第240話 片思いのバーベキュー②
そんなバーベキューに特別ゲストが加わった。
「オーマイガ―!! なんということでしょーう! 日本の男性はハンサムが多いでーすね」
到着するなり御子柴さんと志岐くんの間を陣取ったペリーだ。
朝、車で送ってきた時にバーベキューに参加しないかと言われ大喜びで仲間入りした。
ついでに空いた時間に買い出しに行って、得意料理も持参してくれているらしい。
「御子柴、あなた私の元彼に似ていまーすねー。志岐、あなたは元元彼にそっくりでーす」
ほんとか?
日本を代表するカリスマモデルたちだぞ。
その辺にゴロゴロ転がっているようなじゃがいも男子ではない。
ペリーは筋肉質な腕で御子柴さんと志岐くんと腕を組んでご満悦だった。
ちなみにお酒は飲んでいない。
帰りに運転しなければならないし、ビーチでのお酒は禁止らしい。
スタッフも打ち上げといってもジュースで乾杯している。
だがペリーのテンションはジンをあおっている時と同じぐらいハイだった。
まあ……ゆうべの沈んでいたペリーが元気になったのなら良かった。
「誰? このおばさん。なんかほら、ホテルに飾ってあった絵に似てるよな」
相変わらず口の悪い大河原さんが余計なことを言っている。
「ああ。そういえば、ホテルの正面玄関に飾ってあったよね」
どうやらこのホテルにも女神ペレの肖像画が飾ってあるらしい。
「確かすぐ怒って噴火をおこす気性の粗い女神とか言ってたよな」
「シャラーップ!! あなた、多少ハンサムでーすが、感じが悪いでーすねー!」
「お? なんだ? やっぱ性格も似てるのか? こええ」
「あなた、私を裏切った婚約者そっくりでーすねー。ボルケーノ!!」
「なんだよ、やるのか?」
「ボルケーノ! ボルケーノ!!」
行って止めるべきかと思ったが、放っておこう。
私の手には負えない。
「イザベルはバーベキューでも仮面をはずさないの?」
ふいに後ろから声をかけられて振り向いた。
「廉くん……」
廉くんが遠慮がちに後ろに立っていた。
「イザベルだよね? ポップギャルとの合同企画で、一緒に遊園地で撮影した……」
そういえば、イザベルとして廉くんに会ったのはそれが最後だった。
私はどう答えていいか迷って、無言のまま仮面をおさえた。
「あのさ、イザベルに会ったら聞いてみたかったんだ。遊園地でりこぴょんが意地悪をしたでしょ? りこぴょんは仲直りしたって言ってたけど、本当にちゃんと謝ったのかなって」
廉くんは
そういえば、そんなこともあった。
確かそれを知った廉くんがりこぴょんを信じられなくなって別れたんだっけ。
復縁したはずなのに、まだ気にしてたんだ。
できればメンズボックスの面々としゃべらずにバーベキューを終えたかったけど……。
「り、りこぴょんはちゃんと謝ってくれました。信じてあげてください」
それだけは言ってあげないと、二人の関係にひびが入ると思った。
「ほんとに? じゃあ、イザベルと仲良くなったっていうのは本当なんだね?」
いや、大して仲良くなったわけじゃないけど……。
まあ、そこはわざわざ言うことでもないよね。
「はい。りこぴょんはちょっと口が悪くてバカだけど、とっても正直でいい子です」
しまった。本音で答えすぎた?
全然褒め言葉になってなかった?
「ほんとに? 良かったあ。りこぴょんがまた嘘をついていたら、もう信じられないところだった。そうなんだ。口が悪くてバカだけど、ほんとにいい子なんだよね」
よかった。これで正解だったみたいだ。
口が悪くてバカは許容できるらしい。
廉くんにとっては、正直でいい子ということが一番大事なんだ。
廉くんもそういう人だものね。
「おい! なんだよ、一人でぬけがけか? りこぴょん一筋とか言いながら、ちゃっかり話しかけに来てるんだもんな」
ほっと安心する廉くんの後ろから、大河原さんがぬっと顔を出した。
廉くんが私に話しかけているのを見て、ペリーとの口喧嘩を中断してこちらにやってきたらしい。
「きゃっっ!!」
佳澄はさっきのビーチの海パン姿がトラウマになったのか、大河原さんが近付いただけで悲鳴を上げる。
「やっぱイザベルだろ? 俺の蘭子だよな?」
だから、いつ大河原さんのものになったんですか!
面倒な人が来てしまった。
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