第8話 灰色世界の住人
おや? と都倉正義は思った。
横を見ると、中筋博司も顔を突き出して、前を行くタクシーを注視している。
「中筋さん。どうやら、今度は期待できそうですね」
「ああ。もうそろそろ、奴の所へ連れて行って欲しいものだね」
中筋の口調には期待が籠っていた。
ここ数日、二人は『宮崎綾香(みやざきあやか)』という若い女性に張り付いていた。彼女は、半年前に芸能事務所からデビューしたばかりのグラビア・アイドルである。刑事暦三十五年の中筋博司にとっても、グラビア・アイドルの張り込みなど初めてのことだった。
捜査本部は、奈良龍明の所在の確認に手間取っていた。今津航から、奈良には決まったねぐらが無く、新しく事業を手掛ける毎に、都内の高級シティーホテルのスイート・ルームを転々としていた、と聞き出した中筋は、捜査員の加勢も受けて、さっそく目ぼしいホテルを廻ってみたが、彼はすでに姿を消し去った後だった。
今津が警察から事情聴取を受けたとの連絡を入れ、奈良に仁義を通したためなのだが、捜査本部にとっては地団駄を踏む痛手となった。何せ、高級ホテルは都内だけでも数知れなくある。しかも、ホテルにいるとは限らない。都内を出て賃貸マンションでも借りていれば、管轄外にもなり、すっかりお手上げとなる。
だが、何よりも気掛かりなのは、奈良が頻繁に海外旅行に出掛けるということ、それも一ヶ月程度の長期滞在もあるという今津の証言であった。
さすがの中筋も途方に暮れ掛かっていたところへ、有力な情報が持ち込まれた。それは、以前奈良が長期滞在していたシティーホテルの男性従業員からのものだった。
奈良龍明は、若い女性を連れてホテル内の寿司、天ぷら、鉄板焼き、ラウンジーバーなど、至る所で飲食していたところを目撃されていた。むろん、男性従業員に奈良の素性はわからなかったが、連れの女性の方に見覚えがあった。女性はサングラスを掛け、正体を隠すようにしていたが、正体を見抜かれていた。男性従業員は、彼女の熱烈なファンだったのである。
その女性こそが宮崎綾香だった。彼女は、最近になって週刊雑誌のグラビアを飾ったり、バラエティ番組に出演したりし始めたばかりの、まだ駆け出しのタレントだったが、マニアックなファンの目からは逃れることはできなかった。
同僚から、警察が若い女性を連れた、奈良龍明という長期滞在者の男の行方を追っていると聞いた彼は、もしやと思い支配人に届け出たという次第である。
奈良は、起業当初に出資をする、いわゆる『エンジェル投資家』として様々な事業を手掛けていた。そこは大王組三代目・大岡組長時代からの直系若衆の一人だった、奈良龍一郎の血を受け継いだだけのことはあって、儲け話には独特の嗅覚が利いた。奈良は、そうして先行投資時に取得した株を、事業が軌道に乗り高値になった頃合を見て売り捌き、利鞘を稼いでいた。
その額は、累計で二十億円を超えていたが、奈良がリスクのある起業の投資に手を出すのには、金のためだけではなかった。彼には、あるトラウマともコンプレックスともいうべき心の病を抱えていたため、ある種特別な女性を追い求めていたことも理由となっていた。
奈良龍明は、人一倍感受性の強い子供だった。そのため、極道の息子という裏社会に生まれた宿命から、幼少より世間の嫌悪と差別の眼差しに晒されながら育ったせいで、知らず知らずのうちに精神が蝕まれてしまっていた。
彼は、そのトラウマから逃れるために、大龍組を勝部幹夫に譲ったのであり、コンプレックスの捌け口を、一般女性ではなく、表社会でも華やかなスポットライトの当たる芸能人に求めたのだった。
つまり、新事業を展開するに当たって、宣伝用のパンフレットやプロモーション・ビデオのモデルに応募して来た、タレントやモデルらを物色することで、精神の均衡を図っていたのである。宮崎綾香もその毒牙に掛かったという訳であった。
中筋は、さっそく宮崎綾香の所属事務所を訪れ、奈良との関係を問い質したところ、事務所の社長はあっさりと、二人はインターネット・ウェブサイト事業のCM撮影で知り合い、すぐに深い関係になった、と証言した。
中筋は苦々しい思いに駆られた。今の時代、宮崎綾香のようなグラビア・アイドルは腐るほどいる。たとえ、大手の芸能事務所であっても、よほどの金の卵でなければ、大金を投入して売り出すようなことはしない。まして弱小事務所であれば、皆無と言ってよい。
芸能界は、厳しい過当競争の世界である。デビューしたからといって、ごく一握りの者以外は、仕事がほとんど無く、たまにあってもギャラが安いので、彼女らの生活は苦しい。
そこで多くの者は、アルバイトや親の脛を齧ることになるのだが、中には宮崎綾香のように、早々と金持ちの愛人になり、生活の保障を確保した上で、芸能活動を続けながら、チャンス到来を待つ者もいるのである。運が良ければ、愛人自身がテレビ番組や映画のスポンサーとなり、仕事を提供してくれることだってあるのだ。
一方で、思いがけず成金となった連中も、元々志というものが無い故か、金の使い方がわからず、自ずと女の尻を追い掛けることに血道を挙げるようになってしまう。
この不況下でも、六本木の高級クラブ・ベルサイユが、殊の外盛況な理由の中に、そういった需要者と供給者の利益が合致する場所を提供しているという側面があることも否めなかった。
暗澹たる思いの中筋は、自分は古臭い人間なのだろうな、と自嘲するしかなかった。
宮崎綾香が住んでいるマンションは、ケヤキ並木のショッピングストリートとして有名な青山・表参道から、一筋南の筋にあった。たった一筋違うだけで、表参道の喧騒から離れ、閑静な中に新築のマンションが立ち並んでいた。彼女の住まいはワンルーム・マンションと聞いていたが、八畳間と六畳のダイニング付キッチンがあり、浴室とトイレを加えると三十㎡はあった。この辺りの相場は、一㎡当たり一万二千円はするので、家賃は三十六万円以上になる。
事務所の社長の話では、宮崎綾香にそれほどの収入は無い。となれば、奈良との関係が続いているとみて間違いなく、彼が連絡を取るのも時間の問題と、二人は三日前より、彼女の張り込みをしていたという訳である。
その間、彼女は度々外出することはあったが、仕事の他は友人らしき女性と会っただけで、奈良との接触は一切無かった。
「中筋さん。それにしても、つくづく世の中は不公平にできていると思いますね」
都倉は溜息混じりに言った。
「何のことかね」
「奈良のことですよ」
「彼がどうした」
中筋は大よその見当は付いたが、敢えて訊ねた。
「こんなことを言うと、彼には悪いですけど、あの風体ですよ」
「禿げていると言いたいのだね」
「ええ。写真で見る限り、顔も十人並み以下です。それが、金持ちというだけで、宮崎綾香のようなアイドル・タレントと関係を持てる。私のような安月給では、とても考えられないことです」
中筋には投げやりに聞こえた。
「羨ましいかね」
「正直に言えば……。彼女は、まだあまり売れていないようですが、一般人の中に混ざると、際立って可愛いですよ。芸能界って、あんな娘ばかりいるんですかね」
「そうなのだろうな。だがな、都倉君。少し冷静になってみろ。たしかに見てくれは良いが、彼女は自分の夢か金かは知らないが、目的のためなら好きでもない男にも簡単に肌を許すような女だぞ。そのような類の女と付き合って、君は本当の幸せを感じられると思うのかい」
「それは……」
都倉は返す言葉に詰まった。中筋は穏やかに言ったが、都倉は耳が痛かった。そこに、父親のような愛情を感じたのである。
そのとき、後方から一台のタクシーが中筋らの車を追い越してマンションの前に止まった。しばらくして、宮崎綾香が姿を現し、そのタクシーに乗り込んだ。
これまでも何度かあった光景だったが、今回は様子が違った。タクシーは、途中からいつもの道筋とは違う方向に向い出したのである。中筋は、同じくマンションの裏手に待機していた覆面パトカーに連絡し、適当に交代を繰り返しながら、タクシーの追尾中だったのである。
タクシーは、表参道から明治神宮を横に見ながら通り過ぎ、新宿を経て、中央本線大久保駅近くのホテル前に止まった。入り口の庇に『ルネッサンス・東京ホテル』との文字が刻んであった。高級シティーホテルとは比べようもなく小さいが、中世ヨーロッパ調の貴族の別荘を思わせる洒落たデザインのホテルだった。
宮崎綾香は、辺りを見回しながら中に入っていた。中筋は都倉を車に残し、彼女がエレベーターの中に消えたのを確認してからフロントに近づいて行った。
中筋は、まず警察手帳をホテルマンに見せると、続いて胸ポケットから一枚の写真を取り出した。宮崎綾香が所属する芸能事務所の社長から入手した集合写真を元に、奈良の顔を最新の技術で拡大補正したものである。ホテルマンから奈良の滞在を確認すると、中筋は直ちに石塚警部補に連絡を入れた。
麻布署では、幹部による奈良の所在が確認されたときの対応が検討されていた。もちろん、現状では奈良を強制的に連行することはできない。となれば、事情聴取を行うためには、任意同行を求めることになる。これは、ある意味大きな賭けでもあった。
任意同行によって、彼が素直に自白すれば問題ないが、一気に自白まで追い込めない場合、捜査の手の内を知られることになり、その後の追及に支障をきたすことも考えられるのだ。しかし、奈良の供述以外に、これといった決め手の無い現状では、危険を冒してでも任意同行を求めるべき、との見解で一致した。
ただ、任意同行である以上、奈良が応じなければそれまでなのだが、中筋から逐次報告を受けていた森野は、ある秘策を胸に秘めていた。
石塚に連絡を入れた後、ホテル内には駐車場が無く、隣接する敷地を借り受けていることを確認した中筋は、引き続き都倉をホテル正面に待機させ、別働部隊をホテルの裏側に回らせると、自らはエレベーターが見えるところに身を潜めて、不測の事態に備えた。
森野と石塚は三十分後に到着した。中筋を加えた三人は、最上階のスイート・ルームとへと向った。奈良は十階を四分割した内の一つ、約二十坪のスイート・ルームを一ヶ月間押さえていた。それでも、一日の宿泊代金は六万円と、シティーホテルの同じ広さの部屋に比べれば格安だった。
森野係長が扉の横のインターホンを押し、対応に出た宮崎綾香に『警視庁の森野』と告げると、ひと悶着する気配がした後、奈良が出た。
「け、警察が、な、なんの用や」
奈良の声は震えていた。それは、極道の血を引いているとは思えないほど怯えたものだった。
「堀尾さんが亡くなられたのはご存知でしょうか」
「ああ、堀尾……、テレビのニュースで見た」
奈良の声に落ち着きが戻った。
中筋は、インターホン越しの声に違和感を抱いた。真犯人であれば、通常は被害者の名を聞けば動揺するものだが、警察と聞いて酷く動揺した奈良が、堀尾の名を聞いて、逆に安堵したように感じたのである。つまり、奈良は堀尾貴仁殺人事件以外に、脛に傷を持つ身だということになるのだが、中筋がそれ以上の推量に及ぶことはなかった。
「その件で、お話をお聞きしたいのですが」
「なんでや」
今度は、強気に転じた。
「貴方は堀尾さんとご親交がお有りでしたね」
森野は丁寧な言葉遣いをした。こういう人種は、上から見下すと反発し、下から仰ぎ見ると、口が軽く手合いが多いことを知っているからである。
「親交といっても大したことやあらへんで」
「一緒に事業をなさろうとしておられた、と伺っていますが」
「そんなこともあったが、とうの昔にぽしゃった話やで」
明らかに投げやりな口調だった。
「その辺りのことについて、お話をお伺いしたいのです」
「話すことはなんも無いな」
奈良は、いっこうに取り合わなかった。
「そうおっしゃらずに、ご協力願えませんか」
森野は、あくまでも下手に出た。
「無いと言うてるやろ。どうしてもというなら令状を持って来いや」
奈良は語気を荒げ、決め文句のように言った。彼の言うとおり、任意同行であれば、これ以上無理強いはできなかったが、森野には余裕が見られた。
「宜しいんでしょうかね」
と表情が読めない分だけ、意味深な口調を強めた。声の変調に、奈良は疑心暗鬼になった。
「どういう意味や」
「調べさせて頂いたのですが、奈良さんはずいぶんと儲けられておられるようですね」
森野の口調に、嫌味な色が加わった。
「それがどうした」
癇に障った奈良の苛立ちが伝わった。
「二十億ぐらいは儲けておられますね」
「だから、それがなんやねん」
「税金は納めになりましたか」
「うっ」
奈良は絶句した。皮肉なことだが、彼はある意味で真っ当な経済活動をしている。したがって、関係した企業側の経理を調べれば、奈良の収益は捕捉することができるのだ。
「国税局に告発すればどうなりますかね。重加算税が加わり、十億ほどの追徴課税は良いとしても、下手をして刑事罰を受けることになると、問題ではないですか」
「そ、それは……」
扉越しに、彼の狼狽ぶりが手に取るようにわかった。よほどの悪質でなければ、脱税で実刑になることは考え難く、たいていは執行猶予が付く。だが、脛に傷を持つ身の奈良にはかなり衝撃だったようである。
すかさず森野は甘い餌を投げた。
「任意同行に応じて頂ければ、不問に付すこともできるのですがねえ……」
奈良は、すばやく頭を働かせた。
「ほんまやな。任意同行に応じれば、目を瞑ってくれるのやな」
先ほどまでの強気な態度が嘘のように、弱気な声だった。
「私たちは、殺人事件の捜査をしているのであって、税金のことは管轄外ですからね」
森野は、極めて曖昧な答え方をした。言外に、たとえ任意同行に応じても、非協力的であれば容赦しないとの意思を込めたのである。
「なら、応じよう。用意するさかい、二十分ほど下で待ってくれるか」
用心のため、中筋がエレベーター・ホールに留まり、森野と石塚はロビーで待つことにした。
同じ頃――。
村井慶彰は、臨時取締役会でジャスト・ウイナーズの新社長に内定した土江徹と社長室で面談していた。正式には六月下旬に開催される株主総会で承認される運びとなるが、彼はさっそく堀尾色を一掃することに躍起となっていた。
その手始めとして目を付けたのが、 堀尾の一存と言っても良いくらいに独断で推し進めていた株式投資だった。
土江は、牧野モーター株の売却を村井に申し出た。村井は、これをあっさりと承諾した。彼は、堀尾亡き後のしばらくの間、後継者の一番手であった土江の動向を注視し、人となりを分析していた。
その結果、自分たちの投資仲間に入れるには不適格という判断に傾いていた。そこへ今回の申し出である。村井は、完全に見切りを付けたのだった。
話が終わり、村井が席を立とうとしたときである。土江が妙なことを言い出した。
「お待ち下さい、村井さん」
と右手を前に差し出して、村井を押し止めた。
「何か他にありますか?」
「仕事のことではないので恐縮ですが、ちょっと気に掛かることがありまして……」
歯切れの悪い土江に、村井はつとめて気安く言った。
「良いですよ。何でもおっしゃって下さい」
「実は、堀尾さんのことですが……」
土江は、警察の事情聴取を受けたときには失念していたが、先日何気に手帳を捲っていると、ある日のメモに目が留まったのだという。その日は月曜日だったが、堀尾が理由も言わず、急に休暇を取ったのだ。ウィナーズでは、毎週月曜日に定例役員会議を行っていたが、堀尾はこれまで欠席どころか遅刻すら一度もなかった。
たしかに、休暇を取って女性と旅行に行くことはあったが、その場合は決まって金曜日であった。その堀尾が、突然月曜日の役員会議を火曜日に延期したいというのである。彼が殺害される、ちょうど一ヶ月前の三月二十二日のことであった。
生前の堀尾の奇妙な行動とあって、村井も興味が沸いていた。土江はもちろん、村井にしても、堀尾が殺害された理由を知りたいと思うのは人情である。
「役員会議を延期した理由に心当たりはないのですか」
「それがあれば、胸が痞えることもないのですが……」
「堀尾さんの様子はどうでした?」
「何か、とても嬉しそうでした」
「嬉しそう? では、口説いていた女性からでも、良い返事をもらったのではないですか」
村井は、土江を窺いながら真顔で言った。
「いいえ、少し違うような気がします。そのような類ではなく……、そうですねえ、例えて言うならば、何か大きな商談をまとめたときのような、晴れ晴れとした達成感の中に、緊張感のようなものが入り混じっていました」
はて? と村井は思った。堀尾のそのような表情は見たことがなかったのである。
「堀尾さんは、これまでもお一人で契約をまとめるようなことがあったのですか」
「一度もありません」
土江はきっぱりと断言した。
堀尾貴仁は、コンピューター・ソフトウェアーの分野では、天才的な発想と卓越した技術を持ち合わせていたが、営業的センスは全く無く、プレゼンテーションなどで客先と接触するときは、必ず誰かがサポートに付いていた。したがって、土江の知らないところで新規契約を取り付けることなど、とうてい考えられなかった。
「たしかに、気になるといえば気になりますね」
「彼が殺害されたことと関係があるかもしれませんし、警察に届け出るべきでしょうか」
「一応、警察に知らせた方が良いとは思いますが、気が重いとおっしゃるのなら……、どうでしょう、明日私は麻布署の刑事さんとお会いしますので、ついでのように刑事さんの耳に入れましょうか。そのうえで、貴方から詳しく聞きたいと判断すれば、向こうからやって来るでしょう」
村井は助け舟を出した。土江の心情が手に取るようにわかっていたからである。
「そうして頂ければ助かります。わざわざこちらから連絡をして、ガセネタだったら、そう思うと気が重かったのです」
土江はほっとした表情を見せた。新任社長の彼は、カリスマ創業者だった堀尾のことについて、迂闊に社内の人間に話すことはできなかった。批判はもちろんのこと、たとえ賞賛であっても、穿った目で見られないとも限らないからである。
投資仲間としては、不適格な土江ではあるが、堀尾亡き後、彼が創業したウィナーズを守っていかなければならない。何かにつけて、カリスマ社長だった堀尾と比較されて、その心労はいかばかりかと想像に難くなかった。
村井は土江に対して、出来得る限りの助力をしようと心に決めていた。それが、短い期間だったとはいえ、同志であった堀尾貴仁の冥途への餞だと思っていたのである。
麻布署の三階にある第二取調室において、奈良龍明の事情聴取が始まった。担当したのは森野係長と石塚警部補、そして中筋刑事である。嫌疑の度合いにもよるが、裁判所の令状による逮捕、つまり被疑者の取調べとは違い、一般的に任意同行の聴取は比較的穏和な空気のもとで行われる。できるだけ事実を引き出すのが目的であり、相手に緊張感を与えて寡黙になられるのを避けるためである。
被疑者の取調べは、たとえ黙秘をされても、家宅捜査など別の捜査方法があるが、任意同行による聴取の場合、供述を引き出せなければ意味が無いのである。
奈良の場合は、少し事情が違ったが、それでも三人は慎重な態度で臨んだ。
「お忙しいところ、申し訳ありませんね。手短に済ませたいと思っておりますので、ご協力お願いします」
森野は微笑を浮かべて言った。一見、ずいぶんと丁寧な言葉のようだが、その裏には徹底的な追求の示唆が含まれていた。
「そう願いたいもんやな」
奈良は、すでに落ち着きを取り戻していた。そこは、仮にも大物の極道の血を引くだけのことはあって、無理やり平静を装っているようには見受けられない。それだけに、ホテルでの彼の狼狽した第一声が中筋には解せなかった。
「さっそくですが、堀尾さんとは、いつ頃どのようにして知り合われたのでしょうか」
「半年前やったな。知人の紹介で知り合った」
「その知人とはどなたでしょうか」
森野はその人物を知っていたが、奈良を試すためわざと訊いた。
「佐伯という男や」
「野沢証券の佐伯さんですね」
「なんや。知っとるんなら訊くなや」
奈良は、森野を睨み付けた。さすがに、素人の犯罪者とは違う迫力があったが、その程度で気圧される森野ではない。
「貴方の口から聞きたかったのです。ところで、投資事業組合を通じて、お二人はどのような事業を計画されていたのですか」
と何気に核心へと近づいた。
「それも知っとるのやろ」
奈良は投げやりに言った。
「ブック・メーカー事業ですね」
「そうや」
「でも、途中で頓挫しましたね」
「そんなことあらへん。ホテルでも言ったやろ」
「そうでしょうか」
森野は逆なでするように言った。
「何が言いたいんや」
奈良は声を荒げた。
「堀尾が、資金の提供を断ってきたのではないですか」
森野も語気を強め、奈良を射竦めるように見た。奈良は、森野の気迫に押されるように、伏せ目勝ちに言った。
「ああ、そうや。せやけど、新しいスポンサーの目途も付いたし、困ってはおらん」
「契約違反ですよね」
森野は諭すように訊いた。声を強めたり賺したりして緩急を付けるのは、取り調べの常道である。
「それは違うな。まだ口約束の段階で、正式な契約書は交わしておらんかった」
案の定、奈良はほっとした表情に戻っていた。
中筋は、奈良の言葉に頷いていた。彼の言葉が真実ならば、投資組合の契約書が見つからないはずである。
「口約束とはいえ、堀尾はかなりの額を用立てるはずではなかったのですか」
森野の追求は続いた。
「たいした額やあらへん。全部で十億やが、当面は五億ほどや」
「ほう。十億が大した額ではないとは、業腹ですね。しかし、ブック・メーカー事業は、とにかく金が掛かると承知していますが、本当に大丈夫なのですか」
「どういう意味や」
「大王組のことですよ」
「大王組? そんなもん関係あらへんがな」
「そうでしょうかねえ。今度の事業は、大王組の了解がないとどうにもならないでしょう」
奈良の頬が引きつった、咄嗟に言葉が浮かばず、目も泳いだ。ホテルで、税金の話を持ち出したときと同じ間ができた。
機を看て取った森野が畳み掛けた。
「大王組と話しを付けたのは、奈良さん貴方でしょう。そうであれば、事業の停滞は問題になるのではないですか」
急所を突かれた奈良は、数瞬言葉に迷った。
それでも、
「なんのことか分からんな」
と追求を交わそうとした。
「上納金です。それで話を付けたんでしょう」
森野の追求の手は厳しさを増していった。
だが、奈良も然る者で、
「それなら問題はない。あくまでも、事業が軌道に乗った後の話や」
と抗弁し返した。たしかに正論である。
このままでは、埒が明かないと思った森野は、そろそろ本題に入ることにした。
「そうですか。ところで、堀尾さんはどうして出資を取り止めたのでしょうか」
「知らんがな」
奈良は、都合の悪いことは知らぬ、存ぜぬ、を口にした。
「貴方が知らないはずがないでしょう。堀尾さんは裏で色々と画策していた。そのことで、貴方と確執ができたのではないですか」
「確執やて? 堀尾がいったい何を画策していたと言うんや」
森野は、ふっと息を吐くと、ついに核心に触れた。
「はっきり言いましょう。堀尾さんは、貴方の事業を乗っ取ろうとしていたのでしょう」
これは森野の賭けだった。
捜査本部は、堀尾がブックメーカー事業のライセンス取得者である今津航に株式の買取りを打診していたことまでは掴んでいたが、彼に断られた後、どのような行動に出たのかまでは掴めていなかった。
そこで、奈良に鎌を掛け、反応を見ようとしたのである。森野が息を吐いたのはその合図であり、石塚と中筋も奈良の目の動きを食い入るように注視した。
だが、三人の目論見は見事に外れた。
「ははは……」
奈良は高笑いした。
「堀尾が乗っ取るってか? あほな。堀尾にそないなことができるはずないやろ。第一、大王組の了解を取らなどうにもならんって言うたのはあんたやろ。俺を裏切った堀尾に、何ができるって言うんや」
奈良はこれもまた見事な正論で、森野の思惑を一蹴した。嘲笑を含んだ言い様に、森野は返す言葉を失った。
これはまずい、と判断した石塚が機転を利かし、追及の鉾先を変えた。
「話は変わりますが、堀尾さんが亡くなられたのは、いつお知りになりましたか」
「次の日や。これも、ホテルでも言ったがな」
「そうでしたね。では、堀尾さんが殺害された、四月二十二日の午後十時半から同十一時半の間、どこに居られました?」
「アリバイか。えらい回りくどいことしたの。端からそれが目的やったんやろ」
すっかり余裕を取り戻した奈良は、皮肉まで込めた。
「関係する皆さんにお聞きしていますので……」
石塚は動ぜず、極めて事務的に言った。
「東京シェラトンホテルにおった」
「どなたか証明する人はいらっしゃいますか」
「そうやなあ、宮崎綾香やな。彼女と一緒に居ったわ」
「彼女ですか」
石塚が疑問符を付けた。
「なんや、あかんのか?」
「家族や親族はもちろんなのですが、貴方と深い関係のある彼女でも弱いですね。第三者の方はいらっしゃいませんか。たとえば、ルームサービスを取られたとか、部屋の電話を使ったとか」
「無いな。携帯なら有ったけどな」
「携帯は駄目なんです」
「なら、あかんな」
奈良はまるで他人事のように言った。
「困りましたね」
「俺は困ってへんで。俺のアリバイの裏取りはそっちの仕事やろ。もうそろそろ帰ってええか」
奈良は平然としていた。自分の立場で、アリバイが無いという状況を十分理解しているはずだった。然るに、彼の悠然とした態度は事件と関わりが無いのか、それとも虚勢を張っているのか、森野と石塚は見極められなかった。
二人に代わって、この間のやり取りを注視していた中筋が揺さぶりを掛けた。中筋は、奈良のある弱点を見抜いていた。
「最後にもう一つだけ、宜しいですか」
「ええやろ」
「弟さんはどうされていますか」
「弟……?」
奈良の声の色が変わった。
それでもすぐさま、
「弟とはここ十年ぐらい会うてへんから、何やってるか知らんな」
ともっともらしい言葉を継いだが、これは明らかに失言だった。
「そうですか。では、教えてあげましょう。弟さんは大龍組の中堅幹部になっておられます」
「ほう、そうか」
奈良は、極めて抑揚無く言った。だが、必死に動揺を隠そうとする心の現われを、中筋が見逃すはずがなかった。
「噂をお聞きになっておられませんか」
「無いな」
「それはおかしいですね」
中筋は、思わせぶりに言った。
「なんでや」
中筋の不適な笑みに、奈良は弱々しい声になった。
「大王組とは、貴方が話をお付けになったんでしょう」
「そ、そうや」
「じゃあ、弟さんの噂は耳に入るはずですが」
「弟は一極道に過ぎんのやで、なんで俺の耳に入るんや」
「弟さんは、四年も大王組本家で修行されているのですよ」
奈良は顔色を失った。失言に気が付いたのである。中筋の思う壺に嵌まった瞬間であった。
「前途洋洋ですな」
「……し、知らんな」
奈良は、そう搾り出すのが精一杯だった。
「いえいえ。貴方が知らないはずがないでしょう」
中筋は、逆なでするように言った。
およそ大王組の組員において、本家で修行をするということは大変な名誉であり、出世コースに乗ったことを意味していた。毎年、全国の大王組傘下から目ぼしい者が五十名ほど推薦され、若頭の厳しい面接を通った十名ほどが本家に住み込んで、当代組長の警護や身の回りの世話などを手伝うのである。
年季は特に決まってはいなかったが、たいていの者は一年、長くても三年で終えた。過去を振り返れば、長ければ長く務め上げた者ほど、その後の出世が早い事実があった。それだけ、時の組長はじめ、最高幹部に能力を認められ、可愛がられた証拠だからである。
奈良龍一郎の極道としての本分の遺伝子は、七歳年下の実弟・龍之の方が濃く受け継いでいたらしく、彼はすでに四年もの間、山城六代目の許で修行を積んでいた。それは、大王組最高幹部への道が敷かれているのと同然だったのである。
大王組と話を付けた奈良龍明が、極道世界で華々しい出世街道を突き進む実弟龍之の噂を耳にしないはずがなかった。
「参ったのう。そこまで調べとったんか。せやけど、念のため言うとくが、堀尾の件とはなんの関係もないで」
「私は、弟さんが関係あるとは一言も口にしていませんよ」
中筋の口元が綻んでいだ。奈良は失言を重ねてしまったのだ。
「い、いや。せやから念のためと言うたやろ」
奈良は、すっかり平常心を失っていた。
ここが潮時と判断した森野が、石塚と中筋の目顔の了解を得て、
「それでは、今日はこの辺でお帰り頂いて結構です」
と事情聴取終了を宣した。
「ほうか。ほな、帰らしてもらうわ」
そう言って席を立った奈良の面には、はっきりと失意の色が浮かんでいた。一方で、警察側も核心を突く供述を引き出すことができず、結局のところ事情聴取は痛み分けの形で終わった。
この一部始終を、マジックミラー越しに覗き見ていた都倉正義は、永らく封印された記憶の襞を何かに突かれた気がしたが、その正体までは分からなかった。
銀座のクラブ檸檬へ繰り出すため、光智はサンジェルマンで、真司と待ち合わせをしていた。
光智は、カウンターの左端の椅子に座った。土地の一件以来、この場所が彼の指定席となっていたが、初めて訪れた日の敵意剥き出しの視線はすでに無く、恭子の恋人の席として満席のときでも必ず空けてあった。
恭子がカウンターを出て光智の隣に腰を下ろすと、身体を摺り寄せてきた。彼女は実に天真爛漫で、周りの目を気にして遠慮するというようなことは一切なかった。
「ねえ。智君はコンピューターに詳しい?」
「いきなり、どうしたの」
「マンションのあの部屋、パソコンがたくさんあるじゃない」
光智は固く秘匿していたディーリングルームを恭子にだけは見せていた。
「だからといって、詳しいとは言えないな。コンピューターがどうかしたの?」
「私ね、今日面白い話を耳にしたの」
恭子は、短大時代の友人と久しぶりに会い、青山で買い物をした後、ホテル・ニューオオサワに用事があるという彼女に付き合い、ティーラウンジで休んでいたときだった。
彼女の真後ろのテーブルにいた男性二人の会話が聞こえてきたのだという。白人と東洋人の英語での会話だったので、正確に理解できたかどうかは自信がないものの、掻い摘んで言うと、英国本社のホストコンピュータが、日本のパソコンからハッキングされたので、調査したところ、首尾よく犯人の目星が付いたというものだった。
「ハッキングなら、相当な技術がいるし、僕とは無縁だね。それより恭ちゃん、英語わかるの?」
「こう見えても、短大は英文科なのよ。少しぐらいは分かるわ」
恭子は胸を張った。豊かな胸が強調される。
「それはそれは、御見それしました」
光智は大仰に返した。
「でもね。その『ババ』とかいう、たぶん日本人がとても気味が悪かったの」
「何かあったの?」
「目が合ったとき、睨み付けてきたの」
そのときの顔を思い出したのか、恭子は身震いをしながら言った。
「聞いていたのがわかったのかな?」
「ううん。そうじゃなくて、私が馬鹿にした、と誤解したと思う」
「馬鹿にするって?」
彼らが先に席を立ったのだが、その日本人はとても背が低く、百六十五センチの恭子と比べてさらに小さかった。日本人なら、さして珍しくもないが、一緒にいた白人が、反対に長身だったため、そのアンバランスに、恭子は思わず見比べてしまったのだ。
「そうか。ババという男は、恭子ちゃんの目の動きを見逃さなかったんだね。小さいことにコンプレックスを抱いている人なら、怒るかもしれないね」
「でも、普通の人が怒った目とは違う気がした。背筋がゾクゾクっとしたもの」
恭子は顔を顰め、嫌悪感を剥き出しにした。
「ハッキングの調査だから、尋常な人間ではないのかもしれないね」
「どういうこと?」
「探偵とかは、元刑事が多いから目つきも普通じゃないしね」
「智君も取調べを受けているとき、刑事さんの目が怖かった?」
素朴な問いである。恭子の純真な瞳に、光智は返答に苦慮した。
実際、刑事の人相は良くない。凶悪犯やヤクザ者を相手にしているため、ついつい眼つきが悪くなるのである。中には、黙ってヤクザ者と一緒にいると、どちらがどちらか見分けが付かない者もいるほどである。
「そ、そうだね……」
光智は曖昧に答えた。
物心が付いた頃から龍頭の中で育った彼は、その種の目には慣れていたが、口にする訳にはいかない。
「でも、恭子ちゃんが英語を話せるなんて、驚いたなあ」
光智は巧みに話をすり替えた。
「それほどでも……」
感心しきりの光智に見つめられ、恭子がはにかんで顔を赤らめたところへ、真司がやって来たので、彼女は再びカウンターの中へ戻って行った。
麻布署では、幹部による奈良龍明の事情聴取の検証が行われていた。
「どうだね。何か収穫はあったか」
山根捜査本部長が訊いた。
「何とも言えません。五分五分でしょうか」
森野係長が答えた。
「石塚君はどうかね」
「黒に近い灰色といった感触を得ました。ですが、あの落ち着きようは気になります」
「生まれつきのものではないのか。彼はただの一般人ではないぞ」
「それも、有るには有ると思いますが……」
石塚はそれ以上言葉を継ぐことができなかった。
すると、
「私は実行犯ではなくても、殺人教唆か犯行を依頼した可能性は高いという感触を持ちました」
中筋が所感を述べた。彼は幹部ではないが、事情聴取を受け持った参考人として特別に会議に参加していた。
「中さん、確信があるようだね」
山根捜査本部長の口調が柔らかくなった。彼は中筋が年長だからというのではなく、能力があるにも関わらず、昇給試験を一切受けず、現場一筋に精勤してきたことに心から敬服していた。
そして、本庁の森野や鵜飼、安宅といった、いわゆるキャリアと呼ばれる幹部候補生が、中筋のような職人肌の刑事と接することで、警察官の本分を啓発されることを期待していた。
中筋は、これまで幾度も本庁から転出の誘いを受けたが、頑として断ってきた。山根は、そのように何者にも媚びない中筋に、ますます敬意を持つようになったのである。
「たしかに奈良の態度は、概ね落ち着いたものでしたが、大王組と弟の龍之の話を振ったときだけは、いずれも明らかな動揺を見せました。これは心にやましいことのある証拠だと思います」
「そうか。中さんが言うのなら、まず間違いはないだろう。だが、ここに至ってもいまだ物証が一つも無い。これでは、我々の敗北は濃厚になるぞ。良いか、今度奈良龍明を引っ張ったら、必ず自白に追い込める証拠を掴め」
山根捜査本部長の強烈な檄が飛んだ。
その気迫に皆が気圧される中で、
「大龍組と関東の枝である横浜・勝栄会の動向を把握すべきかと思います」
と、中筋が毅然として言った。
「そうだな。私から本庁の捜四にも協力を依頼しよう」
捜四とは捜査四課、暴力団担当部署のことである。
この会議で、
奈良龍明と堀尾貴仁の関係の徹底解明。
奈良龍明のアリバイの裏取り捜査。
大龍組と勝栄会の動向の把握。
以上の項目を、捜査の最重点に加えることが再確認された。
一方、本富士署の福間刑事は奇妙な情報を耳にしていた。
再度、近所の聞き込みをしたときのことである。加賀見宅と道路を挟んで斜向かいの家に住む女子高校生が意外なことを口にしたのである。その家の奥さんに聞き込みをしていたところへ、土曜日で高校が休みだった彼女が居た堪れないように口を挟んだのだった。
女子高生が刑事の聞き込みに、自ら口を挟むことなど大変に珍しいことだが、彼女は、ずっと喉の奥に刺さった魚の骨ように、気になって仕方がなかったというのである。
それは、ちょうど一年前の今頃の時期だった。その日も土曜日で、彼女は部屋で勉強をしていた。彼女の部屋は道路側にあり、しかも机は道路側の窓に向かい合っていた。
午後十時頃、加賀見宅から若い女性の悲鳴のような声が聞えたというのだ。一度目は、空耳かと思いやり過ごしたが、二度目ははっきりと『止めて下さい』という声を聞いたという。
彼女は、窓を開けて加賀見宅の様子を窺ったが、その後は別段変わったことはなかった。それでも、気になった彼女が窓を少しだけ開けたままにして机に向っていると、それから二十分後、加賀見宅の方から戸が開く音が聞こえ、若い女性が逃げるように立ち去って行くのを目撃した。彼女は、女性の顔をはっきりと確認することはできなかったが、電灯に照らされた後姿は大学生風だったと証言したのである。
それ以来、変わったことがなく、すっかり忘れていたが、加賀見が殺害されたと知った途端、フラッシュバックを起こし、脳裏にこびり付いて離れなかったとのことだった。
今回の事件と繋がりがあるかどうかは不明だが、福間は捜査会議で報告した。
また、野崎によって光智にも知らされた。
もう一つ。加賀見が殺害されたとき、彼の手元にあったのは三千万円ではなく、五千万円だったことが判明した。
その日、本富士署の捜査本部に『二宮(にのみや)』という初老の男性が訪ねて来た。対応した捜査員によると、加賀見が殺害される十日前に、五年前に借りていた二千万円を返済したというのだ。父親が先代の加賀見と親しかった関係で、息子である二宮も被害者とは子供の頃から親交があり、加賀見は快く借金の申し出に応じてくれたのだが、事件と関わりたくないという思いから、通報が遅くなったというのである。
銀行口座等の裏付け捜査で、二宮の証言は事実であることが裏付けられた。これにより、真犯人は三千万円を持ち去ったことになった。
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