日が沈んだ世界 16
[チームブレッドとチーム死神のみなさん。
闘技場中心 対戦上に来てください。まもなく決勝戦を開始いたします」
クリスタルからながれる電子音にも似たアナウンス。俺は意を決して立ち上がった。死神の誰かが殺人集団なのだとしたらその殺人方法はおそらく毒だ。剣のさきに強力などくを塗っておくことによって、ちょっとした切りきずでも全身に毒が回るようにしているのだろう。つまり、たった少しの失敗も命取りになるということだ。そんな奴に勝つにはやはり武器破壊を狙うしかないのだろうか・・・。
「落ち着きなさい、ブレッド。きっと大丈夫。
だって、私たちだってついているのだから」
「おうゥ。そうだぞブレッドォ。3人でかかれば大丈夫だってェっ点だろォ、万が一の時は俺がこの盾で守ってやるからよォ」
なぜか説得力がぜろに聞こえるのは俺だけだろうか。
「そもそも、フィルさんは守ることしかできないから・・」
なるほど、そういうことか、俺はあっさり納得した。のんきな会話を続けて数十秒、俺たちの耳にはすさまじい歓声が鳴り響いていた。
そして、目の前に現れる黒いフードの男。それを囲むようにして立つ大柄なフード。間違いない、あの中心に立つのが殺人犯だ。だってなんか悪そうだもん!
「準備はいいかァ、ブレッド、マナ」
「おう!」「はい!」
同時に声が上がった。空気を包み込む緊張感。そして俺たちはそれぞれ抜刀した。
[試合開始まで残り5秒・3・2・1・試合開始!」
アナウンスの言葉と同時、俺は風を切るように突っ込んだ。試合が長引けばそれだけ相手は魂法剣技を打ち込んでくるだろう。それだけは何とか避けなければ。そうおもっての行動だったが、中心の男に飛んでいくはずの剣は目の前でクロスされた長槍によって防がれた。空気を揺らす音に加え、腕につたっわってくる振動。俺は思わず全身をこわばらせた。
「おい、ブレッド!下がれェあぶねぇぞォ」
そんな声は俺の耳まで届かなかった。視界のど真ん中に映り込んだ黒フードの男はその隙間から妙な笑みを浮かべている。にている・・・
、俺とセフを襲ったあいつによく似ている・・。
次の瞬間。俺の頭上に、高速で降ってくる片手剣が見えた。
「なにしてんっだァ!」
そういいながらフィルは俺のことを吹き飛ばした。そちらを見てみれば盾でその剣を受け止めている。
「何やってんだァ。本気で戦えェ!」
フィルは剣の持ち主黒フードを吹き飛ばしながらそう言った。確かに正しい。彼の言っている言葉には何一つ間違ったことはない。それがわかっていても俺の体はなかなか動こうとしなかった。とそのとき、しゃがみ込んだ俺の横を疾風が通り過ぎる。マナが護衛のフードに突っ込んでいったのだ。圧倒的に劣る体格なのにも関わらずその両手の剣で大柄なフードを圧倒している。
「立って・・・立ってよブレッド!」
心にまで届いた涙声に俺は両手を震わせた。
彼女も怖いんだ。あのフードに殺されるのが・・・。
「ふん、そりゃ、そうだよな・・・。みんな怖いんじゃないか・・・・。だったら俺が守らなくてどうするって話だよな」
漏れる声と同時俺は前を見た。気が付けば、フィルもマナを俺をちらちら見ている。今にもつばぜり合いで負けそうになっているのに・・・。そして二人が作ってくれた隙間が、俺の角度から一直線にあの黒フードが見えるようになっていた。こみあげてくる何かの気持ちに俺は笑みを作り一気に距離を詰める。すっとんでいく脚。それについていくように動く右手が心地よく感じる。フード男との距離が
一気に縮まったとき、俺は右手の剣を叩き落とした。
いつもよりもずっと軽くて、ずっと柔らかくて、ずっと茶色いそんな木剣・・・
「でも、その剣をぶったぎるのには十分だ!」
「ガッシャーン」
しかし、残念ながら俺の初撃は鉄を管ことはできなかったらしい。フードの中の口元が再びにやけた。そして、俺の口元。予想通りだった。さすがの俺だったまさか金属の武器を破壊できるなんて全く思っていない。
俺は右側に倒れるように傾いた。その反動を利用した相手の横に回り込む。次の瞬間、
俺の髪を木剣似の鉄の剣が切り裂いた。すさまじい突風が頭を襲う。これは・・・魂法を売り終わった後の突風。いまだ。内心叫んだ。
俺はがら空きになったフードの腹に、木剣を叩き込む。
「セァー!」
咆哮と同時、数メートル先にある壁に、壮大にぶつかる黒フード。俺が棒立ちになって黒フードが光に包まれていくのを見ているとまたまた両方の真横で疾風が吹いた。今度は大柄のフードが二人、壁に激突して光に包まれ始める。俺は苦笑いを漏らした。そしてかわすハイタッチ。
[決勝戦、チームブレッド・・・・勝利!]
歓声が鳴り響いた。
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