朝食

「しかしつばさちゃん、久しぶりやなあ。元気しとった?」


サラダを口に運びながら杜先輩が言う。

『朧』と最後に仕事をしたのはいつだっただろう。

確か、どこぞの地域の祭りに出演したときだ。

季節は秋だったから、半年以上前になるな。


「はい。『朧』は、その後お変わりありませんか?」


笑みを浮かべて返す。


「私たちは特に。今まで通り活動させてもらっています」


と千座先輩。杜先輩もうなずいている。


「これからはつばさちゃんにプロデュースしてもらうことになるんやもんな。よろしく頼むなー」


いえこちらこそ、とマニュアル通りの返事をする。別に冷めてるとかそういうわけじゃないのだけれど、こういうときは素っ気ない返事になってしまう。

直さなくてはと思うのだけれど、ずっとこの調子で過ごしてきたのだ。一朝一夕でどうにかなるものではない。


ふと視線を感じ、左を見る。左にいるのは東雲くんだ。目が合うと、彼は口の端を片方だけ持ち上げ、鼻で笑った。きっと彼なりの激励だろう。うん、そう思うことにしよう。

しかし、先輩たちといると東雲くん口数少ないな。二人だけか『朧』だけでいるときは結構おしゃべりなのに。

先ほど私を鼻で笑った彼は、どこを見るともつかない目をしてご飯を食べている。箸とかお椀の持ち方綺麗だな、さすが和をテーマにしたユニット――3人ともものすごく姿勢良いし――あ、この鮭美味しい――色んな思いがなんとはなしに頭に浮かんでは消える。朝特有のこの感じが、私は結構好きだ。

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