待ち合わせの果てに 2
「うっせぇな」
「はぁ?何言ってんだよォ、聞こえねぇなァ!」
口元を引きつらせながらつぶやくポンチョ。
「うっせェって言ってんだ!」
咆哮と同時、俺は地面をけった。右手はがら空きで感触がない。そんなことは当然のことだ。なにせ剣を持っていないのだから。それでも動いた。体の・・・本能の命ずるままに・・・。ポンチョの目の前まで来た俺の頭上にはポンチョの武器である大なたが振り上げられていた。俺はそいつの手首に手を持っていくとジンクスさんの本に書かれていた武器を奪う方法を実践する。始めて使ったはずの技なのに妙に体になじんでいる。
「お、おいなにを!」
そしてポンチョは体制を大きく崩した。なたが俺の手に吸い込まれていく。力ずよく握られたなたはどす黒い波を浮かべた。それを奴の腹に叩き込む。吹き上がる血に飛び散る肉片。あまり手入れされていないからか切れ味はかなりわるい。それでも、こいつらを殺すには十分すぎる。無言で突っ込んでくる周りのフードを俺はなた一本で吹き飛ばした。一振りで消えうせたフードの29人。俺は冷静になって右手からなたを落とした。無意識に足が動く。向かった先は無様に転がるセフの上半身。固く目をつむった顔面に絶えず血を流す下腹部。そして、俺の腕からは返り血で染まったtシャツを伝ってぽたぽたと地面を染めていく。意識が飛びそうになるのを必死に耐え、俺はにぎりこぶしを作った。
「おい、ブレッドォ、そんなところでな・・・に・・・・」
フィルの言葉が止まった。きっと返りの遅い俺とセフを迎えに来たのだろう。足音が軽かった。しかし、もう二度と彼女とフィルは
会うことができないのだ。
「ブレッド・・・何が・・・あたったのよ」
イブの声から洩れた日本語は妙に片言だった。
「おっ、お前ェ、いったいセフに・・・セフに何をしたァ!」
力のこもった一言に俺は何も言えなくなった。
フィルは俺の少し後ろまで歩いてくると突然に停止した。
「二度と来るな・・・俺の視界内に二度と入るなァ。この疫病神」
小さくつぶやいた声は俺の耳を貫いた。あぁ、そうだ。俺は疫病神だ。セフを守れなかったのだから。そしてフィルは俺の胸元をつかむと鋭い目でにらみつけ地面に放り投げる。俺は後ろに手を付けしりもちをついた。
「いいなァ、次、俺の視界に入るようなら・・・イブとパルムに近づくものなら俺が容赦なく殺すからなァ」
俺は何も言わずにさっていった。
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