日が沈んだ世界 15
[第一回戦bブロック、チームブレッドのみなさん、早く会場に来てください]
俺たちを呼ぶ二回目の放送があしどりを早くした。
「なんで俺がチーム名になってんだ?」
「ふっふ、あのときブレッド、聞いてなかったからね」
「聞かなかったお前がわりぃなァ」
なんてことだ。俺はいったん足を止めてうつろな苦笑いを浮かべる。
「もう、ブレッド止まらないの、そんなこと言ってたら本当に失格になっちゃうわよ」
「なっ!」
そうだった・・・。俺たち今さっきまで迷子になっていたんだ。
そして、今、やっとの思いで戦闘場にたどり着いた。俺は膝に手を置く。
「もう、こんなんでつかれてどうするのよ」
「お前、狩りのときあんなにはやかったのになァ・・・」
「狩りはあんまり距離がないからだ」
フィルとマナは苦笑いをもらす。
「何を話してんだ?」
どこからか聞いたことがない声が飛んできた。
俺ははっとしたようにあたりに視線を配る。
「おい!なにを探してんだ?俺たちはここだぞ」
「おっ、ここ戦闘場か・・・じゃ、お前らもしかして・・・・対戦相手か!」
俺の頭をマナが叩く。
[あの、もう対戦を始めてもいいでしょうか?」
「おう、あんたらももういいだろ、大会全体のじかんが遅れてんだ。早く始めるぞ」
そういったのは対戦相手5人のうちのまんなか、紫色の髪を持ったロック系男。
「おう、俺たちもいいぞォ」
我らがデブ、フィルが開戦の火ぶたを切った。
[それでは開始五秒前」
アナウンスと観客のカウントダウンが始まる
[4・3・2・1・・ファイト]
「どんな格ゲーだ」
開始と同時俺の突っ込みがうなった。次の瞬間、俺の目の前に現れたのは両手木剣を振り上げたおっさん。俺は一瞬戸惑うも好きだらけの腹に右手に持った木剣を叩きつけた。するとおっさんは盛大に飛んでいき5メートルほど後ろで退く。刹那おっさんは[サウスカさん敗北]という女性のアナウンスと同時光に包まれて消滅した。いや、転送されたのだ。
さすがに俺も非現実には慣れてきた。
「さすがブレッド、一瞬だったなァ」
そういいながら俺に白い歯を向けたフィルは盾を相手にぶつけ何気に吹き飛ばしている。
その一方でマナは左の剣振り下ろされる長槍を抑え、右の剣で相手わきにクリーンヒットを加えさせていた。刹那、長槍の男は光に包まれて転送された。彼女が戦っているところを俺は初めて見たが漏れる言葉は一つ・・・
「すげぇ~」
の一言。俺は再び気合を入れなおし、唖然としている敵のリーダに向かって突っ込んだ。
そして、相手に向かって剣を振るう。
すさまじいまでの轟音と同時、紫髪の男はばたりと地面に倒れこんだ。空中を回る切れた木剣が地面に突き刺る。
[試合終了開始15秒・・・チームブレッドの勝利!」
歓声が上がった。と、次の瞬間、目の前が暗転し再び視界に光が入ったとき、そこは闘技場の待合室だった。隣にはフィルもマナもいる。
「お~い、みんな!」
前方から声がした。走ってきたパルムは俺たちの前で停止し浮かべたのは満面の笑み。
「さすがみんな。何気に注目されてったチーム邪気眼をあんなかんたんに倒すなんて」
「えっ、あいつらのチームって邪気眼っていうのか!」
なんだそれ、この時間軸にはすでに中二病が存在していたとは・・・危険だ。これからの国民がだんだんと腐っていってしま・・・
「実はみんなが最速タイムというわけではないんだよね。本当は死神っていうチームの
20秒が最速らしんだよ」
俺の思考を停止させたのはパルムのそんな一言だった。
「ねぇ、そんなのって不可能だと思うけど、
だって相手の攻撃を防いでいたらあっという間に20秒なんてたっちゃうし・・・」
「いや、可能だ。俺みたいに武器破壊を成功させればの話だが・・・」
「でもよォ、ブレッド以外に魂法剣技なしで
武器破壊なんてできる奴、俺は知らないぞォ」
確かにそうだ。俺だってそんな奴がいるなんて認めたくない。俺より強いなんて一体何者なんだ?
「それが・・・魂法剣技を使ったんだ」
「嘘だろォ」
おい、嘘だろ。金属の剣の場合は魂法剣技を打ち込めるが木剣では打てないはずだ。一体どうやって?
「でも、それってルール違反になるんじゃ?」
俺は首を縦に振る。
「いや、悔しいけどならないみたいだよ。僕も最初はそう思ってもう一度調べて見たけど剣の技だから平気みたい」
なんだ、そうなのかって落ち着いてる場合じゃねぇぞこりゃ!
「おいおい、ブレッドは魂法剣技にかえねぇんだろォ」
俺はちいさくうなずく。
「それじゃ、私たちはその死神っていうチーム勝つのはなかなか難しくなった、てことなの?」
「あぁ。実質不可能にちかい。魂法剣技を使えば剣そのものの質量が増加して速度も圧倒的に増すから勝ち目がない」
あたりの空気がやたら湿って感じた。
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