少女、妖怪が見えるようになる
妖怪が現れた
第7話 妖怪が現れた 前編
「古代文書研究部?」
「はい、ぜひ作りたいんです」
「そうは言っても……まぁちょっと考えておくよ」
「よろしくお願いします」
やっぱり活動するのは拠点が必要で……その為の部活を新たに作るのが手っ取り早いと私達は行動に移した。
部員2名だけど――部室と顧問の問題が何とかなれば――。
私のプランでは、囲碁部の顧問の武田先生が兼任してくれるとベストだと考えていた。
この先生は常にやる気がないし、囲碁部の同級生の話だと滅多に部活にも出て来ないらしいし……、それに実は妖怪とか民俗学が好きな先生だから。そう言う先生なら事情を話したらもしかしたら色々と協力してくれるかも知れない。
やっぱり味方は少ないより多い方がいいよね。それが先生だったら色々と心強いよ。
さて、動ける事は動いたし後は運を天に任せるしかないね。どうかうまく行きますように。
今は特定の場所がないのでもっぱら屋上で作戦会議。教室とかで話すと変な噂立てられかねないからね。
これ、天気のいい日はいいけど雨の日はどうしよう……。あ、その時は休みでいいか。そんなすぐ体が天狗に変わっちゃう訳でもなし。
そうそう、あれから私は屋上にいる間はずっと指輪をつけている。何かあった時に話を合わせるのに、その時になっていちいち指輪をつけるのも面倒だし。
普段からつけてても問題ないのなら、ずっとつけっぱなしでもいいんだけどね。
ウチの高校、そう言うのはやっぱアレみたいだし……。校則で特に禁止されてる訳じゃないけど。
「で、最初はこの天狗のうちわを探そうと思うんだ」
「それはここから結構近いの?」
私は何となくゆる~くキリトに質問する。指輪の力で古文書の文字が読めても私は結局は専門外。解読は全てキリトにお任せだった。
彼も解読が趣味みたいになってるし、余計な口を挟まれないので気は楽そうだった。
「うーん、どうだろ……。文書に書かれているのは昔の地名だから」
「ちゃんと読めてもあんま意味なかったね……」
まぁ、昔に書かれた本が今の地名に対応している訳がないよね。ずっと名前が変わってなきゃあ別かも知れないけど。
はぁ、文字が読めただけじゃあまだ謎解きの入り口に立てた程度のものなのかな。うーん、まだまだ先は長そうだなぁ。
「だから古い地図とか引っ張りだしてさ……」
「ねぇ……」
キリトはまだ真剣に文書解読の方法について話している。
でも私はここで唐突にある事柄について疑問を感じた。
「何で指輪は二種類あったんだろ?」
「え……?えーっと……」
突然の私の質問にキリトは困惑していた。この問題について今までキリトは何の疑問も抱いていなかったんだろうか?
「白と黒で何か役割違うのかな?だってキリトは白翼出せない訳じゃん」
「何か意図があった事は間違いないと思うけど……。どこかに理由も書いてあるのかも」
キリトはそう言って文書をぱらぱらとめくり始めた。うーん、何だか頼りないなぁ。この調子だと文書の内容が全て理解出来る頃には、すっかり天狗になっちゃってたりしそうだよ。
彼ひとりに解読を任せるのは、もしかしたら余りいい事じゃないのかも……。
「何だか読めても解読は殆ど出来てみたいだね……。どこかに詳しい人がいればいいんだけど。……例えば天狗に聞くとか」
「天狗って見た事ある?」
私の発言にキリトは冷静に突っ込んだ。そうそう、それが私にとっても一番疑問に思っていた事だったんだ。
「そうよそれ!実際翼は出ちゃってる訳だけど天狗って妖怪でしょ!本当にいるの?見た事ある?」
「そ、それは……」
私の質問にやっぱりキリトは答えられないでいた。この反応からして彼も特に霊感体質とかじゃないみたい。
私も今まで身近に見える人なんていなかったから、イマイチそう言う存在は信じ切れないなぁ。
「大体指輪をつけてこの文字が読めるようになったって事は、指輪をすれば妖怪が見えるようになっていても……え?」
「どうし……うわっ!」
私が妖怪の話をしたからだろうか――突然その"子"はそこに現れた。
さっきまで影も形も……人のいる気配もなかったのに。どう考えてもその出現は不自然だった。
その子の容姿は私より背が低くて、幼いような、そうでもないような……。性別も中性的で男の子にも女の子にも見える。
服装も何だか昔っぽい感じで、身体は透けてはないないからおばけではないっぽい?
その子も私達が気付いている事に気付いてニッコリと笑っていた。
これが私だけが見える幻なんかじゃない事は、一緒にいたキリトも驚いている事で分かる。
「い、いつからそこに……」
その子が現れた事に驚いて私はつい声を掛けてしまった。こう言うのって、確か声をかけたらいけないとか、そう言う話もあるんだっけ……?
でも、もう声を掛けてしまったんだから仕方ないよね。
「前から屋上にいたんです……実は」
私の質問にその子は可愛らしい小さな声でそう答えた。あ、答えるって事は話が出来るんだ。この子ってもしかして妖怪?なのかな?
でもずっと前からここにいたって――どうして今まで気付かなかったんだろう。
じゃあ、今この子が急に見えるようになったのって――。
「この指輪の力?」
「それって天狗様のお宝ですよね!すごい!」
私が改めて指につけている指輪を見ていると、その子がこの指輪を見てすごく興奮したように反応した。
その食い込み気味の反応に私はちょっと引いてしまう。
「ゆ、有名……なんだ」
「当たり前ですよー!天狗様のお宝と言えば、妖怪の世界では最高の宝物です!手に出来るなんて誉な事なんですよ!」
さすが天狗様!妖怪内の知名度半端ない!私はこのあまりにも都合のいい展開に現実なのかな?って疑ってしまった。
それで思わずまだ愕然として何も喋れないでいるキリトに話を振ってみた。
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