特待生
教室も廊下と変わらず、高貴さが滲み出ている。
横にいるきらびやかなアイドル達には似合うけれど、私のような庶民にはなかなかいづらい場所だ。
まあ、そのうち慣れるんだろうけど。
そしたら私にも、ちょっとは高貴さが漂うようになってたりしないかな。
視線だけ動かして、私は周りの席を見る。
左には仁科くん、左斜め後ろに七基くん、左斜め前には枇々木くん、前に火蛹くん、そして右に、『
そのまわりには、他の『King』のメンバーも座っている。
さっき『PHENIX』との雑談が終わったころに教室に入ってきたのだ。
雑談の結果わかったことだが、七基くんが眼鏡をかけていないのは忘れたかららしい。よく考えれば七基くん、コンタクトつけれなさそうだもんな。
話が逸れたが、『King』も当然特待生である。
城咲謳、
城咲先輩率いる『King』は二年弱くらい前――今の三年生が一年生だった時からの特待生で、現在君色学院の頂点に君臨するアイドルだ。
隣にいるのが『PHENIX』でよかった。彼らでなければ緊張に押し潰されていたに違いない。
だってもうやばいもん。隣と世界が違うもん。
でも、多分私が緊張しないでいられるのは、今のところ『PHENIX』だけだ。
一緒に仕事をしたことのあるグループもあるが、多くて3回ほどだろう。両手で足りないくらいの仕事を共にしてきたのは『PHENIX』だけ。『King』『Suger-Bullet』『lonelywolf』『Transparance』とは仕事をしたことすらない。
私はさっき机の中に入れたファイルから、一枚の紙を取り出す。
特待生になった、というお知らせの紙だ。
そこに、他の特待生の名前と、グループ名が載っている。
何度目だろうか、私はそのグループを目で追った。
はじめに、プロデューサーである私、
一ノ
ここまでがアイドル。
アーサー・ウォルトハウゼン、
この二グループがバンドだ。
この7グループが今年の特待生。見たところ教室には、『Suger-Bullet』以外の全グループがそろっている。ということは、これで全員か。
『Suger-Bullet』は、2月あたりから旅行に出かけているらしいので、今月末まで学校を休むそうだ。何故かは知らない。『春フェス』のときには一時的に戻ってきていたけど、ステージに立っていたのは一ノ瀬先輩だけだった。
『春フェス』は2,3年生であれば全グループが強制参加だが、メンバーは欠けていても構わない。ステージに出たのが一人でも、その一人が選ばれればグループ全員が特待生となる。
が、一人だけで特待生の座を勝ち取るなんて。
『Suger-Bullet』の二人は『King』と同じくらいの時期から特待生だったけれど、それにしてもすごい。私も何度か『Suger-Bullet』のステージを見たことはあるのだけれど、毎回本当に素敵なライブだった。
男女問わず人気なようで、プロデュース科だけでなくアイドル科やバンド科にもたくさんファンがいるそうだ。
不意に、教室のドアが開く音がした。皆が一斉にそちらを向く。
入ってきた先生は、年齢不詳の整った顔に柔らかな笑みを浮かべ、一礼した。
「みなさんお揃いのようですね。おはようございます。今日からあなたたち特待生の担任となる、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます