第52話 芸能人の恋愛
最近は連日、御子柴さんのマネージャーだった。
学校にはもう一週間行っていない。
昨日は放課後、職員室に寄って私と御子柴さんの分の宿題とレポートを受け取った。芸能組はこれを提出すれば一応必要な単位をもらえるらしい。
今日はスタジオでの撮影の合間に二人で宿題とレポートを片付けていた。
「
「え? どこですか?」
「そこはこの公式を入れないとダメだよ」
御子柴さんはサラサラと公式を私のノートに書き出してくれた。
「み、御子柴さんって頭もいいんですね」
天はこの人に幾つの才能を与えたんだろう。
「数学はゲームみたいじゃん。推理を働かせて謎を解明するのは面白い」
「まったく共感出来ませんが……」
「御子柴さん。お勉強ですか?」
途中で共演の女優さんが覗いてきた。
初めて会った時から思ったが、この人は間違いなく御子柴さんのことを好きだ。
そしてめちゃくちゃ可愛い。
「今度私にも勉強教えて下さい」
さらにとても礼儀正しい。
「教えるほどじゃないよ」
なのに御子柴さんはそっけない。
「数学が得意って聞きましたよ。私、数学だけはダメなんです」
さらにさらに、困った顔が愛くるしい。
「
廉ってりこぴょんの彼氏のか?
うそをつけい!
どう考えても数学得意じゃないだろう。
共演女優はすごすごと去って行った。
「嘘はいけませんよ、御子柴さん。可哀想じゃないですか」
「だって本人が得意だって言ってんだぜ」
「廉君の得意は足し算が出来るレベルですよ! それなら私の方がマシです」
「なに怒ってんだよ」
「だってあの綺麗な女優さんに冷たいですよ、御子柴さん」
「あの手のタイプとは何人か付き合った。自分大好き優等生でつまんないんだよね」
「もう! その年で何人と付き合ったんですか! スクープされますよ!」
この人の唯一の欠点は浮気性な所らしい。
「今はいないよ。きれいなもんだ」
「アイドルは恋愛禁止ですよ」
「ちゃんと守ってるヤツなんていないよ」
「御子柴さんは守って下さい」
「なんで俺だけ?」
「決まってるじゃないですか。それがナンバーワンアイドルの宿命です」
「じゃあ、志岐が女の子と付き合ったらどうする?」
「どうとは?」
「祝福出来る?」
「そ、それは……」私は青ざめた。
「やっぱりショックなんだ」
「いえ、志岐君に見合う女性ならいいんです。私としては御子柴さんの嫌いな、さっきの優等生タイプの女優さんなんかがいいです。あの美しい人と並んで歩く志岐君はさぞかし麗しいでしょうね。想像しただけで鳥肌が立ちます」
「なんかまねちゃんって俺以上に恋愛感が屈折してるよね。自分が横に並びたいとか思わないの?」
「バカ言わないで下さい。私が横に並んだりしたら、全部ぶち壊しじゃないですか。まあ引き立て役にはなるかもしれませんが」
「結構お似合いだと思うけどなあ」
「なんてことを! 御子柴さんは志岐君の美しさを充分理解してくれていると思ってたのに。その程度と思ってたんですか!」
「まねちゃんってどこまで自己評価が低いんだろうね。驚きを超えて感心するよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます