第37話 ポップギャル
「へえ、似合うじゃん、まねちゃん」
教室に入ると、さっそく浩介君が私のショートの髪を褒めてくれた。
「あ、ありがと。こ、浩介君」
おお。男子と名前を呼び合うってなんか照れる。
この流れで志岐君も走一郎君と呼んでみたいが、苗字の方が短い志岐君はいつも周りから志岐と呼ばれている。
昨日あれからどうなったのか聞きたいけど、なんか気まずくて、朝から目を合わせることも出来なかった。
とりあえずどこも怪我をしている様子はなかったので、ほっとした。
「きゃああ! やったぴょん、
「面接がんばるぴょん!」
「残念だったね、エックスティーンは競争激しいからね」
「わあああん、亮子ちゃんんん」
今日は朝から女子達が騒がしい。
「モデルオーディションの書類審査の結果が出たみたいだよ」
浩介君が教えてくれた。
「書類審査? そんなのもあるんだ」
「基準に達している子は事務所が勝手に書類を送ってるんだよ。まねちゃんは連絡なかった?」
「さあ。何も聞いてない」
そもそも携帯も持ってないし、連絡の取りようがない。
私と志岐君はいつも担任から仕事の予定を聞いている。
「志岐は昨日メンズボックスの通過書類もらってたよな」
なんですと?! 聞いてないよ!
私は隣で涼しい顔で宿題をしている志岐君を見た。
「今日面接に行くから宿題を済ませておこうと思って」
宿題から顔を上げないまま答えた。
やっぱりいつもより冷たい。
◆
「神田川、ちょっと」
昼休みに担任に教室の外に呼び出された。
「仕事ですか?」
また御子柴さんのマネかと思った。
「いや、ポップギャルの書類に受かったみたいだ。今度の日曜に面接だそうだ」
「ええっ?」
なんと書類通過?
しかもなぜにポップギャル?
どちらかといえば、辛うじてエックスティーンの方が向いていると思ってたが。
「学園からこのクラスの中野と、地下アイドル3組の八木沢も通過してるから、まあ頑張ってこい」
「わ、分かりました」
「えー、おなべのまねぴょん受かったの?」
私の受け取る書類を覗き込んで、りこぴょんが教室中に聞こえる声で叫んだ。
誰だ、おなべのまねぴょんって。
「えー、えー嘘だあ。なんでこの子があ?」
「ぷぷっ。あの程度でも受かるんだからポップギャルってほんとにレベル低い」
なんか好き放題に言われてるぞ。
「あんたきょんぴーに譲りなよぉ。心は男なんでしょ? 一緒に仕事するのやだぁ」
こっちだってやだ。
「いえ、生活がかかってますから。受かったからには合格を目指します」
専属モデルになれば、寮費の心配は無くなるに違いない。
この際ガングロでも化粧オバケでもなってやる。
「すごいじゃん、まねちゃん」
素直に喜んでくれるのは浩介君だけだ。
「良かったね、まねちゃん。頑張りなよ」
「志岐君……」
今日初めて目を見て話してくれた。
「う、うん。ありがとう。頑張る!」
元気百倍だ。絶対受かってやる!
「そっちが受かれば、もう御子柴さんのマネージャーをやってるヒマもなくなる。メンズボックスにも来なくてよくなるよ」
志岐君は嬉しそうに笑った。
私は頭の中が真っ白になった。
そういうことか……。
もう私に付き
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