日が沈んだ世界 6
腕に抱えられた300万エキュという大金を俺は三人に分配し思わず漏れる笑みを浮かべないようきょうつけながらフィルの家へと向かった。彼の馬鹿だけど心やさしい人格のおかげで今日はその家に泊めてもらえることになったのだ。
「さぁ、どうぞどうぞここが俺の家だァ」
そういって開けられた扉に足を踏み入れる。
真ん中に置かれた丸形テーブルにその奥にある真っ白いキッチン。そしてテーブルより前に置かれた緑色のソファーが地味に清潔感を出している。
「すいません、おじゃましちゃって」
パルムの行儀良さから出される女子力には正直たまにかわいいと思ってしまうことがあるんだが・・・、本当に彼は男なのか?よく見たらその茶色い髪を長くのばせば、完全に女の子に見える気がするんだが・・・いや、ないか。
「ぜんぜん大丈夫だァ。いつもなら妹がいるんだが今日はちょっと魂法学校の試験で隣まちまで行っちまってるからな。ちょうど寂しいと思っていたころだ」
「そうか、それでもありがとな。で、その妹はいつ帰ってくるんだ?」
「えっと・・・たぶんだが明日の朝ってとこじゃないか?」
まさかの疑問形・・・。
「でも・・それって正直危険じゃないの?」
パルムのもっともな言葉に俺も大きく首を縦に振った。
「いや、そうでもないぜェ。なぜならこの町とその隣町の間には安全に剣士が見回ってるからな」
なるほどな。見回り的な依頼があるんだろう。
「そうか、それじゃあ安心だな。そろそろはらも減ってきたことだし飯にしようぜ」
俺の一言でフィルは立ち上がり嬉しそうに扉に向かった。
「よっし。今日はせっかくだし少し高いレストランにでも行くか」
不気味な満月の光がびっしりと生えた芝生を照らし出す中、俺は右手に握っホープセーバー一本でかけていた。夜風が当たるとなかなか涼しいものだが隣にパルムがいないとフラッシュがなくてかなり暗い。もうだいぶ慣れてはいるが正直やりずらかった。
俺は現在、魂法剣技を70の連撃まで続けて使うことができる。どうやらこの世界の魂法は使いすぎると頭痛が発生しさらに使いすぎると失神してしまうようだ。この間いつものように狩りをしていたら突然倒れた人間がいたから俺はそのことに気が付いた。それにしてもよくできた世界だ。俺は内心で感心しながら前方に見えた小さな明かりに気が付き停止する。その明かりは俺のことをもう見つけているはずだがなかなか攻撃しようとしてこない。ということはあれは人のだすフラッシュなのだろうか?俺はほっと一息し右手の剣を背中の鞘に音を立てて納めた。明かりは接近するにつれてだんだんとフラッシュを使用している本人を照らし出す。短い茶髪を揺らしクルクルと丸い目で俺を見てくるその少女はもう夜になってて敵もたくさんいるはずなのに剣も持たずただ手にはめた手袋だけでこの地をゆっくりと歩いていた。
「なぁ、君、そこでいったい何してんだ?」
こんなときどうせ俺のコミュニケーション能力では話が長続きしないので大体話しかけたりなどしないのだがこのとき俺は不覚ながらその小さなまなざしに愛着間を持ってしまったらしい。俺に声をかけられぴくっと全身を揺らしたその少女は俺の体を下から上に徐々に見ていった。
「何ですかぁ~。もしかして告白!うわぁ~
キッモ!」
思わず苦笑いを漏らす。なんだよあいつ。助けてやろうとしたのに・・・・なんか理不尽じゃないかァ。俺はかっこつけた割にあっさりとふられ・・・・いや、告白してないからな・・うん、たぶん・・・。
「んっン!」
この妙な空気を変化させようと一つ咳ばらいを入れてみた。
「で、なにしてんだ?。もう夜の三時をとっくに回ってると思うけど・・・」
「あっ、いや・・・私、隣町からの帰り道で迷子になっちゃタンですぅよぉ~」
ほぉ~なるほど、それであのフィルが言っていた安全ルートからはぐれてしまったわけか。
そして、このイケメン最強の剣士・・・この俺ェに道案内をしてくれというわけかァ。うん、さっきの罵倒はきっと冗談だな、うん、そうに違いない。
「あのぉ~別に私、あなたのことイケメンとか思ってないですからねぇ。それにさっき言ったことも全部本音なんで・・・勘違いしないしないでください」
「グハっ!」
何かがはじける音がした。なんだと、なぜだ・・・なぜわかった。まさかァ、あいつ俺の考えていることが読めるのかァ?あまりの驚愕に俺は顔面蒼白してしまう。
「別にあなたの考えてることとか読めるわけじゃないですから」
「な、なら一体どうやったんだ」
すると少女はあきれたようにため息を吐いた。
「適当に言ったにきまってるじゃないですかぁ。あんまりあなたの反応が面白かったので
ちょっとからかっただけですよぉ~。まさか本気であんなこと思ってたんですか?」
正直安心した。今までさんざんこの世界は物理法則を無視してきたんだからまさか今度はエスパーか
ァ・・・なんて思いこんでしまったからだ。なんか恥ずかしィ。
「ところでお前は迷子になったんだってなぁ~。別にかわいそうなお前を俺は助ける義理も義務もないしこのまま放置してもいいんだけどなァ~」
「私を呼ぶときは「お前」じゃなくてちゃんとセフと呼んでください、それにぃ~それは困りますゥ~。別にあなたみたいなのに頼みたくはないですけど町まで案内してください」
ぺこりと頭を下げた少女に俺は妙に上から目線化で「よろしい」と一言いうと少女を後ろに連れて歩き始めた。
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