日が沈んだ世界 14

「これより、開会式の最後となります若王子からの激励の言葉をいただこうと思います」

最後ォ。はやすぎるだろ、陣営もっと働け、日本じゃありえないぞ。

次の瞬間。俺の思考は凍り付くことになった。

アナウンスと同時、中心に置かれていた台の上からけむりがあがった。緊迫した空気が揺れ始める。だんだんと薄れていく煙の中、姿を現したのは低い身長、長い白髭、しわしわの震えた手・・・あれは、アレはぁ・・・

「ただの爺さんじゃねぇかァ!」

たくさんの視線が俺に向けられた。しかし、俺の口は止まらない。

「何が若王子だよ!、ただのよぼよぼのじじぃじゃねぇか。そんなのが若かったらとっくに人類絶滅してんだろォ、平均年齢100歳上回るだろ!」

[若王子は体調が悪いようなので・・・]

なんだ、あれは若王子じゃなくて代理なのか、なんか恥ずかしいことしちまったな。

[少々疲れて見えますが彼は20歳です]

「なん・・・だと」

俺の頬を3粒の汗が流れた。

「結局じじぃが若王子なんじゃねぇかァ。恥ずかしがって損したわァ!体調が悪いと老人化ってとんなキャラだよ。キャラたちすぎだろ」

俺の大声に老人・・いや、若王子は耐久値が尽きたのか次の瞬間王子は口から真っ赤な血を流し台の上に倒れていった。

「おいィ!王子ィ。どんだけ体調悪かったんだ。あんまりすんじゃねぇよ」

なぜか同情を始める俺に再びたくさんの視線が集められる。

[あんしんしてください。彼はきっと我々が助けます。みなさんお静かに」

「いや、だれも騒いでないんだが・・・っつうか本当に王子なのか?やたらと人気がないじゃないか」

「そうだな・・・あんましカルックスの王族たちは住民に好かれてなくてなァ。昔からこんな感じだァ」

隣でフィルの声がした。なるほど、それでこんなに大事件が目の前で起きているというのにみんな冷たい視線を俺に向けているわけだ。

俺はその視線に少し照れながら開会式が終わるのを静かに待ったのだった。

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