香織

「でも、あたし、そんないっくんのこと、好きだよ」


 あたしがそう言うと、いっくんはなぜか、顔を背けちゃった。あたし、変なこと言ったかな?


「す、好き、って……。お、俺は、その……」


 何か、うろたえてるし、顔も赤くなってない?なんで……?

 あれ?あたし、好きって言っちゃった……?そういうつもりじゃなかったけど、そう取られちゃった……?うぅ、どうしよう……?あたしの気持ち、知られちゃった……?


「あ、あのね、いっくん。その、好き、って言うのは、その、変な意味とかじゃなくて、その……」


「え?あ、う、うん……」


 思わず否定しちゃったけど、うん、これ、嘘じゃない、よね?だって、変な妄想してるいっくん、すごい楽しそうだし、そう言ういっくんのこと、その、好き、だし……。

 で、でも、これは、その、恋、とは、その、違う……のかな?

 あたしはいっくんのことが好きで、変な妄想してるいっくんも好きで…………あれ?同じ……?だったら、さっきのは嘘になる……?

 でも、あたしの気持ち、知られちゃったら、今までみたいにはきっとできないし……。だから、これで、いいんだよ……。この気持ちはずっと封印すれば……。

 あたしは、そう決めて、いっくんの方を見た。いっくんもあたしの方を見ていて、その表情は今まで見たことがないくらい真剣だった。

 いっくんはあたしの肩を掴んで、真剣な表情のまま、あたしに言った言葉は信じられないものだった。

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