第33話 戦隊ショーを見にいこう②
そんなわけで翌日、よく晴れた日曜日。
俺と妹は繁華街にある球体のオブジェ、通称『パル
パル玉とはパルコ前にある常に回転している球体のオブジェのことで、目的地であるツルヤも近いことから、ここを春風と三角の待ち合わせの場所にしているのだ。
日曜日だからか街は大勢の人で賑わっている。
こうしてガヤガヤしているのを目にすると、震災から立ち直ったようで本当によかったと思えるな。
そんな感じで俺がしみじみとしていると、
「ヒャッハーッ! 回れ回れ~ッ! 世界は妹を中心に回っているのだ~~~ッ!!!」
家を出る前からテンションの高かった妹が、目をキラキラさせてパル玉を回しながら叫んだ。
今日の妹はホットパンツに派手なパーカーにニットと、今どきの若者っぽい恰好をしている。
……ちょっと太ももとか露出しすぎじゃないか? 兄は心配だぞ。
いつもに増してやかましい妹に、
「妹ちゃ~ん、あんまりやりすぎると目が回っちゃうば~い」
やってきた春風がふんわりとした声で言った。
妹とは違って清楚な白いワンピースを着ている。
……でかいせいか胸の谷間が顔を出しており、周りからの視線を感じる。
俺も俺でおっぱいに目がいっていると、
「妹ちゃんお待たせ! きゃー! 今日の恰好もロリ可愛いわね! うんうん、さすがアタシの師匠を名乗るだけのことはあるわ! 今日はよろしくね!」
歓声をあげて登場したのは、春風と違ってボーリングがしやすそうな貧相な身体を持つ、三角・ドアフォード・リリィ。
……ふむ、お水系の派手な恰好をしているが、どこか品のよさを感じさせられるな。
金髪ハーフの美貌も相まり、春風とは違った意味で注目されている。
……だけどなぁ、
「な、なに人の体をじろじろ見てんのよ気持ち悪い。……べ、別にあなたが来るから支度に時間がかかったとかじゃないんだからね!」
「いや知らんがな。俺が気にしてるのはそんなことじゃなくて、……戦隊ショーを見にくるのに胸パッドはないんじゃないか?」
指摘すると三角の顔がみるみるうちに真っ赤となり、
「べ、別にいいじゃない! そもそも何でパッドをしてるって分かるのよ⁉ ていうかみんなの前で言うな馬鹿ぁ!」
言葉が終わる同時にバチンとビンタされてしまった。
はい、ナイスツンデレいただきましたー。
忘れている人もいるかもしれないが、俺は学園一のおっぱいソムリエ。
おっぱいが偽物かどうかなんて一目で分かってしまう。
なんでも鑑定団で言えば、『いい仕事してますね~』のポジション。
視聴者を裏切るような贋作を見過ごすわけにはいかないのだ。
するとここで、本物の中の本物である春風が三角を指さし、
「あ~、三角さんば~い。なんでここにいると~?」
「あら、夏野さん。こんにちわ。ここにいるのは戦隊ショーを見に行くためよ」
「そうなんだ~。何気にこうして話すのは初めてだね~。今日はよろしく~」
「こちらこそよろしく。話したことは無いけれど、あなたのことはよく知っているわ」
「えっ? 何で知っとると?」
首を傾げる春風に対し、三角はブツブツと小声で、
「……おっきいから」
「えっ? おっきいからってどういう意味ね?」
「お、……おっぱいがおっきいからじゃなくて…………えっと…………そ、そう。ポッキーからって言ったのよ。ほら、春風さんってよく甘いものを食べてるじゃない? たまたま私がポッキーを食べているところをよく見てたって意味で、別にあなたの胸が羨ましいとか思ってたわけじゃないんだから気にしないで!」
「な~んだ。そうだったとね~。それじゃあ今度ポッキー食べるとき、三角さんにも分けてあげるね♪」
「あ、ありがとう……」
……苦しすぎる言い訳だが、相手が天然の春風でよかったな。
照山さん以上に戦力差がありすぎるおっぱいにプレッシャーを感じているのか、三角がびくびくしていると、
「よーし! それじゃみんな揃ったことだし、いざ決戦の地へ向かうぞい!」
ブーンと鳥のように両手を広げながら歩く妹を追いかけ、俺たちはツルヤへと向かった。
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