止まっていた時間 1b

「秘密って、なんだ、よ!」


最後の一言を強調しながら俺はブレッドと名乗った幽霊を後方へと跳ね飛ばした。

しかし、俺は見てしまった。

奴の剣の柄にしっかりとホープセーバーと彫られた文字を・・・。


「おっ、お前は・・・一体何者なんだ?」


落ち着かない呼吸を抑え何とか言葉をつづける。


「一体お前はなにを知っている」


心なしか奴の光が漏れ、口元が一瞬笑った気がした。


次の瞬間、俺の顔の髪の毛をホープセーバーが貫く。

なんとか的中を防いだもののこいつは俺の剣技にそっくりだ。

いや、まったく同じといっても過言ではないだろう。


それにこの速さ。

下手をすると俺よりも早いかもしれない。

俺は負けじと聖剣を握った右手に力を込めて付き技を披露する。

そして、一瞬がら空きになったはらに叩き込んだ。

刹那、火花があたりに四散する。


気が付けば相手のがっしりと握られた柄が見事に聖剣を抑え込み細かく振動しながら波を発する俺の剣を受け止めた。


[驚くのも当然だな。この技はジンクスの本には載っていない。対スケルトン型モンスター用に考案した技だが対人戦にも使えないことはないぜ]


あっさりと発した言葉に俺は両目を見開いた。

ジンクス・・・その名をなぜ奴が知っているのだろうか。


[へぇ、まだそこまでわかっていなかったのか。なるほど、それなら教えてやろう。お前は・・・いや、俺はジンクスと一緒に旅に出てジンクスと一緒にハバネロに挑んだんだ]


低い声と同時、奴は柄で押さえていた聖剣ホープセーバーを跳ね飛ばし、右手のホープセーバーを大きく振り回してきた。

ハバネロ団指定の一張羅を一部切り裂いたその剣は後退した俺を一切見逃さず空気をゆらして決先を向けてきた。

ぎりぎりで抑え込んだ剣が再びつばぜり合いへと発展する。

その一方で俺の思考はフル回転していた。

一体あいつは何が言いたい。その前にあいつは本当に俺なのか?

そしてジンクスの相棒は俺ではないはず。

何せ俺がこの時間軸に来たのはつい最近のことなのだから・・・。

しかし、この剣技は俺と一切の誤差なく一致する。


[考えても無駄だ。俺がお前であることは事実だといっただろ。それから、この世界には大きな秘密が隠されている。それが何かはわからないが少なくともハバネロをたおしたところで正しい世界は始まらないぞ]


明らかに力で俺のことを圧倒しているブレッドはさらに剣を振動させじりじりと剣を俺の顔めがけて近づけていく。


「そんなことわからないじゃないか」


俺は全身に力を入れじりじりと確かな速度で近づいてくるホープセーバーをはねのけた。


後方へと飛ばされたブレッドめがけて高速の横ふりをたたきつける。

それを余裕をもって防いだブレッドは左斜め上に剣を構え魂法剣技を発動させた。

細かく振動する剣が弱い光を発しながら俺に接近してくる。

俺はまけじと魂法剣技をその剣にぶつけた。

飛び散る火花が洞窟内を明るく照らす。

なんどもぶつかりあう剣が魂法剣技独特の金属音をはっしながら互いの剣を共鳴させていった。

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