第22話 ぞい散歩②
「――三角のドアホッ⁉」
「ドアホじゃないし! 私の名前は三角・ドアフォード・リリィよ!!!」
せっかくの休日だというのに、妹は胸の小さな金髪ツインテールこと
……あー、マジでテンションが落ちる。落ちるのはカイジに出てくる石田さんかマリオだけにしといてほしいんだぞい。
……でも、なんでこんなところにミスミンがいるんだろう?
言っちゃ悪いけど、アニメイトとはその名の通りアニメや二次創作が好きな人が行くところなんだぞい。
だから、一般人や興味の無さそうなお嬢様にはお呼びじゃないはず。
おりょりょ? 気付けば、ミスミンがペンや原稿用紙などの画材らしきものを持っているぞい。
ついでに周りの注目がこちらに集まっているのに今更ながら気がついたんだぞい。
まあ思いっきり叫んだから仕方ないけど。
周りの目にミスミンも気が付いたのか、ハッとした様子で持っていた画材を店員さんに渡すと、
「ちょっとこっちに来なさい!」
「ぞい⁉ なにをするんだぞいーーーーーーっ⁉」
手を引っ張られる形で、妹は店の外に連れ出されてしまった。
「――離せ離せ離せェ! 妹を誘拐してどうするつもりだァ! もしや身代金を手に入れる気か、こんにゃろう!」
「あのままあそこにいればお店の迷惑になるから、ちょっと外に出ただけよ! バタバタしないで大人しくしなさい! あと、この間の学校の件といい色々と勘違いしすぎでしょあなた!」
「失礼な! 妹の実力は段違いなんだぞい!」
「それが勘違いって言うのよ! ほんっとあなたって人は……」
プンプンしていたミスミンだったが、向かい側にあるハンバーガーショップに目をやると、チラチラと興味津々の様子で眺めるようになった。これはもしかして……。
「……ミスミン、もしかしてハンバーガーが食べたいのか?」
「はあ⁉ 何を言ってるの⁉ こ、この私がハンバーガーなんてカロリーが高くて体に悪いもの食べるわけないじゃない! 馬鹿じゃないの⁉ いや馬鹿だったわねあなた! あと私が先輩なんだからミスミンって呼ばないで!」
その言葉とは裏腹に、グーとミスミンのお腹が鳴った。
聞いた道行く人がこちらに振り向き、さすがの妹もこれにはノータッチで黙ってしまう。
かなり恥ずかしかったのか、ミスミンの顔がみるみるうちに真っ赤になっていく。
「べ、別にお腹がすいてるわけじゃないんだからね! ああいうハンバーガーショップに一度も行ったことないから少し気になっただけで、お腹が鳴ったのもいつもだったらおやつを食べている時間だから仕方がないの! ……あ、あなたがどうしても行きたいっていうのなら、付いていってあげないこともないけど?」
すごいぞい。言葉にツンデレが溢れかえっているぞい。金髪ツインテールのツンデレお嬢様。
ツンデレ博物館があるのなら、ぜひ飾っておきたい人だ。
うーん、でも悪い人じゃなさそうだし、連れていってあげたいのはやまやまなんだけどさ……。
お気に入りのがま口財布を開く。
「……行きたいけど、お金がないんだぞい……」
216円しかない。……ヒカリンに借金もあるし、今月は大ピンチなんだぞい。
パパとママンは北極に調査目的でお仕事に行っているからお小遣いがもらえないし、家のお金を任されている兄やんにはすでに1000円の前借りをしている。さすがにこれ以上もらうと、兄やんお得意の垂直落下式DDTをもらう羽目になるんだぞい。……兄やんのプロレス技はマジで痛いからな。
もはや妹にはエスポワールに乗るか身体を売るしか道はないんだぞい。……まあどっちもしないけど、もしそんな道に進んだとしたら。それこそ未知の領域に落ちていきそうだ。道だけに。
あぁ……この世にはきっと神様なんてどこにもいないんだぞい……。
非情なる現実に肩を落としてショボくれていると、ミスミンがフンと鼻を短く鳴らしてから長い髪をかき分けた。
「仕方ないわね。ここで会ったのも何かの縁だし、今日のところは私が奢ってあげるわよ」
神がいたぞい! やったあ! 神待ちJC気分なんだぞい! 相手はJKだけど!
これが俗にいう、捨てる神あれば拾う神ありってやつなんだぞい!
妹は深く頭を下げる。
「ありがとうだぞい! 神様、仏さま、ミスミン様! それじゃゴチになりやす!」
「まったく、調子がいい子ね。……神様というならもっとちゃんと感謝しなさいよ……」
こうして、妹はミスミンの手を引く形でハンバーガーショップに向かったんだぞい。
――――――――――――――――――――――――――――――
あとがき
③へと続きます。
遅くて④くらいで終わる予定です。
あと、挿絵を描いてくれる人募集中です。
興味のある人はぜひ連絡をください!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます