夢見る枕

 誰でも理想の夢が見れると噂の枕を男は買った。

 効果はてきめんだった。男はその枕を愛用するようになったが、最近は枕の調子が悪いのだろうか、頻繁に悪夢を見てしまう。


 男は修理の依頼を手紙に書き、何度もそれを製造元の会社に送ったが一向に返事は来ない。

 やがて、一日の終わりがやって来て男は枕と共に床につく。


 揺れる満員電車、怒鳴る上司、クレームを付けてくる客。今日もいつもと同じ悪夢を見る。


 男は夢から覚めると、何十回書いただろうか、もはや日課となった修理の依頼を手紙にしたためる。

 そして書きあげた手紙を、飼っている伝書鳩の足に取り付けた。

 穏やかな春の日射しを受けて、緑の木々が生い茂る森の上を鳩は飛んで行く。

 睡蓮が咲き誇る湖。その上に浮かぶ一軒家から、ひぐらしの鳴き声に包まれて、男は今日も理想の現実を満喫する。

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