主人公は僕じゃない。

夜城 鴉

第1話 このままでいいや

ギラギラと光り輝く校庭で運動部が頑張る中。校舎内で二人の男女が勉強をしながら話していた。

「なぁなぁ、蒼」

「何ですか?」

「僕、蒼のことが好きなんだよね(love)」

「……いきなり何ですか?まあ、私も好きですけど(like)」

「え⁉マジで!じゃあ、付き合ってください!(告白)」

「いいですよ(買い物的な)」

「ヤッター!今日はいい日だ(告白成功で)」

「…そうですね。今日はいい日ですね(天気が)」

外の青い空を見ながら呟いた。

(本当にいい天気ですね。外歩いたら倒れそうですね)

ギラギラと日差しが強い。

気温は30度以上はあるだろう。これが最近の日本の夏。暑そうだ。

「で、どこに行くのですか?(買い物に?)」

「え⁉今から?(デートに⁉)」

「決めてなかったのですか?」

「ちょ、ちょっとまって。今から決めるから」

「もう、これからは決めてから言ってください」

黒瀧は急いでどこに行くか慌てて考え始め、蒼はその間に勉強へと戻った。

そんな二人を見ていて思わず白鉄は呟いてしまった。

「………………あれ、話が食い違ってるよね」

「ん?……まあ、いいんじゃないの?いつもの事だし」

「いやいや、いつものこと以上だよ。異常だよ。あれは」

「まあ、確かにそうかもしれないけどあの二人はあれでいいのよ」

本当にあれでいいのだろうか?

片っ方はlove。もう片方はlike。だろ?多分

話に収集をつけないと今度の二人のためにはならないと思う。

「それよりも…もしかしてだと思うけど聞いてたわよね? 私の話を?」

「……………………ん?」

ヅガッ!ギギギギギッ!

「痛い痛い痛い痛い!ちょっとマジで痛いから!やめて!」

アイアンクローをキメながらそのまま上へ上へを持ち上げる。

立てばいい話なのだが頭が痛くてそこまで考えられない。

たとえ頭を使えたとしても紅は逃がさないだろう。

何かしらのことをして行く手を阻むだろう。

「言うことがあるのじゃないかしら?」

「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい!」

ガダン!

「今回はこれで許してあげる」

痛みから解放された白鉄だが、未だに痛そうだ。

「ねぇ犬?もう一度誓いの言葉を言って貰おうかしら?」

「え?何で?」

コキッ

「私は紅様の犬であり。時には忠犬のように待ち。時には番犬のように守り。時に愛犬のように遊び相手になる。絶対服従の犬であります!」

「うんうん、それでよろしい」

両手を白鉄の顔を挟み。おでことおでこをくっつける。

「ちゃんと最後まで守るのよ」

ドキドキする。少し動けば唇が当たってしまう。このままキスをしたいが

(はぁ~ぁ。最近扱いがひどくなってないか。今のも二重か三重の意味があるだろ)

そんな場合ではないと思い、白鉄は意識を戻し、紅の眼を見る。

赤く赤く光る。紅の眼に吸い込まれそうになる。

(でも、やっぱり俺はこの人の事が好きなんだな)

付き合い初めて約10年。小学校の時に告白したら、思いの外OKをもらった。だが、条件付きでさっきの言葉を守らなければいけなかった。小学生の俺は分からないままOKをしてしまった。その時に紅が蒼を俺が黒瀧を紹介し、俺たちは仲良し4人組になった。どっかに行くときはいつも一緒だった。高校も同じ場所を選び、今日の今日まで一緒に生きてきた。

そして今日は夏休みまっただ中、蒼の案で学校に宿題をやりに来たのだが……。

(あれはもう遊びに行く気満々だな)

ガッ!

……あれ、前が暗k

ヅガッ!

「痛だだだだだ!」

「ふ~ん。私の事より蒼の方がよかったのかな?💢」

「すみませんすみませんすみませんでしたぁ!」

今日も校庭に俺の声が響いた

((ほんと仲がいいよな……))




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