待ち合わせ果てに 9

風を巻き込みながら城壁を抜けた俺。その背中には新品の木剣がプラスで装備されていた。

相手は2000人。そのうえ俺はあいてを殺さないために木剣で挑む。そのため魂法剣技を使うことができない。真剣で魂法剣技を発動させている状態であれば一振りで50人ほどは余裕でたおせるがおそらく木剣では2人が限界だろう。そう考えると俺に残された可能性の中で一番大きいのは「死ぬ」という何とも簡単な可能性だ。そう、おそらくこの戦いで俺は死ぬだろう。一人で2000人なんて木剣でたおせる人数ではない。それでも俺は行かなければいけないんだ。そして、俺の大切なものを守り切ってやる。俺が強く意思を固めた時、

荒れた大地の奥からうっすらと黒い影が見え始める。目を凝らしてみれば誰もがフードを深くかぶりそれぞれの武器を持って歩いてきていた。


「なるほど、こいつはてこずりそうだな」


なぜか格好をつけたセリフを口にすると、俺は背中のホープセーバーではなくその手前にかけられた木剣を抜いた。


「ガチャリ」殺人集団2000の兵が俺に対して容赦なく抜刀する音が聞こえる。次の瞬間大群が一斉に走り始めた。いや、俺に突っ込んできたのだ。剣を右側に持っていきいつもの構えを披露すると何の戸惑いもなく鎌を振り遅してくる一人目に剣を叩きつけた。疾風にでもなった気持ちで視界に移ったものは切り飛ばしていく。右に左に振られていく剣は一撃で数人の人間を吹き飛ばしていった。眼前に迫ってくる剣もあれば真横から振り下ろされる斧もある。しかし、俺はどれも片っ端からかわしていきできた一瞬のすきを木剣で押し飛ばした。たおしても倒しても敵は増えていくばかりだが俺の剣はますます加速されていく。もはや一つの光と化した剣は眼前に現れた人間を次々に押し飛ばしていった。


「セァー!」


短い咆哮と同時。加速した俺の剣は目の前に現れたサーベルをたたき割った。


「キシェー!」


変わった雄たけびをまき散らしながら俺に飛び込んでくるダガー使いを吹き飛ばしおられたサーベルを俺に叩きつけようとしている男をさらに突き飛ばす。男の口から吹き出た体液を無視して俺は後方からの大剣に木剣をぶつけた。小さな火花が散ると大剣が後方に吹き飛ばされ持っていた男は体制を崩す。そこにさらに一撃を加え吹き飛ばす。久しぶりの長時間の戦闘で全身の骨がきしむのがわかるが何とか気力で押し切って耐える。そんなことを繰り返しているうち、俺の木剣には早くも限界が近づいてきていた。


「キャッハー!」


耳をつんざく声。俺は声の主が振り落ろしてきた戦斧を受け止めた。そしてそれを突き飛ばす。しかし、次の瞬間、戦斧を弾き飛ばした俺の剣は見事な音を立てて真っ二つに割れた。吹き出した木くずが宙を舞う。それでも降り注ぐ武器の数々は無力になった俺の体をいたるところから突き刺した。

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