第2話 未確認物体登場
森を抜けるとそこは見晴らしのいい平原だった。
緑に広がる大地には草花が気持ちよさそうに風に揺れ、青空には何故かUFOが飛んでいた。
その空に浮かぶ不可思議で大きい金属質の物体を見上げて、エクスは呟いた。
「何だあれ?」
「あれはUFOですね」
驚いたことにシェインは知っているようだった。そして、レイナも
「ああ、あの焼きそばの」
「姉御の知識はおかしい」
ちょっと違っていたようだった。
「あれはどう見ても焼きそばには見えないだろう」
タオの意見にはエクスも同感だった。シェインはちょっとよだれを垂らしそうになりながら言った。
「焼きそばなら食べたいですが」
「あんなの食べたらおなか壊すわよ」
「撃ってくるぞー」
UFOは攻撃してきた。黄色いレーザー光線が空の高みから地上へと突き刺さっていく。舞い上がる爆風。草花がわさわさと揺れた。
撃ってきたことで相手の正体が判明した。
「奴らはヴィランか!」
「わたし達に攻撃してくるんだもの。間違いない!」
「どうするんですか? 相手が空だと手出し出来ませんよ」
「分からないことは村に行って聞こうよ」
ちょうど平原の先には村があった。その村から何かが出て来ていた。鋼鉄の動く乗り物だ。緑の砲身が空へと向けられる。
「何あれ」
「あれは戦車ですね」
さすがシェインは物知りだ。そしてタオも。
「車を洗うんだな」
「無理してボケなくていいですよ」
戦車はUFOとドンパチを始めた。大きい音に思わず耳を塞いでしまうエクス達。
「何て音だ」
「ヴィランと戦ってる。あれは味方ね」
「村人が動かしているようです」
「今のうちに村へ行こう」
4人は村へ行こうとするのだが、その前にヴィランが立ちはだかった。
「そうはさせんぞ」
「ボスに逃げる奴は銃殺刑だと言われたのだ」
「特攻は浪漫だとも」
「ここでお前達を倒して名誉挽回だ」
敵が来たなら戦うしかない。4人は武器を構える。
「ああ、仕方ないな」
「ヴィランは消毒です」
「やるわよ」
「おお、やっちまおう」
4人は戦う。物語のヒーロー達の力を借りて敵に立ち向かう。
攻撃を盾で防がれたり、飛び道具を撃たれたり、少し強かったがあくまで少し程度だった。旅慣れた4人の敵では無い。
エクス達は雑魚のヴィランをあっさりと倒し、村に入った。
その頃にはもうUFOも退散して辺りは静かになっていた。
村に入ると村長が出迎えてきた。口ひげの立派な優しそうな人だった。その瞳も優しい慈愛に満ちていた。
「ようこそいらした、旅の方。さきほどの戦いも拝見いたしましたぞ。あなた方はとても強いのですね。生身であのヴィランと戦えるとは」
「まあね」
エクス達にとっては何度も繰り返してきた戦いだった。戦うことは当然のことだった。
レイナやシェインは話を続ける。
「わたし達は世界を救うために旅をしているの」
「あの戦車は何ですか?」
武器マニアのシェインはそちらの方に興味津々のようだった。村長は答える。
「あれは古代の遺跡から発掘したロストテクノロジーと呼ばれる物です」
「なるほど。ロストテクノロジーだったのですか」
エクスにはよく分からない単語だったが、三人が納得していたようなので同じようにうなずいておいた。仲間の協調性って大事だ。
「あのUFOは? 焼きそばでは無いですよね」
「あれはヴィランです」
「やっぱり」
予想が当たっていたので三人はうなずく。エクスも同じようにうなずいておいた。
「では、ヴィランもロストテクノロジーを手に入れたのですか?」
「それは分かりません。北の山の精霊様なら何かご存じかと」
「精霊様?」
「はい、精霊様は古くからこの地を見守っておられ、この地のことにとてもお詳しいのです。ただ誰にでも会ってくださるわけではないですが」
「そこに行くしかないか」
「そうね」
「今日はもう遅い。今日のところは我らの歓迎を受けて、明日の朝に旅立たれるがいいだろう。宴じゃー」
というわけで宴が始まった。
テーブルには料理が並べられ、煌びやかなライトに照らされたステージではフリフリの衣装を着たアイドルがマイクを手に歌って踊っていた。
「あれは何ですか?」
「おや? もしかしてアイドルをご存じない?」
「知ってますよ。姉御のことです」
「もう、そんなに持ち上げるものじゃないわよう」
レイナは照れているが、村長は真顔だった。
「やはり知らないと見える。あれが我が村のアイドル、ナーナちゃんですよ」
「……」
レイナは無言で目をそらしてジュースをすすった。シェインはテンションを変えずに言う。
「わたしは戦車の方が好きですね」
「シェインは武器マニアなんだ」
「では、戦車も入れましょう」
村長が指パッチンすると、壁を突き破って戦車が入ってきた。
踊るようにキャタピラを前後させ、砲身をぶん回し、砲撃を繰り返す。空に音がよく響いた。
アイドルも平然と歌とパフォーマンスを繰り返し、会場はたいそう盛り上がっていた。
みんな酔ってるんじゃないかとエクスは思った。
そして、夜が明けた。
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