止まっていた時間 3
「おいブレッドォ、お前は準備いいのか?」
俺は背中の剣を握りはなしを繰り返しながらうなずいた。
それに続いてイブとパルムもゆっくりと首を動かす。
周囲にたくさんの剣士やら盾使いやら魂法使いやらが真っ白い服に赤いドラゴンの紋章のついた服を身にまとっている。
「ねぇ、ブレッド。もしもハバネロをたおすことができたら何がしたい?」
緊迫した空気の中、イブの言葉が俺の耳に入ってきた。
「私は何もおこらない世界で安全に暮らしたいな」
小さくささやいた口元が雲から差し出た光にてらされた。
「僕はフィルと一緒に店でも開こうと思ってるよ。王国からの依頼をいっぱい受けていつか王様から賞状もらったりしたいかな」
「おうよォ」
後ろを向いて合図地をうったフィルがにやっと無理に歯を見せる・・・気がする。
空一面にかかった雲が俺の気持ちを一瞬落ち着かせた。
「みんな!作戦の最終確認をするぞ。時間がないからなるべく早めにおこなう」
そんな団長の言葉がハバネロ谷に響き渡った。
誰もの視線が先頭に立つ団長へと向かう。
「まず、魂法使いのみんなにはハバネロの時間転移黒煙を防ぐための魂法をパートナーにうってもらいたい。
パートナーではなく魂法使い側が死んでしまうと魂法の効果が切れるため時間転移してしまう。
だから、くれぐれも魂法使いのみんなは死なないようにしてくれ」
パルムの体が揺れるのが分かった。
おそらく彼も緊張しているのだろう。
ハバネロ戦で生き残った者は過去に一人として存在していない。
だからこそ、明確にハバネロが何者なのかわかっていないのだ。
「そして、盾使いのみんなには前衛で魂法を使い続けてほしい。
そして、なんとか奴からの攻撃を抑え込むんだ。気を抜いていると一瞬で吹き飛ばされるぞ!」
今度はフィルの筐体が震えた。
あれじゃ、ほとんどプレッシャーにしかならないだろう。
「僕も含めて剣士のみんなだ。みんなは前衛で盾使いが攻撃を抑えた後で来たスキをついて後方から一斉に駆け出してほしい。そして、攻撃を打ったら戻るを繰り返せ!戻る場所は盾使いがたつ後ろだ!」
最後に俺とイブの体がまるで共鳴したかのように震えた。
思わず互いの顔を見てしまう。
ルとパルムからの視線を感じ慌てて前を向きなおした。
「そういうことだからとにかくみんな頑張れよ。状況が厳しくなったら目標を討伐から封印に変更する。みんないいな!」
「ウォォォ!」
静寂から一転、だれもの気力が前回になった。
両腕を上げる人もいれば剣を抜いて空高く掲げるものもいる。
中には天に向かって巨大な光線をうちこむものもいた。
俺たちもその中の一人でイブは目を輝かせ、俺は腕くみしてにやりと笑みをこぼす。
「それじゃ!みんな!終わったら全員で打ち上げだ!」
最後にどんだけ強力なフラグを立ててんだよ。内心毒づきながら俺は
「まぁ、今までずっと団長のくせに討伐には参加していなかったみたいだし。緊張してんだよな」
つぶやき背中の剣を握った。
雲の間から突き出す光が神々しくむき出しの地面を照らす。
そして、そのときはやって来るのだった。
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