日が沈んだ世界 4

壁一面に張られた紙に思わず頭を抱えてしまう。ここはカルックスの隅にあるかなり大きめな建物、依頼屋だ。


「へぇ~。本当にいろいろあるんだね。猫探しってこれ剣士の仕事なわけ」

「そんなわけないだろぉ。本当に多いなこの中から一つだけ依頼を決めるって結構難しくないか」

「そうでもないぞォ。意外とすぐ見つかるもんだ」


そんなものだろうか?と次の瞬間目の前にいちまいの紙が突き出された。


「なぁブレッド、こんなのいいんじゃないのか」


そういいながら紙を突き出してきたのはパルム。さすがの行動力でもう依頼を見つけたというのだろうか?


「なになに・・・」


紙に書かれた洞窟探検という文字を凝視する。

そして、俺はその下に書かれたおそらく報酬だと思われる数字を見てすうほ後ろに退いた。


「3・・300万エキュ・・・」


なんだそれは、洞窟探索ってかなり簡単な仕事なのではないのか。まさか、このクエストだけそんなに報酬が高いとかそんなことがあるのだろうか?


「おぉ~、マジかァ!俺も洞窟探索でこんなに高いのは初めて見たなァ~」


やっぱりそうか。一体どんなことをすれば300万もの大金をたった一回の仕事で稼げるんだ?おまわず全身を鳥肌が走る。


「よしッ、その依頼にしよう」


フィルはそういうとその紙をカウンターに持っていきクエストを受注した。





「なぁ~。お前のそのフラッシュさぁ~もっと明るくできないのか?」

「しかたないなぁ~。これ、連続でいくつも動かすの結構大変なんだよ」


パルムはそう言いながら空中に浮かんだ明かりをさらに2倍近くまで増やした。魂法独特の明かりが洞窟のコケに反射して先を明るく照らしていく。その先に映ったものは暗闇でも大きな岩でもなくゴブリン一匹だった。どうやら洞窟探索とは人が通り安くなるように

中に住むモンスターたちをせん滅しろという内容だけ聞けばさほど難しくない単純な仕事らしいのだが、どうやらここのゴブリンたちは何者かにより調教されているようであの草原にいるゴブリンたちとは比べ物にならないほどに強い。


「まぁ、そんなちょっとした強さ、俺には何の意味もないけどな」


小さくつぶやき洞窟のごつごつした道を思いっきりけった。ゴブリンは右の斧を両手で構え俺の剣を受け止める気のようだが俺はそんなことお構いなしに斧によって守られた腹に剣をぶちあてる。そして、ゴブリンの持った斧は見事に切り裂かれた。生きおいそのままにゴブリンの腹を最後まで貫く。俺は後ろで黒煙が巻き上がるのを確認しながらなにもいわずにぼっと見ていたパルムとフィルに視線を向けた。


「本当におめぇはつええよなァ」

「当たり前だよ。相手はブレッドだよ」


そんな会話が俺の耳に飛び込んできた。やめろよぉ~、照れるだろぉ~と小学生のように絡みたくなってくる。


「さっさと先行こうぜ」


その気持ちを抑え込み俺はクールに前を向いた。ん~、クールな俺ってなかなかかっこいいかもなぁ。などと自画自賛しながらにぎやかなに洞窟の中を歩いていく。

 しばらく進むとだんだんと洞窟の幅が広くなっていきなぜか先が明るくなっていった。


「出口か?」


そんな疑問形を浮かべたのはフィル。


「いや、違う・・・。あれは・・・フラッシュ?」

「人間のものじゃないよ。人のものにしてはやたらと色が暗すぎる」


冷静なパルムの言う通りあれはモンスターのものだ。


「なぁ、フィル、パルム、戦闘準備だ」


俺の合図とともにパルムは両手を前に出しフィルは弓矢を構え始めた。そのがしゃりという金属音を聞いたからか明かりが漏れるところからたくさんのゴブリンが出現しだす。そして全員が構え始めた。しかし、ゴブリンたちの応戦はむなしく終わり10分後にはあたりを黒煙が埋め尽くしていた。

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