第32話 表紙撮影
「へえ、メンズボックスのオーディションって身長制限あったんだ」
今日も学校を休んで御子柴さんのメンズボックスの撮影に付き添う事になった。
こんなに学校休んで大丈夫かと思うのだが、御子柴さんレベルになると、滅多に学校には行けないらしい。
「御子柴さんが受ける時は言われなかったんですか?」
「俺オーディションは受けてないよ。向こうからオファーがあって、専属になったから」
そうだった。
この人はすべてにおいて別格だった。
「俺180もないしね。175はあるけど」
「そうなんですか? ありそうに見えますけど……」
「そう? 伸びたかな?」
少し猫背気味だけど、170の私が充分見上げる高さだ。
「志岐が受かったら、なるべくメンズボックスのマネージャーはまねちゃんに頼むようにするよ」
「本当ですか! 志岐君のモデル姿を見られるなら、何でもしますっ!」
御子柴さんはくすりと笑った。
「まねちゃんてホント志岐一筋だね。俺は眼中になしか。カリスマアイドルとしては自信なくすな。俺は結構まねちゃん気に入ってるのに」
「何言ってるんですか! 御子柴さんほどの人は、どこで誰が話を聞いているか分からないんですよ! 悪ふざけの冗談でも安易な事を言ってはダメです!」
「悪ふざけの冗談ねえ……」
御子柴さんは何故だか楽しそうだ。
今日は表紙の撮影だったので、御子柴さん一人かと思ったが、途中からドヤドヤ人が入ってきた。
どうやら別室でカリスマ美容師にヘアカットしてもらっていたらしい。
「ヘアカット特集も同時に撮影するみたいだね」
御子柴さんの撮影はもう最終チェックだけだった。
「またこの子がマネージャーかよ、御子柴」
大勢のなかに大河原さんもいた。
ツーブロックに刈り込まれたばかりの頭を見せ付けるように撫ぜている。
「田中マネはどうしたんだよ。ああ、そうか。
友禅寺って私でも聞いた事ある。
大河ドラマや映画にひっぱりだこの超有名中堅俳優だ。
あの人もユメミプロだったんだ。
「でも、その代役がこの子って、お前も軽い扱いになったもんだよな」
言う事がいちいち嫌みなヤツだ。
御子柴さんは余裕でにっこり微笑んだ。
「今日は表紙の撮影だけだからって俺が社長に頼んだんです」
「……」
大河原さんはその言葉に何故かむっとしたようだ。
「ヘアカットは
御子柴さんは私の手を引いて立ち上がった。
スタジオを出ると、御子柴さんはくくっと笑った。
「表紙ってのは、その雑誌の花形なんだ。逆にヘアカットはスタイルいまいちで顔だけいいってヤツが多くやる仕事。メンズボックスでは三流仕事なんだよ」
なるほど。撮影内容にも優劣があるんだ。
やるな、御子柴さん。
「御子柴君、こんにちは」
メイクルームには感じのいい二十代ぐらいの好青年がいた。
業界用語を使わない所が好感度大だ。
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