☆終幕イニシエイション!
「これで。前段は乗り換えた」
「前段」
反射的に繰り返すと、相手はひらひらと左手を振ってみせる。
「これまでは。紛うことなく、前段だろ。肝心なのは、ここからだ」
「……そうか。確かに、そうだけど」
「もう少し喜べよ。ひとまずは今日まで、何事もなく乗り越えられたんだからな」
「何事もなく、……か」
その言葉に、やや含むものを持たせながら、深く息を吐き出し。
やがて、顔の前で手を組みながら、ぽつりと呟いた。
「知っていながら。ただ見ているだけってのは、想像以上にしんどいな」
どこか自嘲気味に笑みを浮かべ、続ける。
「お前と違って。自分は何もしてないから余計に。
――本当に、何も」
「『何もしない』のが、お前の役割だろうが」
頬杖を突いて、静かに指摘する。
「そもそも下手に介入するわけにはいかなかったからな。今回は、特に。
むしろ。この状況で、変らわない未来を目指す方が難しい。
……お前の手前、こう言うのは気がひけるが。きっと、自分にゃできなかった」
ぼそりと最後に付け加えてから、気を取り直すように声を張る。
「安心しろ。否が応でもこれからは動かなきゃならないんだからな。指をくわえて手をこまねいている期間は終わりだ。
お前のおかげで、既定通り、最重要ピースの一つである奴らとも繋がりを持てた。
……そろそろ、あいつを元に戻さないとな」
「そうだな」
顔を上げ、ふと窓の外に目を向ける。
まだ夏の気配の残る戸外には、雲一つない澄んだ青空が広がっていた。
「ようやく。
――役者は、揃った」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます