枯渇
「本日も世界は平和です。」
徹底した管理社会。アナウンサーの仕事は、今日も世界の平和であると報告するだけのものへと形骸化していた。
だが、今日は違った。
「緊急ニュースが入りました。遂に、世界からアイデアが無くなってしまったようです。」
科学の進歩は全ての社会問題を解決し、人類は《大きなゆりかご》と揶揄される長い停滞期に入ったと言われた。労働から解放された人類は、様々な娯楽を作り始めたが、技術革新も事件や事故も起こらない世界では、徐々に新しいアイデアというものは先細りしていった。ある時、世界政府が発表した「人類のアイデアが枯渇するのは数千、数万年先だ」という発表に、誰もが安心し過去の遺産を貪っていた。しかし、とうとうこの日が来たのだ。
「これから、世界はどうなってしまうのでしょうか。」
アナウンサーが問いかけるその質問に、答えられるほどの想像力を持ったものは、もはや誰もいなかった。
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