待ち合わせの果てに +1
「カンパ~いィ」
「乾杯!」
俺は右手のオレンジジュースを打ち合った。
「それにしてもこの中で酒を飲めるのが俺だけッつうのはきついなァ」
「ほどほどにしてくれよ」
多少あきれ気味に答える。
今日は俺たちの無事を祝った飲み会だ。
壁一面木でできたこの店は俺たち以外にもたくさんのひとが入りかなりにぎわっていた。その端っこの一角。
右側にもう壁があるこの席は4人が座ることができる最後の席らしい。
「それにしても、ブレッドとフィルさんがなかなおりできてよかったわよ」
ため息交じりのイブの声。俺は思わず苦笑を漏らした。
「まァ、そんなことでうじうじしてらんねェしなァ。それに、ブレッドが悪いわけじゃないんだからよォ」
そうだ。決して俺が悪いわけではない。
それに、その犯人である殺人者のリーダーを俺たちが倒したことによって殺人集団は消滅。その後はことが動き、約5000人はいると思われた殺人集団のうち2000人は俺たちの活躍でヴォースト衛兵に逮捕された。そしていま、残りの3000のうち2500はちりちりになって混乱していたところを逮捕されたらしい。
「それにしてもあっけなかったわよね。あんな簡単に捕まっちゃうなんてさ」
「なんか、黒幕がいたみたいでね。白衣を着た男が衛兵に全員の居場所を書いた紙を渡したらしいよ」
俺は全身に鳥肌がたつのを感じた。白衣をきた男でそんな人間離れしたことができるのはあの男しかいない。間違いない。一体あいつは何者なんだ?
「そういえばよォ、この間ブレッドが倒したあの赤フードの男はもはや人間じゃないって言ってたけどどういうことだァ」
「ことばの通りさ、顔は真っ黒く何かの集合体のようになって目とかのパーツはただの光の塊に変化していた。一体あれは何だったんだろう」
パルムのお兄ちゃんのことは実はまだ話していない。そんなことを話せばおそらくパルムが悲しむに違いないからだ。しかし、あれは完全に生物とは定義してはいけない存在だった。どんな原理であんなことが怒っているのかはわからないがもしかするとこの世界は常識なんてぬるいものでは解明できない根本的な謎があるのかもしれない。
「まァ、難しことは考えなくていいんじゃないかァ」
軽!こいつ未知について軽すぎるだろう。普通もっとこう・・・ああ、なんかわかんなくなってきた!
「そうわよね」「そうだね」
えっ、それでいいのか?案外すんなり進んだ会話を無視してフィルは注文したウォッカを飲み干した。
「本当にほどほどにしてくれよ。お前、酔いつぶれてもだれも運んでやれないからな」
「つれねェ奴だなァ」
フィルの言葉に些細な笑いが発生した。
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