第48話 御子柴さんとの外食
こういうお店が何軒かあるらしい。
御子柴さんは個室に入ると、慣れた風に肉をいくつか注文した。
「す、凄いですね。芸能人みたいですね」
私が感心して言うと、御子柴さんはぷっと笑った。
「芸能人だよ。忘れてた?」
「いえ、ただ別世界だなと思って……」
「まねちゃんも芸能クラスなんだから芸能人の一員でしょ?」
「いえ、滅相もない。私はみんなのおこぼれ仕事を頂いてるだけで。そ、そうだ。御子柴さんが私の寮費を立て替えて下さるとか。あの……ご迷惑を……」
「立て替える? まあそういう言い方も出来るけど、まねちゃんは俺の専属マネだからね。必要経費で落ちるから心配ないよ」
「私のギャラではいつになったら返せるか分かりませんが、頑張りますので……」
「何? 俺に返せって言われたの? 誰だよ、そんなこと言うの」
「あの、女性マネージャーさんが……」
「ああ。たぶん田崎マネだね。ごめん。元カノだからむかついてたんだと思う」
「も、元カノ? あの……三十ぐらいの女性でしたけど……」
「うん。あの頃は年上に興味あったんだよね」
す、すごい。
年上マネージャーを手玉にとってたんだ。
やっぱり只者じゃないな、御子柴さん。
「ただ、その代わりといってはなんだけど、本格的に俺の専属マネをやってもらうから。メインは田中マネだけど、サブで雑用のすべてを任せるから覚悟しといて」
「は、はい! もちろん!」
「じゃあとりあえず、これ。今月の俺のスケジュール。次からは田中マネから受け取って毎日の段取りを確認しておいて」
御子柴さんが差し出した紙には毎日びっしり予定が入っていた。
「あいさつ回りや仕事に直接関わることは田中マネがやるから、まねちゃんは朝のモーニングコールと食事、車の手配なんかの雑用ね」
「はい……」不安になってきた。
「それから女姿で
「男装ですか?」
「男装というか、スカート履かなければ大丈夫と思うけど……」
それだけで男に見えるということですね。
わかりました。
「学校にはあまり行けなくなると思うけど大丈夫?」
「はい。覚悟してます」
志岐君とあまり会えなくなるのは寂しいけれど距離を置くのに丁度いいかもしれない。
「携帯を一つ渡しておくから、これからはこれで連絡してくれ。あと、十万円仮払いでもらってるから、食事なんかはこれで買ってきて収支報告を一週間ごとに事務所提出ね。まねちゃんの食事もここから出していいから」
「ええっ! いいんですか?」
「必要経費だよ」
た、助かった。命拾いした。
「十万で足りなかったら田中マネに言って」
「い、いえ、充分です」
「ま、詳しい事は田中マネに聞いて。これからよろしくね、まねちゃん」
そうしてとろけるような肉をたらふくご馳走になった。
御子柴さんが神様に見えた。
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