奇妙な学園生活
第5話 秘密がバレる?
「あれは……何だったんだろう?」
(さっきの夢の話か……)
シュウトとユーイチは登校中に話をしていた。
「そうそう、ユーイチが服を着ててさ」
シュウトはそう言って今朝見た夢の話を身ぶり手ぶりをつけて説明する。その夢を話を聞きながらユーイチはポツリと呟いた。
(似た夢を見ていた気がする……)
「マジで?」
(起きたら忘れたけど)
「なんだよそれぇ~」
この言葉を聞いてシュウトはがっかりする。ユーイチは自分の心の中にいるのだから、もしかしたら同じ夢を見ているのかと思っていたのに。
そして次に何か話そうとした所でシュウトは学校についてしまったため、彼は話すのをやめた。学校でキモい独り言野郎と言う噂を立てられては困るためだ。
「ユーイチ、学校に着いたからもう話しかけないでね」
(ああ、分かった)
その決まりを守ってユーイチも口をつぐむ。おかげで午前中は何とか無事にやり過ごす事が出来た。
ユーイチはその間シュウトの学校生活を観察していた。彼の世界にも学校はあって、その様子はシュウトの学校生活と左程変わらない。
なのでユーイチは少し懐かしい気持ちでこの学校生活を観察していた。
(ああ……昔を思い出すな……)
ちなみにユーイチ、こう見えて人間年齢で言う所の30代前半である。その年齢で政府に危険視される程の組織を作ってるんだからすごいよね。
ただ、その勢いを危険視されて今は追われる身になってしまったのだけど(汗)。
給食を食べ終えてシュウトは人のいない図書室へ……。そこで中学生新聞を読むのが彼の日課だった。
と言っても新聞記事等より、連載の漫画がお目当てだったりするんだけど。
パラッ
中学生新聞の記事は中学生用に編集されている為、少し大人びていたいシュウトには全体的にヌルい内容だった。
ただ、文章を読むのは好きなので結局全部の記事を読んでしまう。シュウトの心の中にいるユーイチも同じようにその記事を読んでいた。
(なるほど……色々問題が山積みなんだな……)
記事を読んでいたユーイチが声を漏らす。
「ばっ!声は出さないで……」
静かな図書室にシュウトの声だけが響く。そこでシュウトもはっと気付く。心の中にユーイチがいる時、彼の声はシュウトにしか聞こえないと言う事に。
シュウトはすぐに周りを見渡すものの、図書室には彼以外は図書委員だけ……。どうやら彼の奇行はバレてはいないようだった。
この様子を見てシュウトは思わず胸をなでおろした。
パラ……。
次のページをめくるとお目当ての漫画が載っていた。途中から読むユーイチにとっては理解が難しかったが、シュウトが楽しそうにしているのでその様子を観察するだけで満足していた。
「次は普通の新聞も読むかな……」
中学生新聞を読み終えたユーイチは普通の新聞にも目を通した。彼は本こそ読まないけれど、結構な活字中毒者でもあった。
いや、ただ新聞を読むのが好きなだけなのかも知れない。好奇心の赴くままにパラパラとシュウトは適当に新聞のページをめくる。
流石に一般新聞は隅から隅まで読むと時間がかかるので、興味を持った記事だけに目を通していた。
「あっ!」
シュウトが飛ばし飛ばし記事を読んでいると、地方面の一部の記事に目が止まった。それはあの再開発工事に関する記事だ。
記事によると、ある日を境に度々不思議な現象が起こっていると書かれていた。
「原因は不明だって……。これって……」
(間違いない、ゲートが開放されてからの事だ……)
「もしかして……ユーイチ以外にもこっちの世界に……」
(可能性は否定出来ない……。こちらに私が来ている以上……)
「でもユーイチが俺の心の中にいる内は問題ないんだよね?」
(そのはずだ……)
シュウトとユーイチは一応怪しまれないようにこそこそと話していた。
しかし図書委員の近藤由香はその様子をじっくりと観察していた。やがて昼休みの時間が終わりに近付いたのでシュウトは教室に戻っていった。
「今日の陣内君、何か様子がおかしかったな……」
由香はそのシュウトの様子を見て彼に少し興味を持っていた。シュウトと同じクラスの由香はショートカットの地味なメガネ女子で見た目からしてザ・図書委員。
昼休みにいつも図書室に現れるシュウトをいつの間にか気になる存在としてマークしていたのだ。
そんなこんなで午後の授業も終わり放課後になった。帰宅部員のシュウトは授業が終わるとまっすぐ家に帰っていた。
群れるのが苦手なシュウトは、サッカー部をやめてから特に仲の良い友達も作らずにひとりで下校する事が多かった。
今日は好きな漫画雑誌の発売日で、自然と足は立ち読みの出来るコンビニに向かっていた。
コンビニで好きな漫画を堪能して店を出ると、偶然にも下校途中の由香とばったり会ってしまった。ちなみに由香は文芸部に所属している。
シュウトと由香は特に仲がいいと言う訳でもなかったが、会えば挨拶くらいはするくらいの関係ではあった。
「やあ!」
「あ……」
まさか声を掛けられると思ってなかったので彼女は少し驚いていた。
「陣内君も今帰りなんだ」
「そ!近藤さんも?」
「うん、次の話をどうするか考えてた」
この言葉を聞いて由香が文芸部に所属している事を思い出したシュウトは、話の流れで彼女を褒め称える。
「小説を書けるなんてすごいなぁ……俺なんて何も思い浮かばないよ」
「そんな……全然すごくないよ」
「ふーん、あ、俺ここコッチだから。じゃあ!」
自宅との分かれ道に差し掛かったので、別れの挨拶をしてシュウトが歩く方向を変えようとしたその時だった。
「あ!ちょっと待って!」
由香が突然何かを思い出したように彼を呼び止める。呼び止められたシュウトは何も思い当たる節がないため、ぽかんとその場で立ち止まって彼女の言葉を待った。
「何?」
「今日の昼休み……陣内君何かあったの?」
彼女のこの言葉にシュウトは凍りついた。昼休みのアレ、やっぱり気付かれていた……?本当の事を話しても信じてもらえないと思い、シュウトはとりあえず誤魔化す事にする。
「え?何もないよ?」
「だって様子おかしかったし……」
「いやいや……そこは気にしたら負け!」
シュウトはそう言うとすぐに進行方向を変え、まっすぐに家の方に歩き出した。由香が返事を考えている前に距離を離そうと言う作戦だった。
「あ……」
あからさまにおかしいシュウトのその態度を見て彼女は不信感を抱いていた。この事により由香はますますシュウトに興味を持ったのだった。
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