日が沈んだ世界 7
俺だけで走れば大体3分ほどで倒しきることができるが今は二人組・・・、しかも相手は女の子ということもあってか、ついついペースを合わせてしまいかなり遅れてしまっている。
それに・・・。
「もう、本当にあなたは何なんですかぁ~。そんなに格好つけて名乗りもしないで・・・」
「はいはい、名乗ればいいんだろ、俺はブレッドだァ」
さっきからずっと仲の悪そうな喧嘩を続けている。最近の若者はこれだから困るんだ。まぁ、たぶん年齢は俺と同じく位だと思うが。
「でぇ、あとどれくらいでつくんですかぁ~」
「シィ~」
俺は何かが・・・針が飛んでくる音に気が付きさっと声を黙らせた。一体どこから。次の瞬間俺の視界に予測道理の針が隣の木から飛ばされてきた。俺はそれを空中で切り捨てる。
「誰だ!」
声に反応して木の幹が揺れ始める。出てきたのはまっくろなフードをかぶった少し小柄な男だった。両手は大きなフードの中に入り込み何を武器として持っているのかは見当つかない。
「お前かァ・・・一体何が目的だ?」
すると男は目までかぶったフードの隙間から
見える口元に妙な笑みを浮かべて俺に突進を仕掛けてきた。
「んぅ」
俺は奇怪な声を漏らして剣をいつもの構えへと持っていく。次の瞬間どこから出されたのかオレンジ色の波をまとわりつかせたダガーが俺の眼前に迫っていた。夜風とは違う鋭い風に俺は多少の圧迫感を感じながら体限界までひねってその一撃を見事にかわして見せるそしてがら空きになった腹に多少ためらいながらも一撃叩き込んだ。しかし、手に伝わってきた感覚はどう考えても木を桐田襲たようにしか感じられなかったためもういちど剣を叩きつけた場所を凝視する。本来ならここでたくさんの血が空中をはねているはずなのだが空中に試算しているのは人間の鮮血でもモンスターの黒煙でもなく細かく切り刻まれた木くずであった。こんなことありえるはずがないとおもい前方を見やる。そこにはなんとさっきのフードの男が木の真横に平然と立っているではないか。まさか、さっき倒したあいつは気のせいだったというのだろうか?いや、そんなはずはない。さっきは確かに奴を切った。ならば・・・、あいつは俺に幻覚を見せていたとでもいのだろうか?俺は初めて見た怪奇現象に唖然としながらなんとか平然を保とうと周囲を見渡す。そこには立っていたはずの木がすでに消滅した。俺の隣を見ればいたるところで切れている木がみごとに倒れている。つまり、奴は俺に対して木と人を見間違える魂法を使ったということだ。
しかし、そんなことってあるのだろうか、いや、あってもおかしくないではないか今までさんざん物理法則を裏切ってきたんだ生物学くらいひっくり返すのは簡単だろう。俺は思わず口元に苦笑いを漏らし何事もなかったかのようにそこにたたずむフード男を見た。気づけば奴の手にはすでに小さな針が20本ほど発射準備されている。俺はそれを見て全身から力が抜けていくのを感じた。こんなの勝てるはずがないではないかぁ・・・。俺は全身のちからを抜いてただ立ち尽くした。次の瞬間空中に浮かべられた20もの針が空気を揺らして飛んでくるのが見えた。あぁ~俺はもうだめだ。ここで死ぬ運命だったのかもしれない。きっとあの針には毒が塗られているだろう。俺だって人を抹消面から戦闘で殺すならそうする。
いや、待てよォ。今死んだら後ろにいるはずセフはどうなるんだ・・・。
だめだ、今死んではいけない!しかし、気が付くのが遅すぎた。すでに俺に向かって進んでいるたくさんの針はまっすぐに俺の元まで達しようとしていたその時・・・目の前に短い茶髪の女の子・・・セフが飛び込んできた。
だめだ・・・今飛び込めばお前は・・・!俺の後ろに下がれ!そう叫ぼうとした。しかし、声は一切喉を超えようとしなかった。そして、ゆっくりと流れていく時間の中力なく伸びていく俺の手はセフに届くことはなく俺の眼球には彼女の体を次々に刺していくたくさんの針が映った。全身によみがえった力が再びなくなっていくのを感じる。地面に弱弱しく倒れていった彼女を俺はこわばった頭で必死にみると微弱ではあるが月明かりに照らされ鈍く光る鮮血がどんどん広がっていっている。俺はとっさにしゃがみ込み震える手で沿ったセフを背中に回しおぶった。恐ろしく軽いその少女はいまだに出血を続けている。俺は何かを失おうとしているのかもしれない。この世界で何かを失おうとしているのかもしれない・・・。そんな恐怖が俺の奥底にあるきっと理性を制御しているところがはじけ飛ぶ音がした。
「ウワァァ!、お前・・・お前は許さない!」
俺のものとは思えないほどに低くこぼれた絶叫は草原中に響き渡った。しかし、それでもなおあいつは妙な笑みを浮かべたままでいる。俺は背中にしょったセフを気にせずただ眼前にいる「敵」を殺すためだけに右手の剣に魂法剣技を浮かべた。そして、敵の足元へと剣を振るう。俺の全力は秒速50メートルだ。そんな速度、波の人間に見えるはずもなくあっさりと敵の足はえぐられ地面に倒れていく。
俺はから少しずれたセフをもう一度しょい直し町の方向に走り始めた。いつもならゼイゼイ持って10秒程度の喘息ダッシュだがなぜか今だけは無限に走っていられるような感じがした。
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