日が沈んだ世界 8
果たして1ッ分がたっただろうか?俺はフィルの家の扉を右手で力任せにこじ開けた。中ではまるで何事なかったかのようにフィルはソファーの後ろに置かれたベッドに寝、パルムは二階で寝ているようだった。しかし、
「たのむ!この子を助けてくれ!」
俺の一言にフィルは一瞬で起き上がりパルムは二階から転がり落ちてきた。
「ど、どうしたァ!」
フィルはそう言いながら俺に突っ込んできた。
「話はあとでいいだろ。たのむ。パルム、こいつに回復系の魂法を使ってくれ!」
「うん。その子をあのフィルの使っているベッドに寝せてくれ」
俺はパルムの言う通りにベッドの上にそっと乗せる。次の瞬間セフの体を緑色の波が包み込んだ。すると、さっきまでながれていた出血が一瞬にしてなくなる。
「ブレッド、魂法だけだと体に受けた肉体的ダメージは消えても痛覚は消えないんだ。だから、今すぐ傷薬お勝ってきてくれないか」
「わかった!」
パルムの頼みに俺は勢いよく応じ、走ってくすりを買いに行った。
あれから3時間が経過し外では地平線の彼方から徐々に太陽が昇り始めていた。明かりに照らされていく石造りの街並みと合わせて眠っているセフの顔はどんどん安らかなになっていく。フィルが言うにはそれほど致命的な傷を追っていたわけではないらしいが全身に毒が周り倒れこんだらしい。
「実はな・・・こいつは・・・俺の妹なんだ」
「なにぃ!」
突然の衝撃発言に中心に囲んだ丸形テーブルが細かく振動する。
「昔、俺は・・・俺たち4人家族は「スゴン」
っつうここよりももっと大きな町に住んでたんだけどよォ。その町はハバネロに吹き飛ばされちまって・・・その時に俺たちをかまった父さんと母さんはその事件に巻き込まれて死んじまったんだ・・・。だから、俺にとってあいつは・・・セフは世界にたった一人の家族なんだよ。だから・・・ありがとよぉ。あいつのこと、守ってくれて・・・」
えらく重たく感じる言葉に俺は思わずうつむいてしまう。
「いや、俺はなにもできなかった。俺がもっと強ければ、あの時・・・セフを救ってやることだってできたはずなんだ。それなのに・・・
それだから、お前が俺に礼を言う必要はなんてないんだ」
「そんなことない。あの時、お前がいなかったら・・・その人物にセフはきっと殺されていただろう・・・。でも、今あいつは生きてる。
それだけは確かな現実なんだからな・・・」
そうか・・・。俺は今まで命の重さをあまり知っていなかったのかもしれないだからこそ、俺はあの時何もできなかったんだ。フィルは今まで大切なものを二つも失っているのにあいつはまだ何かを守ろうとしている。失う怖さからにげていなんだ・・・。
「お前は・・・強いな・・・」
「そうでもないさ」
フィルから出された声は小刻みに震えているように感じられた。俺は彼の重荷知らない。
だから、代わってやることはできないが、なんとなく・・・失う怖さを俺は知っている気がした。
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