第42話

「どうする?どうすればいいんだ僕は?!」

ここ最近で最大に頭を抱えた。テストはもちろん頑張らなくちゃいけない、進路のためにも。そして、はるかさんと遊びに行くなんて夢を掴むチャンスとなれば、俄然やる気も出る。でも、タイミングが悪すぎる。一番の友達だと思っていた二人とぎくしゃくしてる時に一人で浮かれてていいのか?とはいえ、やっぱりはるかさんとは・・・。

考えれば考えるほど、同じところを堂々巡りするばっかりで何の解決にもなっていないことも分かっていた。それでも考えずにはいられないのだ。二人を蔑ろにすることになりはしないか、と。昨日までそれぞれ別の問題として僕の中にあったテストと二人が、むしろ救世主とさえ思っていたテスト期間が、まさかこんなジレンマを生むとは。はるかさんとの関係が進展することを素直に喜ぶ自分と、航太こうたひかるとの関係を大事にしたい自分との間で僕の頭は爆発寸前だった。

とはいえ来年から受験を控える中学二年生に、内申点やら進路に関わる諸々を棒に振りかねないような選択肢を選べるはずもなく、一先ずは大人しくテスト勉強に集中することにした。結果が出てからでも考えるのは遅くない、そう信じながら。


テストが無事に終わり、蓋を開けてみるとまずまずの結果だった。問題の平均点を超えているかどうかという点についても、めでたく条件をクリアした。嬉しいような心が重くなるような、もろ手を挙げて喜べる状況じゃないのが自分でもどうしていいかわからなくて、もやもやしっぱなしだった。部活はテストが終わったその日から再開されている。そしてはるかさん達三年生にも当然テストが返却されているだろう。

賽は投げられた。

振り出しに戻る。


家に帰ってケータイを見ると、案の定はるかさんからアプリの方に連絡が来ていた。そして意外にも、テストだからと言ってしばらくご無沙汰していた東堂さんからメールが届いていた。取り急ぎメールの方を確認すると、こっちはこっちでお茶でもいかが?とのことだった。しかしその件に関しては先約がある。二人の女性を天秤にかけるような真似はしたくないが、ここは東堂さんにお引き取り願おう。だって僕の本命は音楽室のあの人、はるかさんなんだから。早々とメールの返事を送ってしまうと、満を持してアプリを開く。内容はやはりテストのことだ。


はるか:部活お疲れ様!今日テスト返ってきちゃったよ~

    晴人くんの方は返ってきた?


さて、どうする?

部活が再開されて数日、また三人で顔を合わせることになったけれど、相変わらず航太は僕らのことを避けているし、そのせいか光は無理やりテンションを上げているというか、空元気に振舞っている。航太に話しかけようとしてみても、さっとどこかへ行ってしまって何ら解決の糸口が見えてこないままだった。要するに僕一人ではお手上げ状態。正直言って、僕がはるかさんと遊びに行こうが行くまいが、この状況を好転させることには関係ないんじゃないかと思い始めていた。それなら僕は何をためらうことがあるのか?はるかさんへの返事を打つ。


柳瀬:ありがとうございます!僕のとこもテスト返ってきましたよ~

   結果は・・・平均点超えました!


ピロリンッ


はるか:すごい!頑張ったんだね!もしかして、いつもそうだったりする?


柳瀬:当然、と言いたいとこなんですけど・・・半々くらいです笑

   でも今回はマジでめちゃ頑張りました!


ピロリンッ


はるか:私のおかげかな?笑

    よし、じゃあご褒美あげなくちゃね!


そんなわけで、とんとん拍子に話は進み駅伝の大会が終わった次の週末、二人で映画を観に行くことになった

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