第111話 メンズボックス × ポップギャル 合同企画①
「え?」
メンズボックスの撮影は今日も四天王がそろっていた。
今日は人数が多くてごった返していたが、すでに別格の四人組となった御子柴さん達はテーブルを一つ陣取っていた。
「だから、ポップギャルとの合同企画で来週撮影があるらしいよ。スケジュール表に書いてあっただろ?」
御子柴さんが衣装を直しながらとんでもないことを言った。
「そ、そうでしたっけ?」
メンズボックス撮影としか見てなかった。
「この2誌は同じ出版社だからさ、半年に一回ぐらいあるんだよ」
「そ、そうなんですね」
「なんだ? ポップギャルと一緒にやって何か問題あるのか?」
大河原さんが、読んでいたきわどい雑誌から顔を上げて尋ねた。
「い、いえ……。別に……」
大河原さんはまさか私がポップギャルのモデルとは知らない。
「4対4のデート特集だよ。僕はりこぴょんの相手役に決まってるんだ。楽しみだなあ。りこぴょん可愛いだろうなあ」
そうだった。廉くんとりこぴょんがそろっているのだ。
この日は残念だけど、マネージャーの仕事は出来ない。
できれば志岐くんのデートシーンなんてお宝レア撮影は間近で見たかったけど、仕方あるまい。
「ポップギャルに可愛い子いるかなあ。今どんなモデルがいるんだ?」
大河原さんは結構楽しみにしているらしい。
「りこぴょんの話では、人気モデルのあずりぃとさちょぱと、新人の亜美ちゃんらしいよ」
どんなあだ名だ。
でも、志岐くんの相手役は誰だろう?
まさか新人同士、亜美ちゃん?
腹黒亜美ちゃん相手で、志岐くんは大丈夫だろうか?
見守りに行きたいが、さすがにそれは無理だろう。
「俺は出来たらポップギャルよりエックスティーンの方が好みの子多いんだけどな」
大河原さんって意外に、古風な女の子が好きらしい。
前回のボーイッシュ彼女でこりごりしたのか。
「なあ、志岐はどんな女がタイプなんだよ」
大河原さんは静かに読書している志岐くんにナイスな質問をした。
「え? タイプですか? ど、どうなのかなあ……」
志岐くんは戸惑ったような顔で答える。
誤魔化されたか……。
「俺達の好みで相手選んじゃダメなのかな」
「合コンじゃないんだから、ダメですよ」
御子柴さんが呆れたように笑った。
大河原さんと廉くんが撮影で離れた時に、御子柴さんはその日はマネージャーを休んでいいよと言ってくれた。
◆
それなのに……。
これは一体どういうことなのか……。
私はなぜか
「あ、あの……なんで……」
白塗りメイクをされながら、私は石田さんに尋ねた。
「ああ。マダム・ロココがその企画に是非自分のブランドも参加させてくれって言ってきてね、さちょぱと変更することになったのよ」
うむむ。ねじ込みが凄いぞ、マダム・ロココ。
なんだかさちょぱに恨まれてそうだ。
「今日はデートということで衣装もちょっと可愛いのよ。ほら見て」
それは白いフリフリのブラウスに、あちこちリボンの飾りがついた黒のワンピースだった。
「こ、これを私が……?」
どうしよう……。
こんな姿で御子柴さんや志岐くんに会いたくない。
……てか、私だと絶対知られたくない。
「あの……石田さん。いつもよりメイク濃いめでお願いします。もう人間に見えないぐらいにしてもらってもいいです」
「あは。珍しいわね。いつもは薄くしてくれって言うくせに」
「なんならカラコンは虹色にでもして下さい」
「持ってきてないわよ、そんなの」
石田さんは笑いながら、でもいつもより念入りに目の縁を隈取った。
髪はショートボブの黒髪カツラに大きな黒リボンをつけた。
靴は5センチの厚底の編みこみブーツだ。
うむ。これは自分でも分からないぐらいの変身だ。
鏡の前で私は一人満足気に肯いた。
こうなったらイザベルになりきるしかない!
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