思った


「リオネ先生からも聞いた、お前が冒険者相手に暴れてるとかな」


「だったらどうしたな、別にお前らに迷惑かけた覚えはネェよ」


……


沈黙


お互い言葉を選ぶのに必死なのか

ただひたすら沈黙


そして先に口を開いたのは


「もう行くわ」


ハルだった


「おいまてよ!」


ラッドはハルを引き止めようと手を肩に置いた


パシッ


「…………(ギラッ…)」


それを手で弾いて睨むハル


ラッドは困惑した


なぜならそれは

最近冒険者ギルドに行ったときに見た人殺しの目だからだ


「…ハル」


ラッドはそれ以上追って来なかった



カチャン…


ハルは自分の部屋に戻って来た


「ふぅー、OK俺超COOL」


精神の底ではやはり変わらないハルである


「さて…どうするかな」


言ってしまうとやることがない


てかネタもない

おっと失礼


「夕方だけど……寝るか

飯は……いいやいらね」



ーーーーーー

ーーーー

ーー


「起きて……ねぇ起きてよハル君」


「…へ?」


寝てる途中に誰かに体を揺さぶられて起こされた


「ふぁ~あ、なにぃ?」


欠伸を一発かました後、声の主と向き合った


「…………何のようだレイカ」


そこにいたのはレイカだった





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