【第1部】タイドウ編:カーテンコール

BAD END 02:無知の姫君

 ――助けなきゃ。


 目の前に倒れているのは、愛すべき友人。

 力なく地面に崩れ落ちたその姿に、思考がほとんど断絶されたままながら、彼女は咄嗟に、反射的に、そう思った。


 数時間前までは確かに一緒に笑っていた筈なのに、今や能面のように表情は失われ、血の気がない。

 友の顔の前に手をかざそうとして止める。結果を知るのが怖かった。知ってしまえば、今以上にまともな思考が出来ると思えなかった。


 顔を上げれば、そこには累々と倒れ伏した人の姿がある。その面々には全て見覚えがあった。

 敵も味方もない混ぜになって、あるいは一人で、あるいは折り重なるようにして、まるで屍のようにぴくりとも動かない。


 実際のところどうか、という点については。

 一切合切、彼女は考えたくなかった。


 正気でいるのは、彼女の他に一人だけ。恐怖を押し込めて目の前の人物を見上げれば、彼女以上に虚ろな瞳でそれは見返してくる。

 いや。たまたまその方角を向いていただけで、彼女のことなど見てはいないのかもしれない。その瞳には、何も映ってはいないようだった。

 彼女はぎりりと拳を握る。


 意を決して、というよりは半分以上無意識のうちに、彼女は手を広げ、口を開く。

 動きに気づいた誰かが制止する「止めろ」という声を振り切り、彼女は青い光の中で不敵に笑った。


 晴れ渡った星空の下、くっと笑みの形に変えた唇で彼女は振り返る。




 ――待ってて。私が絶対、助けるから。

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