特別になりたい
ルゥは人型になるのがまだまだ苦手だ。角をひっこめれば爪が出てしまう、爪をひっこめれば今度は鱗が出てしまう。ルゥは今日もそんな不格好な人型を取って、連なった岩の上を身軽に跳びまわっていた。
「ルゥー? お洗濯の手伝いをしてくれないー?」
マリアンが口に手を当てて、ルゥを呼ぶ。すると、はーい! と元気な声が返ってきて、まるで跳ね回るボールのようにルゥが近づいてくるのが見えた。
しかしその時。
「ひゃっ」
間抜けな声を上げてルゥの姿が視界から消え失せた。足を滑らせて落ちたのだと気付いたのは、泣き声が聞こえてきてから。
「うえええん! お母さんー!!」
「ルゥ! 大丈夫!?」
慌てて駆け寄ると、ルゥは指を押さえて泣いていた。手を開かせて見ると、そこにはほんの少し紙で切った程度の傷がついていた。
竜の頑丈さに驚きながら、マリアンはルゥの頭を何度も撫でた。
「これくらいならつばでもつけておけば大丈夫よ。ほら」
マリアンはルゥの傷口をぺろりと舐めた。
血の味が口の中に広がる。竜でもあっても血の味は人間と変わらないんだなあとぼんやり思っていると、ルゥは目を輝かせ、マリアンを見上げていた。
「ルゥの血、舐めたね」
戸惑いながら頷いてみせると、ルゥは至極嬉しそうににへらと笑った。
「これでお母さんはぼくの眷属だねえ」
「けんぞく?」
「ううん、なんでもない!」
お洗濯しよう! と元気よく駆けていくルゥ。その背中をマリアンはきょとんとした顔で見つめていた。
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