第160話 お宝レアショット?
「麗華様っ! この1年男子がこんなものを撮っていました!」
口を尖らせて立っているのは、テレビで見たことのある男の子だった。
確か子役時代からテレビで活躍していた……。
そうだ。ク○ヨンしんちゃんの実写版がはまり役だった野原田シンくんだ。
シンちゃんシンちゃんと可愛がられていたが、そういえば最近はあまりテレビで見ない。
子役の子にありがちで背が低い。
大きくなることを否定される立場にあるせいか、小柄になる人が多いと聞く。
彼は私より10センチほど低く見えるので160センチぐらいだろうか?
顔は女の子でも通りそうなほど可愛い。
坊主頭のしんちゃん役から、ずいぶん路線変更したようだ。
髪をおかっぱぐらいに伸ばして、上目使いでほっぺをぷっと膨らませている。
いま
うむ。しんちゃんが可愛い系男子に成長するとは思わなかったが、結構似合っている。
でも……ということはセレブ枠ではなく芸能枠だと思うのだが……。
まさか亮子ちゃんや亜美ちゃんのきわどい写真を撮っていたのか?
それとも同じ男子をいいことに、御子柴さんや志岐くんの着替えシーンを……?
もしかして可愛いと思ったら、そっちの方向に走ってしまったのか……。
私はあまりに気になって、麗華様の後ろにこっそりついて行って写真を覗き込んだ。気付くと柳くんも同じように写真を覗き込んでいた。
でも後ろからだと画像が小さくてよく見えない。
体操服姿のいろんな角度の写真が何枚かあるようだ。
みんなの視線が麗華様の持つ携帯に注がれていた。
バスケの試合を終えた御子柴さんと志岐くんも、何の騒ぎかとこちらを見ている。
「なに? これは?」
麗華様は画像を確認すると、シンちゃんを
「気になる生徒を隠し撮りしてただけだよ。別にいいでしょ? 大人気スターを隠し撮りしてたわけじゃないんだからさ」
シンちゃんは、ほっぺを膨らませたまま弁解した。
その声を聞いて思い出した。
顔はあまりしんちゃんぽくないけど声がアニメの声とそっくりなんだった。
その弁解を聞いて麗華様は、何故か、ばっと振り向いて私を見た。
「え?」
「……」
麗華様は手に持った携帯の画像と私を見比べている。
え?
どういうこと?
柳くんが麗華様に顔を近づけて、画像を覗き込んだ。
「え? 師匠を撮ってたん?」
ええっ?
私?
「あんた、師匠のこと好きなん?」
柳くんがぶっちゃけ過ぎる言葉を投げかけた。
麗華様も黙って質問の答えを待っている。
体育館中がシーンと静まって彼の答えを待っていた。
シンちゃんは可愛く困った顔を作って呟いた。
「好きっていうか……憧れ? 興味があるんだ」
えええ――――!!
な、な、な、なんで?
私がなんでシンちゃんに憧れられるの?
しんちゃんと言えば巨乳の美人お姉さんが好きだったはずで……、いや、待て、それはク○ヨンしんちゃんの話で……冷静になれ、私。
「変わった趣味ね。どこがいいの?」
麗華様、見事な代弁ありがとうございます。
まさに私が聞きたかったことでございます。
「どこって言われても……。たとえばどうやってその容姿で芸能1組まで成り上がったのかとかあ。どうやって大物芸能人との交友関係を広げたのかとかあ……」
シンちゃんはすべて知ってるぞという顔で、私を意味深に見つめた。
「交友関係? やっぱり強力なコネがあるのね?」
麗華様は探るようにもう1度私に視線を向けた。
な、なにか知ってるんだろうか?
御子柴さんのマネージャーは、男装しているとはいえ、ほぼこのままの姿だ。
学園の人がいる場所での仕事は避けてたけれど、知ってる人がいても不思議はない。どこかで魔男斗を見られた?
それとも、まさかゴスロリイザベルを知ってる?
でも身近な人でも気付かないほどの変装なのにどうして?
次々に疑問が浮かぶが、よく分からない。
そして、シンちゃんは私の写真なんか撮って、一体どうするつもりだったのか……。
「削除しなきゃダメならするけど、彼女なら別に良くない?」
シンちゃんは、とても憧れている人間に対する言葉とも思えない発言をした。
そして麗華様もまた、どうでもいいように携帯を返した。
「そうね。彼女の写真に莫大なお金が動くとも思えないし、好きにすればいいわ」
ええ――っ!
皆さん、ひどい扱いです。
私の肖像権はどうなったのですか?
しかし、誰もその判断に異議を唱える者はいなかった。
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