第6話


 アメリカ。


 Aは初めてその言葉を聞いたように丁寧に呟いた。

 「アメリカ、って言っても、広いよね。」

 「カリフォルニア州。」

 「カリフォルニア。」


 Aはじっと空を見つめていた。西海岸のまっすぐな道やきれいな海辺、サンディエゴやディズニーに思いを馳せるというよりは、面積や人口、距離や位置を考えているような顔をしていた。

 ふとAは急に顔をこちらに向けた。


 「ねえ。」


 ピン、と来た。珍しくまっすぐとした視線と変に力の入った指先。


 「付き合ってほしい。」


 やっぱり。


 『向き合ってみたら。』

 そういう割に興味なさげな友人の顔が思い浮かぶ。

 

 アタシハイイトオモウワヨ。

 ライガッキカラダイジョウブデスカラ。

 ツキアッテホシイ。


 私にはあなたたちの言葉が届かない。




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