第二幕:クサビハカイ
☆開幕クサビハカイ!
幸せな現実となるはずだった、夢を見ていた。
体感としてほんの少し前まで、手を伸ばせば届くところにあったはずのそれ。
けれども。
最後の最後で、どうしようもない事実を、遅すぎたことを、突きつけられてしまった。
問題は最初からだった。ただほんの少し立ち回っただけの、付け焼き刃の対処では、駄目だったのだ。
だからせめて、奪い返した。
本来の形からは乖離していたけれど。それでも幸せだった。
今回こそは全てが上手くいったと。
そう、信じていたのに。
「人のものを使って、流れを戻そうとしている奴らがいるね」
ベッドの手すりに手をかけながら、日の落ちた窓の外を眺め、目を細める。
既に自分の元は離れている。それは承知していたし、他ならぬ自分がしたことだった。こうすれば、ある意味で一番、安全だと踏んでいたし。彼らがそれを使って少し遊ぶくらいであれば、特に咎めず見過ごしてやるつもりだった。
それに、これは置いてきてしまったあの子への罪滅ぼしの意味合いもあったのだ。あの子ならきっと、上手く使う時が来るかもしれない。狂おしいほどに欲するものを、手に入れるために。自分と、同じように。
けれども。
こんなところにまで介入してこられるのは、少々、想定外だった。
まして。動いているのはあの子ですらなく。
「所有者でもないくせに」
――そうか。
下手に、人形へ自由を与えたのがいけなかった。
やはり反対を押し切ってでも、手元で管理しておくべきだったのだ。
ならば壊そう。
彼女の忘れ形見をこの手で壊すのは、本意じゃあないが。
形見がいないのならば、それは仕方がない。
再びあれを取り戻せば、時間の制限はまたあの時まで適用されるはずだし。
そうしたら、根本的な部分を叩いて、全てを無視して奪い返してしてしまおう。多少、乱暴な形であったとしても。
きっと、話せば納得してくれるだろう。
そしたら。
今度は、今回のような横やりは気にしなくていい。
あいつが存在しないことになれば、あいつらには何も出来やしないのだから。
今度こそは。
今度こそは、根本から全てを、取り戻す。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます