止まっていた時間 1
俺はただ一人、海の上に浮かぶハバネロ谷に突っ立っていた。
眼前に移る二方を低い山に囲まれ、その周りをさらに海が囲うハバネロ谷では山の根元に一つの空洞が存在している。
その名もハバネロ洞窟。どうやらこの場所はなんでも「ハバネロ」がつくらしい。
俺は一人でいる孤独感に大きなため息をつき妙な青い色の光を発する洞窟内部に歩いていった。
「思った以上に冷えてんな」
両肩をさすりながら発した言葉が空洞内でなんども反響する。
俺は出現するであろうモンスターに注意しながら背中の剣を握っる。
木剣とは違った確かな重みがしっかりと伝わってきた。
しかし、この依頼は一体何をすればいいのだろうか。
クリア条件が全く思いつかない。俺はとりあえず薄く青色に照らされた道を歩いていった。
それから、30分くらい歩いた。しかし、いまだに何もわからないままでいる。
ひとまず青色の明かりが強い場所を見つけたため俺はその空間で休憩をとることにした
。ゆっくりと地面に座り込む。お尻が妙にひんやりとしてくるのが分かった。
と、そのとき。
[お前はそれでいいのか]
どこかで聞いたことのある音が俺の耳を震わせた。
とっさに背中の剣を握る。
「誰だ!」
[お前自身だ。わかりずらいと思うがその事実には何一つあやまりがない]
即答で答えられた回答に俺は抜剣した。
青い光に照らされて紫色の刀身がさらに深い色をかもしだしている。
「どういうことだ」
張り詰めた声がその声の正体を出現させた。
背中には真っ黒い剣を下げ全身を赤白のハバネロ指定レザーコートで固めたその姿はまさしく今の俺。
しかし、そいつには顔なんていうものは存在していなかった。
まるでブラックホールのように一切の光を吸収していく顔にあたる部分は微妙な光の漏れでしか顔のパーツを見分けられない。
[ことばをそのまま受け取れ。そうしなくちゃ、お前には何もわからない。俺はブレッドだ!」
最後の一言を吐き出すように言ったブレッドとなのった何かは俺に向かって猛烈な速度で剣を叩き落としてきた。
とっさに構えた聖剣が奴の黒い剣を抑え込む。発生した火花に洞窟の中が一瞬フラッシュした。
「だから、それがどういうことかって聞いてんだ。いったい、お前はなにがしたい」
つばぜり合いの中、俺の眼前で一瞬強く光を漏らしたやつの目らしきものは今度は明滅を繰り返している。
[お前は気づいていないのか。この世界の秘密に・・・」
奴から絞り出された声が頭の中で何度も反響した。
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