事件の真相
スキー場で子供が一人いなくなった。両親が目を離した数分の間に何処かに消えてしまったらしい。
警察やボランティアが探したものの手掛かりは見つからなかった。
消えた男の子は何処へいったのか。答えは空の上だ。といっても天国に行ったわけではない。小さな宇宙船に乗っていたのだ。
「おい坊主、お前あんなところで何してたんだ。」
2人組の宇宙人の片方がそう聞くと少年は
「んーとねー。宝探し。」
と無邪気に答える。
「おいおいあの山にはお宝でも眠っているのか。」
その呟きにもう片方がモニターを見て答える。
「アニキ、そいつの言ったことは本当らしいですぜ。連れ去った場所の山、大勢の人間が何かを探してウロウロしてますぜ。」
どうやら二人はアニキと子分のようだ。宇宙人にとっては宇宙船で誘拐なんて当たり前、なんで人間達が見当違いの場所を探しているのか不思議だったのだ。
アニキの方がそれを聞いて悔しがる。
「最初から知っていれば、誘拐なんかせずにそっちを狙ったのに。」
だが、過ぎてしまったことはしょうがない。宇宙人達は男の子に質問する。
「俺達はお前を誘拐したんだ。この星はそういった場合、何処に連絡すればいいんだ。」
「んーとねー。落とし物を拾ったらケイサツってところに電話すればいいってこの前パパが言ってた。」
その警察官はイライラしていた。
少年失踪事件についての問い合わせが殺到していたからだ。
「近くで似たような子を見た。」
というモノが大半を占めたが、中には
「あんたらが真面目に探しとらんのではないかね。この税金泥棒。」
といったような警察への抗議の電話が紛れていたからだ。その頻度は事件発生から時間が経つにつれ増えていた。
そこに電話がかかってくる。
「ワレワレハウチュウジンダ。コドモハアズカッタ。カエシテホシケレバ~」
警察官はついカッとなって怒鳴る。
「こっちは今、忙しいんだ。昼間からイタズラ電話とはいい度胸だ。こっちは真面目に仕事してんだよ、お前も真面目に働け。」
身代金の要求のはずが、電話を切られた上に説教までされてしまった。
宇宙人達は考える。
なんて、この星の奴等は野蛮なんだ。身代要求は突っぱねるし、子供そっちのけで財宝探しに躍起になっている。
目の前の子供にもそいつらの一員だと思うと気味が悪くなってきた。
同じことを思ったのだろう、子分が口を開く。
「アニキこんな仕事、命が幾つあっても足りませんよ。大人しく故郷に戻ってちゃんとした所で働きませんか。」
アニキもそれに頷く。
「そうだな。おい坊主、これをやるからお前は全うに育つんだぞ。」
今までの罪滅ぼしか、奇妙な信頼関係か、この星で生きていく少年の将来を憐れんだのかは分からないが、宇宙人は男の子に餞別として、今まで掻っ払ってきたモノのなかで一番価値のあるものを渡す。
やがて、男の子は見つかった。
インタビューアーが質問する。
「このいなくなっていた数日間何処で何をしていたんですか?」
男の子は無邪気に答える。
「んーとねー。宝探し!」
男の子のポケットには宇宙人から貰った、綺麗な宝石が入っていた。
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