止まってた時間 2c

 激しく音を上げる鼓動が俺の瞼を持ち上げた。


伸びをして起き上がってみれば視界に入ってくる日の出。

俺は深く息を吸い深呼吸を繰り返した。

定まらない視界でとぼとぼと歩きながら扉を開ける。


「おはようブレッド」


反対側の扉が開くと同時、水色のパジャマを揺らしながらパルムが声をかけてきた。


「おはよう。パルムも今起きたところか」

「なんかがさがさ音がしたしなんか緊張してつい起きちゃった」


なるほど。ってがさがさっ手こんな大事な日に泥棒でも入ったのか?

すると廊下につながる扉が一つ開かれた。


「おはよう二人とも」


現れたのはイブ。

彼女のことだ、きっと持ち物の整理をしていたのだろう。


「メイドさんが朝きてさ。なんか団長室までブレッドをよんでほしいって言ってたよ」


どういうことだ?はばねろ討伐当日だというのに随分と余裕かましてくれるじゃないか。

俺は内心で毒づきながら急いで顔を洗うとレザーコートをはおい外へと駆け出していった。



 

 廊下一面にひかれたレッドカーペットの俺はまっすぐに駆け出していった。

向かう先は頂上である100回にあるという団長室。

俺は廊下の端までくると目の前にせまったエレベーターのボタンを押した。

この時間軸のエレベーターはどうやら魂法による気圧の返還で動いているらしい。

そう考えてみると魂法がいかに便利かが身にしみて感じられる。

俺はやってきたエレベーターにのりこんだ。


俺の時間軸のエレベーターよりもずっと早いのかかなりの圧力が俺の全身を襲う。

急激にエレベーターが止まったと思えば目の前の扉がゆっくりと開いていった。


俺は再び走り出すとエレベーターの目の前にある団長室をノックする。


「はいりたまえ」


妙に上から目線の声が俺のことを多少いらだたせるが仕方なく一礼しながら扉を押し開ける。

いくつも浮遊するクリスタルが目に飛び込んできた。


「失礼します」


小さくつぶやいた声が窓から外を見ていた団長を椅子ごとこちらに向かせる。

と、次の瞬間緊張した表情で団長が「こちらに来なさい」とつぶやいた。


「おの~一体なんのようでしょうか?」


すると団長は緊張した表情を和らげて口元に妙な笑みを浮かべる。


「おぉ~!君はやっぱりブレッド君か!ひさしいな。どうした、そんなかしこまって。君らしくないな」


俺の頭の中をはてなマークが埋め尽くした。


「はっ、はぁ~?あんた俺のこと知ってるのか?」


思わずため口になっていたことに気が付き俺は慌てて口元を隠す。


「知ってるも何も、君とはよく話したじゃないか。昔、ハバネロ討伐体に入ってきた時のブレッドは妙に俺に生意気でな。一回だけ戦闘を仕込まれたことがあったんだ。そこで俺は見事に完敗してな。その後はなんども君に勝負をいどんだんだがいづれも完敗。そんな君もハバネロ討伐の日にジンクス君の死によって死亡したと聞いていたが生きていたか!」


はっ?俺がジンクスの死によって死んだ?いったい何の話をしているんだこいつは?


「お前はなにが言いたい?俺はそんな記憶知らないぞ」


一言いうと団長は悲しそうに眉を顰める。


「そうか。覚えてないか。もしかしたら・・・いや、なんでもない。朝早くから呼んでしまって悪かったな。もう戻ってもいいぞ」


あっさりと俺を返した団長はなにかわかったような表情をしていた。

この間のもう一人の俺の一件といい今日のこととといい言った何が起こっているのだろうか?

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