第139話 真音 有識者会議
「では、今回の重大な議案についてみんなの意見が聞きたい。まずは志岐から言ってみろ」
「はい。正直、怖いと言われて逃げるように立ち去られたのはショックでした。以前にも一度怖がらせたことがあって、あの時は泣かれたりもしたのでダメージが大きかったんですけど、今回の、けだものを見るような最後のチラ見は更にダメージが大きかったです。……実はまだ立ち直れていません」
「うむ。次は御子柴」
「俺なんか出会った最初から、いつだって味方だったはずなのに、傷付ける人だとか敵とか言われるのは理不尽だ! いくら役に入り込んでるって言っても絶対納得いかない!」
「うむ。俺だってついこの間までいろいろ相談に乗ってやってたっていうのに、突然電話は出ないわ、卒業しても挨拶もないわ、挙句の果てに大勢のスタッフの前で思いっきり振りやがって。はらわた煮えくり返っているぞ」
「夕日出さん、スタッフの前で振られたんですか?」
御子柴がちょっと嬉しそうな顔になる。
「お前だって同じようなもんだろうが!」
「……」
オオカミとサムライは無言で睨み合った。
「いやあ、さすが師匠やな。これだけの凄いメンバーで秘密の集会を開かせるやなんて。やっぱただもん違うわ。もう一回お笑いコンビ組んでくれって頼んでみよ。僕は諦めへんよ」
「……」
全員の目が脳天気な声の柳に注がれる。
「柳さん、今日はお笑いイベントの仕事は?」
「お前、なんでこんなトコにいるんだよ」
「誰だ? こいつを呼んだのは?」
「なんでやのん。みんな仲間はずれにせんといてよ。この頃みんな仕事が忙しいんか学校にも来いひんし、淋しいやんか。僕も仲間に入れてや」
柳は泣きそうな顔で三人の顔を見回した。
「そもそも夕日出さんもなんでここにいるんですか? ここはメンズボックスの撮影スタジオですよ?」
今日は御子柴と志岐が久しぶりに一緒の撮影になっていた。
「す、すみません。俺が今日御子柴さんと仕事で会うって言ったから……」
志岐は御子柴に申し訳なさそうに頭を下げた。
「だからってなんで勝手に入ってんですか? 部外者立ち入り禁止のはずですよ」
「高校野球の人気者を甘く見んなよ。どの業界にも野球好きのスタッフの一人や二人はいるもんだ。あとは御子柴の友達だって言えばオールスルーだ」
「夕日出さんと友達になった覚えはないですけど」
「まあ待て。今はお前といがみ合ってる暇はない。ここは協力し合って問題を解決すべき時だろう」
「……確かに」
四人は深刻な表情で腕を組んでしばし考え込んだ。
「ぶっちゃけ言うと、大河原のヤツ気に入らねえな」
「分かります! あの勝ち誇った顔がむかつく!」
オオカミとサムライは突然意気投合した。
「まるで真音を自分のもんみたいに言いやがって」
「まねちゃんに懐かれて、いい気になってますよね」
「だいたい真音も真音だ! あんなヤツを潤んだ目で見上げやがって」
「そうですよ! あんな目で俺だって見られたことないのに!」
犬猿の仲だった二人はすっかり共感し合っていた。
「おい、志岐! お前も黙ってないでなんとか言ってみろ!」
「お前は今回の事態をどう思ってんだよ!」
「は、はあ。ショックはショックなんですけど……。あんな雰囲気のまねちゃんに見上げられると……ちょっとどうしていいか分からなくて……。なんか……可愛い……ですよね……」
「……」
「……」
夕日出と御子柴は再び無言でしばし考え込んだ。
「うむ。認めたくはないが、ちょっと可愛かったな」
「あんな感じでちょっと懐かれてみたい気はしますね」
「……」
「要するにみんな大河原さんが羨ましいってことやん?」
最後に柳が核心をついて、会議は何の解決策も見つからないまま散会となった。
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