第4話交渉
生活便利グッズを作って数ヶ月がたった
「はぁ~…鉄ぅ~…鉄なぁ…やっぱ金かぁ?金だよなぁ」
ガチャ…
そう愚痴っていたらふと部屋のドアが開いた
「ハルさん、お手伝いして戴けますか?」
中に入って来たのは保母さんの一人、スピュルさん
誰にでも丁寧な敬語を使う礼儀正しい人だ
ちなみに施設の手伝いは本来6歳からでたまに5歳がお呼ばれされる程度
うん、俺が最後に手伝ったのは10日位前だからな
施設は10~成人の15歳で出ていかなければ行けない
だから外に出られるようになる7歳からは
外に出るだけでなく、丁稚奉公や弟子入り等を考えなくてはいけない
…後2年……
鉄はまだまだ先の道のりにある
等と俺は思っていたのだが
金は意外な所からやってくるのである
◆
「ふぅ…スピュルさん、教室の掃除終わりましたよ」
頼まれていたお手伝い…掃除が終わったのでスピュルさんに報告
別に俺が行かなくても良いのだが
一緒に掃除していた奴らは早く遊びたいのか俺に報告を押し付けて遊びに行きやがった
…いや最後まで残っていたやつもいたけど
まぁ良い
「お疲れ様ですハルさん」
スピュルさんはちょうど外からの買い出しから帰って来た所で、ママチャリをスタンド掛けしていた
「スピュルさんも、買い出しお疲れ様です」
「いえいえ、コレがありましたからかなり楽でしたよ」
とママチャリのサドルを撫でる
「本当に…貴方の作ったこの自転車と言う乗り物は素晴らしい」
そう言ってべた褒めしてくれるスピュルさん
照れるねや
「あ、ハル君!探しましたよ‼」
後ろからリオネさんがやって来た
「ハル君に会いたいって言う人が訪問してきたんですけど」
……俺に会いたいって言う人?
「誰なんですかね?」
「ローゼンさんって言う商人さんらしいですけど」
「あ、多分私の知り合いです」
全く知らない商人の名前にリオネさんと悶々していると
スピュルさんと言う意外な線から援護が来る
「前回のフライパンなどについてローゼンさんに話したら是非会いたいって言ってましたが、アポ無しでいきなりですか…」
とスピュルさんは背筋が冷たくなる笑みで笑っていた
「えっと…とにかく行った方が良いんですよね?」
ローゼンさんとスピュルさんの二人と応接室に向かった
◆
応接室には何度か入った事がある
主に掃除だけだが
横長のテーブルにソファーっぽい椅子が四方を囲んでいて
インテリアはシンプルな花瓶
その中にはたまに外に遊びに出掛けた子供達が採ってきた野花等が生けられてる
さて、現在テーブルを跨いで対峙するのはスピュルさんの知り合い兼商人のローゼンさん
この人は短髪に人の良さそうな顔した線の細いアンチャンだ
(フム、25歳程度と言ったところか……)
等考えながら話に入る
「初めましてハル君、僕は商人のローゼンだ」
こちらを見て微笑みながら自己紹介するローゼンさん
「ハルです、初めまして」
と真顔で45度のお辞儀をする
「…ほんとに5歳なのかい?」
前世20代後半スからね
多分あんたより年上っすよーー
とは言わねぇよ、こっちの世界じゃ年下何だからな
挨拶も済みローゼンさんが話を進める
「先月くらいかな?スピュルさんと飲みに行ったときに君の興味深い話を聞いてね?
君の作った道具を見せて欲しいんだ」
◆
ローゼンさんに先ほど作った道具を見せて欲しいと言われたのでやって来ましたわ台所
で、現在ローゼンに作った道具を見せているのだが…
「こ、これがフライパン…確かにこれなら色々な料理に挑戦できる…だが見た目の割りに軽い…この材質は……ッハ!もしやアルミニウム!?」
「よく気づきましたね」
触れただけで気づくとは中々…
「なるほど…!軽いアルミニウムを使うことで重い見た目でも女性が楽に取り回しできるようにしてあるのか…ぶつぶつ……」
等と呟きながら色々な品を手に取っていくローゼンさん
「確かに…これらはとても素晴らしい…全てが超一流品質だ!」
ローゼンは今度は腕を組ながら唸る
「ハル君、これらの品を…僕の店で扱う権利を譲ってくれないか?」
そう言って来たのだ
「もちろん、売れれば売れた分だけちゃんとお金を払うよ」
と付け加えながら…
俺的には渡りに船だぜ
それとローゼンさんは商人だと言っていたな?
「良いですよ、それとローゼンさんのお店に鉄鉱石はありますか?」
一時話題をずらして俺的に一番重要な事を聞く
すると…
「…?もちろんあるよ?
今店にあるので1000㎏ほど、近くの支店から集めれば10倍は行く位はあるね」
くぅ!やはり神は我を見放してなどいなかったのだ!!
「俺のスキルは物作り…今後鉄は必須アイテム…うむっ
ローゼンさん、今回の権利代で鉄鉱石を購入したいのですが…行けますか?」
俺がそう言うとローゼンさんはゆっくり目を閉じて10秒ほど考えた後目を開けて言ってくる
「…どれくらい欲しいんだい?」
俺は迷わず答える
「ある分全部欲しいです」
そう言うとローゼンさんはまた目を瞑り
考え込みながら言う
「…それはちょっと難しいかな?
賢い君ならわかるかも知れないけど…新しい商品が出て、人気が出たら必ず周りは真似をする、稼げるのは最初だけで後からは売り上げがガクンと落ちる、数が結構多いからそれなりの値段では買い取らせて貰うけど、所持している鉄全部はさすがに無理だよ」
なるほど、確かにそうだ
この世界に著作権等…ないこともないけどあくまでも書物などだ
まぁ普通は真似されてもそのまま泣き寝入りだろうな
そう“普通”ならーー
「…ではローゼンさん、絶対売れるもう一つの商品と権利を独占できる方法を教えますからそれらを契約に上乗せしてください」
俺がそう言うとローゼンさんは一瞬呆けた後一気に詰めよって言ってくる
「権利を独占できる方法なんてあるのか!?」
俺は思わずニヤリと笑う
「あります。ローゼンさん、まずこの国の王様に商品専用の焼き印を作って貰って下さい
そうですね、ただ言うだけじゃ絶対作ってくれないのでこれらの商品を王宮に送ってください
そして1ヶ月ほど経った後に『同品質の物はうちでしか作れません』と言い、『紛い物を入れたくないので専用の焼き印を作って戴きたい』と言うのです
そうすれば品質の低い物を同額で買いたくないのなら必ず乗ってくる筈です」
つまる所ブランドの話だ
王様が許可した印を偽造するのは犯罪だからな
「ま、待ってくれ!書くのが追い付かない‼」
しょうがないのでハァハァ言いながら筆を走らせるローゼンさんを待つこと数分
「…ハァ……で、でも焼き印を作ってくれなかった場合はどうなる?」
とメモに先ほど俺が言った事を書き終え、息を切らしながらそう言ってくる
「ご安心下さい、その為に必ず売れる商品をご紹介します…正直言ってこれを気に入らない人はいないでしょう…着いてきて下さい」
そう言って俺はローゼンさんを立たせて応接室を出る
向かうは外の自転車置き場だ
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