フォローイング・フォロワー・フィクション(お題:大好きなフォロワー)

「フォロワーさん?」

「そう。大好きなフォロワーさん」



「ぼくねえ、好きっていうか、うーん、まあ、好きでいいか。好きなフォロワーさんいるんだよ」

「好み、情愛、お気に入り、その他、どれ?」

「その他。強いて言うなら”任意”だね。サムシングってやつだ」

「殆ど情報ゼロじゃない。分かった、続けて」

「うん。なんていうのかな。夢に出てくるとさ、やっぱ気になるみたいなとこあるよね」

「どんな夢見たの?」

「内緒だよ。幾らきみ相手でもさすがに正気を疑われるからね」

「そうなの?」

「そう」

「…………」

「…………」

「……」

「えっ、おわり?」

「終わりだよ。詳細を口にしたら仮想人格に紐づけられた中の人の人生が終わる……危険性がある」

「なんか問題ない部分だけでも教えてよ」

「……カラスになって飛んで行った」

「うん?」

「羽が生えてさ。とんでっちゃったんだよ。なんか夢に出てくると動物との親和性が高いみたいでさ、前はネコに囲まれて出てきたし、そのあとは工事現場でウサギと出てきたし、今度のはペンギンと一緒だったかな。あ、全員別の人ね。あと、本人には内緒だよ。気を悪くするといけないからね」

「本人が誰かをまず知らないんだけどどうかな」

「さもありなん。知らなくていいよ。知らないほうが良い」

「ええ。いいのそれ」

「あっ、フォロワーの多い人でね、ピンクスーツのお兄さんとショッピングモール歩く夢見たことあるよ。デリバリーポストピザ機械があってね。ピザ美味しかったよ」

「デリバリーポストピザ機械って何」

「赤い郵便ポストを開けると出来たてのピザがボックスで入っているんだ。床は青く光ってたし、お土産屋とかあったよ。まあ何かいつもの夢だ。ああでも、名古屋駅とはつながってなかったよ」

「名古屋駅」

「知らない? JR乗るでしょ?」

「駅そのものを知っていることと理解できることには隔たりがあるよ。まあいいや、続けて」

「でね、そのピンクの人がね、あれ、何してたんだったかな。なんだっけ」

「そのピンクスーツの人ってもしかして、スーツじゃないところがピンクだったりしない?」

「ああそうそう。あれ? ああそうだね。ピンクスーツって言ったね。これじゃスーツがピンクみたいだね。ごめんごめん」

「いいけど」

「スーツか装束着てるけど、下着はベリー柄らしいじゃんね」

「なんで知ってるの。大好きじゃん」

「インタビューで聞いたんだよ。こう、公式でイベントやっててさ。突撃インタビュー!」

「ろくでもないね」

「ええと、インタビューって殴らない方のやつね」

「うん? えっあっ、ああ……」

「殴る蹴るして下着の柄聞くとかほんとにろくでもない人みたいじゃん。やめてよね……」


(テープはここで終わっている)

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