第4話
こんなはずじゃなかったのに。
鬱蒼と茂った木が頭上を覆い、足元は剥き出しの土に石が半端にめり込んででぼこしている。道幅は人がすれ違えるかどうかというくらいで、そのすぐ横に目を移すと草が伸び放題。しかもまだ日が長いとは言え、薄暗い。僕は見渡す限りの緑の中を懐中電灯を手にざくざくと歩いた。
光と航太と別れてからどれくらい歩いたんだろう。ストップウォッチ付きのゴツイ腕時計を見ると16時を少し回ったくらいだった。
僕は、50m走の賭けに負けた。
短距離の記録測定は一人ずつ名簿順に走ることになっていて、僕ら3人の中では「
予想通り航太は6秒27という好タイムを出した。
光は去年より少しタイムを縮め、7秒13。
そして2人が注目する中走った僕は、7秒44。
去年より大幅に良くはなったが、負けた。
こんなはずじゃなかったのに・・・いや、やっぱりこうなった。
心のどこかで負ける気がしていた。皆に追いつこうと1年間必死で練習したし、結果も少しずつだけど付いてきている。事実、部内記録会のタイムも去年とは比べ物にならないほど上がった。僕は本気で勝ちたかった。
でも、陸上経験は少ないし光も航太も元々運動神経は良い方だから、負けてもしょうがない。そうやってすんなり負けを受け入れてしまった。
「で、罰ゲームって何すればいいの?」
「夏だし、ちょっと涼しくなるようなことしようぜ!」
「アイスは先生が買ってくれるだろ?」
「ちっがーう!肝試しだよ~。でもガチなのはシャレになんないから安心しろって」
罰ゲームの内容は、僕らの学校から歩いて15分くらいのところにある神社へお参りして帰ってくるというものだった。しかしこの神社というのが、何故かお社は小さいのに敷地が広く周りを大きな木が囲んでいるおかげで、一見すると森のようになっている。どんな神様を祀っているとか由来も何も知らないけれど、お社は鳥居をくぐった先の一番奥という念の入れようで参拝させる気がないのではないかと疑ってしまうような、近寄りがたい神社だった。
「ちゃんと鈴鳴らしてこいよ?俺ら外側から裏手に回って聞いてるからな」
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