第四話 戦争である!
メガ・ヴィランに襲われ混乱を極めたモンタギュー邸からすぐには追手がかからなかった。
僕達六人はモンタギュー邸にやや近い通りで足を止め、話し合いをしていた。
ロミオがレイナに聞き返す。
「俺がカオステラー?」
「ええ。気配は消えてるけど間違いないわ。ロミオ、何かこう、想区に対して破壊衝動のようなものはないかしら?」
「…ある」
僕はロミオの方を見た。
「ロミオ」
ロミオは静かに話しだす。
「町の平和は願っている。でもそれとは全然別の所で、運命やら世界やらを壊してでもジュリエットを幸せにしたいって気持ちがあるんだ」
「わっ、私もだ! ロミオと二人で死ぬなんて、そんな運命絶対に嫌だ! 平和な町でロミオと幸せに暮らしたい! ロミオを調律するのか?」
レイナが冷静な様子でジュリエットに返した。
「出来るか分からないわ。何の気配もしていない今の状況でわね」
「そうか」
ここで知恵袋のシェインが加わる。
「実際困りましたね。このままでは調律が進みませんよ?」
タオが愉快そうな笑みを浮かべて返した。
「町の連中に喧嘩させりゃあ、カオステラーが出るんじゃねぇか? あっはっは!」
「本気ですかタオ兄? その考えはナンセンスです」
僕はレイナに尋ねた。
「カオステラーは争いのせい?」
「そうね。後はジュリエットに危機が及ぶ時とかかしら?」
「うん。なら、僕達がこの町を完全に平和にしてしまえば、この世代のロミオとジュリエットはカオステラーにならずに最後まで幸せのまま暮らせるんじゃないかな?」
これにはシェインも驚いた様子で。
「新入りさん!?」
タオも驚いたみたいだけど。
「坊主!? まあ、心情は分かるぜ。俺も乗った!」
レイナは決断を下した。
「仕方ないわね。ロミオ、あなたの意志の強さは半端じゃないわ。心を平静に保てばカオステラーを抑え込めるかも知れない。町を平和にするまで監視させてもらうわよ」
「ああ、やってみる」
ジュリエットが嬉しそうに意気込んだ。
「すごいな! 何だかやる気が溢れて来たぞ私!」
そこへモンタギュー家の伝令役が何やら言い広めているのが聞こえてきた。
「大変だ―! モンタギュー卿が演説を始めるぞー! 聞ける奴は聞きに来いってよー!」
ロミオが反応する。
「親父が? 行こう!」
シェインが続いた。
「ラジャーです。いいですかロミオさん、平常心ですよ?」
「分かったよ」
ジュリエットが心配げにシェインへ言う。
「大丈夫かな? ロミオああ見えて短気な所あるから」
「ロミオさん、元の運命では争いの途中で逆上して人を殺してしまうのでしたね」
「普段は抑えているけど、感じやすく激しい部分があるんだ、あいつには」
「好意的な表現ですね。テンション急上昇です」
「茶化すなよ!」
僕達六人が現場へ着くと、すぐに人だかりの中でモンタギュー卿が演説を始めた。
「外部を取り巻く二大勢力はこの町にも入り込み、それがモンタギュー家とキャピュレット家との抗争を生む土壌となっているのは既に諸君の知る所である。私は町の命運を憂いモンタギュー勢力による安定を進めてきた。言論と堂々たる決闘においてだ。しかしキャピュレット側は卑劣にも女をよこして我が陣営を毒し、我々の命を奪うべく凶悪な怪物を仕掛けてきたのだ。それによって死人も出た。これは戦争である! 彼らが命のやり取りを願うならば我らはそれに応じねばならぬ! 怖れてはならぬ!
「おおー!」「モンタギュー・ベローナ…」「モンタギュー・ベローナ!」「モンタギュー・ベローナ!」
聴衆は元々モンタギュー寄りなのか中立なのか分からないけど、この場ではモンタギューあるべしの空気が渦巻いた。
ロミオが憤りを見せる。
「あのクソ親父…」
僕はロミオに声をかけた。
「ダメだロミオ、落ち着いて」
「今この時をもって、我らモンタギュー家はキャピュレット家と全面戦争へ突入する事を宣言する!」
「その都合勝手な扇動を、止めやがれー!!」
「グガアアアアアア!」
ロミオの怒りへ応えるように、全身を揺らす地響きと共に巨大な怪物が現れた。
「メガドラゴン!?」
ジュリエットが必死に呼び掛ける。
「ロミオ! ロミオ!」
ロミオは我に返ったようにはっとした。
「あ…」
メガドラゴンを主力とするヴィラン達は聴衆、モンタギュー家の区別なく人々を襲い始めた。
「きゃああああああ!」「うわああああああ!」
その時モンタギュー卿の悲鳴が響き渡る。
「ぐわああ!」
モンタギュー家の人々が口ぐちに叫んだ。
「モンタギュー卿!?」「モンタギュー卿がやられた! キャピュレットの怪物に殺された!」「みんな逃げろー!」
僕達は人々やヴィランをくぐり抜け、急いでモンタギュー卿の元へ向かった。
「モンタギュー卿!」
僕は声をかけるけど、シェインが首を振った。
「ダメです。もう…」
ジュリエットは信じられないという様子で悲しげに問いただす。
「そんな…、ロミオ! いくらなんだって自分の父親を殺すだなんて!」
「ち、違う…。これは…俺じゃない…。俺じゃ…」
シェインが動揺をもらした。
「ロミオさんじゃない…?」
タオが態勢を立て直すため懸命に
「話は後だ! この場の落とし前つけっぞ! タオ・ファミリー出陣だ!」
メガドラゴンの爪に裂かれ、吐き出す炎に身を焦がされながらも、僕達はヴィラン勢力を倒しきった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます